プチ・ネジュマを心に飼いましょう!(笑)
──ではネジュマを演じたリナ・クードリという女優を、同業者としてどう見ましたか。ウェス・アンダーソン監督の新作で主要キャストも務め、一躍注目の女優に躍り出そうな存在です。
何度も激情を見せるシーンがあるのですが、なかなか彼女は泣かないんです。私だったら(脚本に泣くと)書いていなくても泣きたくなってしまったり、つい泣いてしまうような感じになったりするものですが、そこで涙を出さないのがすごいと思いました。涙を出すとそれに小さく収斂されてしまうんですよね。でも泣かないことで、ネジュマは泣きたいけれど泣かないのだろうか、泣けないほど悲しいのかもしれない、心は泣いているけれど涙を出さないのか、それとも泣くことを上回る怒りを感じているのか……など、ぐっと想像が膨らむんです。泣くよりも大きな感情、泣かないことによる表現の大きさを感じました。
──それでは最後に。今、生きづらいと思っている若い女性は多いと思います。この映画を、そんな女性たちにどう感じてほしいですか。
本作のような作品こそ男性にまず観てほしいなと思いますが、もちろん女性にも観てほしい。というのもネジュマのような開拓者は、とても孤独でもあると思うんです。そして彼女のような強さを持って生きている人は、きっと少ない。闘志はあるけれど闘えずに心が折れてしまう、ネジュマの周りに居る女の子たちが大多数だと思います。でも「パピチャ」を観たら、ネジュマが心に居てくれる、みたいな状態になれると思うんです。そうすると、自分には何ができるのかを考え、日常をどう生きるべきかパワーがもらえたり、生きる心強さを感じられたりすると思います。これは架空の話でもファンタジーでもなく、この世に存在する人間の物語。そう思えるとがんばれる。ですから、この映画を観て、1人1匹プチ・ネジュマを心に飼いましょう!(笑)