山﨑賢人が主演を務めた映画「陰陽師0」のBlu-ray / DVDが9月4日にリリースされ、デジタルレンタルも開始となった。小説「陰陽師」シリーズを手がけた夢枕獏が全面協力した本作は、実在した最強の呪術師・安倍晴明の学生時代が描かれたオリジナルストーリー。劇中にはVFXを駆使した絢爛な美術や大迫力の呪術アクションが登場し、怪事件の謎解きなどミステリー要素も楽しめる。監督は「アンフェア」シリーズの佐藤嗣麻子が務め、晴明を山﨑が演じたほか、染谷将太、奈緒、安藤政信、村上虹郎、板垣李光人、國村隼、北村一輝、小林薫もキャストに名を連ねた。
映画ナタリーではソフト・デジタルリリースを記念した特集として、本作を鑑賞した謎解きクリエイター・松丸亮吾にインタビューを実施。「とにかく映像の力に心をつかまれた」というアクションシーンや平安時代を再現した映像美など、面白さの謎を解き明かしてもらった。さらに謎解きと呪術の共通点や、「一番のライバルかもしれない」とも話す主人公・晴明の魅力、Blu-ray / DVDのプレミアム・エディションに収録された気になる特典内容についても語ってくれた。
取材・文 / 大畑渡瑠
映画「陰陽師0」山﨑賢人&染谷将太コメント付き予告編公開中
「どちらが勝つのだろう」という見応えがたっぷり、バチバチで驚きました
──先ほど本作をご覧いただいたばかりですが、ご感想は?
もともと「陰陽師」ってファンタジーの色がすごく強いのかなと思っていたんです。超常現象みたいなことが描かれるのかなと思いきや、かなり論理的で緻密な描写が多く、ストーリーやミステリーを含めたいろいろな楽しみ方ができましたね。平安時代の世界から“日本らしさ”も体感できますので、海外の人にも観てほしいと思えます。
──“呪術”に対してはどのようなイメージを持っていましたか?
マンガなどを読んで感じるのは“特殊能力”や“バトルもの”という印象ですよね。本作にはその要素もありつつ、登場人物たちの人間関係や思惑など今の時代にも通ずる部分がたくさんあるので、世界観に入りやすいんです。平安時代が描かれていますが、僕らの周りにも確かに存在する物語だったなと。
──なるほど。
あと、バトルシーンは予想以上に迫力がありましたね。「どちらが勝つのだろう」という見応えがたっぷり。バチバチで驚きました。「陰陽師」が人の深層心理や心の世界がテーマである物語だからこそ、事実として起きていることと、それに対して自分がどう思っているかが大事ですよね。今観ている映像が実在する世界なのか、それとも心の中の世界なのか。その比較がすごく楽しくて、まったく飽きなかったです。どんな年代の方でも、お子様でもワクワクして楽しんでいただけるなと思いました。違和感のあるシーンに関しては「あれはこういうことだったんだ」と少しずつ伏線が回収されていくので、謎解きの要素も感じました。
役者の方々が大御所だからこそ、説得力を持って伝わる
──主人公である安倍晴明を演じられた山﨑賢人さんの印象はいかがでしょうか? 陰陽師としての実力を持ちながらも自らの能力には興味がなく、事実だけを見ようとする冷静なキャラクターでした。
僕も身分や出世など堅苦しいことがあまり好きじゃないんです。当時は上下関係が一番厳しい時代でしたから、出世などどうでもよくて、ただ自分の興味のある方向に進んでいく晴明の存在は痛快でした。人間として一番正直なのが晴明だなと思いますし、いつの時代でも自分らしく生きるということがテーマの1つかなと。劇中で「キツネの子だ」と言われるシーンもありますが、むしろ晴明が一番人間らしいなと思いましたね。ぶっきらぼうな印象がありつつも、どこか応援したくなるのは山﨑さんの演技がすごいなと思うポイントでした。
──また、本作には“ラスボス”のようなキャストが勢ぞろいしております。國村隼さん演じる陰陽博士・賀茂忠行、安藤政信さん演じる平郡貞文、北村一輝さん演じる天文博士・惟宗是邦、そして小林薫さん演じる陰陽頭・藤原義輔らが登場しますが、気になるキャラクターをお聞かせください。
平郡貞文は序盤から中核にいる人物で「とんでもないものを抱えているな」と特に気になる人物でした。藤原義輔や惟宗是邦もそうですが、物語の中で思惑がうごめくシーンでは「この人ってこんなことを考えていたんだ」と驚くことが多く、役者の方々が大御所だからこそ説得力を持って伝わったのかなと。
──村上虹郎さん演じる橘泰家が殺害されたことで、犯人を解明するための謎解きが繰り広げられます。そこから帝付き陰陽師の座をめぐる陰謀がつづられますが、特に印象に残ったシーンはありますか?
やはり犯人が登場するラストの場面ですかね。ミステリー的には“全員怪しい”ですし、犯人が出てきた瞬間「そこかー!」とびっくりしました。ダイナミックな真相になっていますが、動機を聞くと確かに全部つながりますし、一見関係ないと思う事件でも最終的に1つの物語に集約される。エンドロールで佐藤監督が脚本も手がけられていたということを発見して、「なるほど!」と。面白いポイントを緻密に計算されたんだなと納得しました。特に最強の毒を作るという蠱毒の説明は伏線として物語にしっかり関係していましたが、僕は全然違う方向に予想を外してしまいました(笑)。
──鑑賞していて難しく感じたシーンはありましたか?
特に感じませんでしたね。本当にすごいなと思ったのは、冒頭の10分ほどで世界観の基本情報がわかりやすく描かれていたところ。陰陽師の世界って、けっこう取っ付きにくい部分もあるじゃないですか。「専門用語がたくさん出てくるんじゃないか」とか。その部分を授業の形で教えてくれるのがとても親切。それさえわかれば現代に生きている僕たちも一緒に参加できます。特に「呪」を説明するシーンは大事で、「呪」がわかっていると物語のいろいろなポイントに気付けるのがうれしかったです。
火龍が迫り来るシーンや水龍を呼び出すシーンは「すごい!」、映像の力に心をつかまれた
──本作ではVFXを駆使したシーン含め、アクションが魅力となっております。「すごい」「驚いた」と思われた場面はありますか?
晴明が陰陽寮から脱出するシーンは印象的でしたね。まずアクションに関わっている人数がすごいですし、山﨑さんの身のこなしや動き方がすさまじい。ずっとヒヤヒヤしながら見守っていました。また火龍が迫り来るシーンや、晴明が水龍を呼び出すシーンも「すごい!」と、感動しっぱなしでした。この衝撃は配信やソフトでもしっかり伝わると思います。平安時代の“和”と現代の技術であるVFXは、ともすればミスマッチになりそうな部分なのに、とても自然でめちゃめちゃ合っていましたし、音の迫力もしっかり体感できて。バトルしているときの山﨑さんの声や表情にも「自分の欲や恨みを出したら負けてしまう」という緊迫感を感じましたし、とにかく映像の力に心をつかまれました。
──再現された平安時代の風景や、映像美についてはいかがでしたか?
こちらもすごかったですね。作り込みがとんでもなくて、町並みの全景を映す冒頭のシーンでは思わず見惚れてしまいました。きっと平安時代にタイムスリップするとしたらこんな感じなんだろうな、と。決して主張しすぎない部分にも好感が持てましたし、「あのわずかな部分にも相当な努力がなされているんだな」と思ったりして、圧巻でしたね。
──今回はVFXを映像制作会社・白組が担当しています。
そうだったんですね! 特に博雅と徽子女王のシーンでは花が満開になる演出もあって、深層心理の世界ならCGらしくてもいいのかなと思いきや、本当にあのセットがあるのかと思えるほどリアル。観客に現実と心の世界の区別を付けさせない感じが「呪」をかけているようで面白かったです。