「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」が、4月1日に全国公開される。同作では、2021年に放送され“衝撃の最終回”で幕を閉じたテレビアニメが新たな視点で再構成されて、最終回のその後の物語も描かれる。個人タクシーの運転手・小戸川が関わった“練馬区女子高生失踪事件”にまつわる関係者たちの証言によって、事件に新たな輪郭が浮かび上がった。制作にあたっては監督の木下麦、主演の花江夏樹らスタッフ・キャストが再集結した。
映画ナタリーでは、テレビシリーズからのファンにひと足早く映画を鑑賞して感想コメントを寄せてもらった。俳優の稲葉友、「GANTZ」「GIGANT」で知られるマンガ家・奥浩哉、スリーピースバンド・ヤバイTシャツ屋さんのしばたありぼぼ、アイドルグループ・NMB48の渋谷凪咲、お笑いコンビ・見取り図の盛山晋太郎は「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」をどう楽しんだのか?
さらに、バラエティ番組「ゴッドタン」などのプロデューサー・佐久間宣行のインタビューを掲載。テレビシリーズにハマり一気に観たという彼が、このたび映画として生まれ変わった「オッドタクシー」の魅力を語ってくれた。
取材・文 / 大曲智子(佐久間宣行)、秋葉萌実(作品解説)
「オッドタクシー」とは?
2021年4月期にテレビ東京にて放送された、全13話のテレビアニメ。「セトウツミ」で知られるマンガ家・此元和津也が脚本を手がけ、監督はこれがデビュー作となる木下麦が担当した。花江夏樹、飯田里穂、木村良平、山口勝平、ミキ、ダイアン、ラッパーのMETEORらバラエティ豊かな豪華キャストが集い、2021年のクリスマスイブに「THE FIRST TAKE」へ登場したことでも話題を呼んだ、スカートとPUNPEEによる書き下ろしのコラボ楽曲「ODDTAXI」が主題歌となっている。
本作では、平凡な日々を過ごすタクシー運転手・小戸川を中心にした人間模様が群像劇の形で描かれた。彼が乗せるくせ者ぞろいの客たちの言葉は、やがて失踪した1人の少女へとつながっていく……。放送時には、ポップな動物モチーフのキャラクターとはギャップのある謎めいた展開が話題に。SNSでは作中に張り巡らされた伏線の考察も盛んに行われた。
ついに公開!「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」
第25回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞の受賞をはじめとして、国内外で高く評価されている「オッドタクシー」。そのスタッフ・キャストが再結集した「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」が、4月1日に封切られる。
テレビアニメ版のエピソードが再構成され、最終回のその後も加えられた同作。小戸川が経験した“人生を一変させるような出来事”について関係者17人の証言が紹介され、“運命の⻭車”が再び揺さぶられていく。
各界の著名人が観た、新たな「オッドタクシー」
※五十音順で掲載
稲葉友
絵のタッチ、登場人物たちの個性、音楽、CVのキャスティングのバランス、伏線の絶妙さ、台詞のテンポ感や語感の良さや間の使い方など好きなところをあげたらキリがない作品にコメントを寄せられることを嬉しく思います!
まずテレビアニメ版の「再構成」の構成が最高で一気に引き込まれました。本編の振り返りに留まらず、オッドタクシーらしさ全開で本当に期待を裏切らないものになっていたと思います。
再構成の奥行きに頭を回しながらも「その後」の部分へ期待が膨らみ、観終わると本編同様、色んな部分を確認したくなり何度も観たくなってしまう映画でした。イン・ザ・ウッズでした。観た人と語り合いたい…!
プロフィール
稲葉友(イナバユウ)
1993年1月12日生まれ、神奈川県出身。2010年にドラマ「クローン ベイビー」で俳優デビューし、2014年より特撮ドラマ「仮面ライダードライブ」に詩島剛 / 仮面ライダーマッハ役で出演して注目を集めた。近年の主な出演作は映画「ずっと独身でいるつもり?」、ドラマ「病院の治しかた」「小吉の女房2」「ハレ婚。」「まったり!赤胴鈴之助」など。「しずかちゃんとパパ」がNHK BSプレミアムにて毎週日曜22時から放送中のほか、主演映画「恋い焦れ歌え」が2022年5月27日に公開を控える。J-WAVE「ALL GOOD FRIDAY」(毎週金曜11時30分より生放送)にてナビゲーターを務めている。
稲葉友 (@lespros_inaba) | Twitter
奥浩哉
TVアニメ オッドタクシーは優れた脚本の傑作!
本編のラストはホラーのラストにも似た不吉エンドだったが後日談は緊張感のあるものだった。
プロフィール
奥浩哉(オクヒロヤ)
1967年9月16日生まれ、福岡県出身。1988年に久遠矢広(くおんやひろ)名義で投稿した「変」が第19回青年漫画大賞に準入選し、週刊ヤングジャンプに掲載されデビュー。マンガの背景にデジタル処理を用いた草分け的存在として知られる。2000年より同誌にて連載された「GANTZ」はスリルある展開で好評を博し、アニメ、ゲーム、実写映画化などさまざまなメディアミックスがなされた。そのほか代表作に「いぬやしき」「GIGANT」がある。
しばたありぼぼ(ヤバイTシャツ屋さん)
コメントを寄稿する身でする発言ではないのですが、
理想としてはできれば感想や情報を極力目に入れないままこの映画を観ていただきたいです。
テレビアニメ→映画という順で観ても、映画→テレビアニメという順で観ても楽しめることは確実です。
わたしはテレビアニメ→映画→テレビアニメでじっくり楽しんでいます。
めちゃくちゃかじりついて観ました。
これ以上わたしはもう何も言いません。無能ですみません。
誰も干渉せんから、とにかく鑑賞せい。♪
プロフィール
しばたありぼぼ
大阪芸術大学に通っていたこやまたくや、もりもりもとと2013年10月に結成したスリーピースバンド「ヤバイTシャツ屋さん」でベース、ボーカルを担当し、作詞作曲した楽曲もある。バンド活動では、ライブで全国を駆け回り各地を盛り上げまくっている傍ら、NHK、SPACE SHOWER TVではレギュラーも担当している。自身の出身地、大阪府高槻市の「たかつき観光大使」を務め、コーヒーやアクセサリーのプロデュースも手がけるなど、マルチな活動をしている。
ありぼぼ(ヤバイTシャツ屋さん) (@shibata_aribobo) | Twitter
渋谷凪咲(NMB48)
私はアニメからのファンでしたが、映画も見応えたっぷりでした!
最初作品を見る前は、動物の可愛い物語かと思いきや、今の時代のおかしさや恐さを教えてくれる作品で、見終わった後気づけば自分を見つめ直していました。
考え方は人それぞれだけど、見栄を張り、求め過ぎた結果は何を産むのか。本当に大切な物って何なのかを改めて考えさせられます。
そんな作品ですが、おもしろセンスの光るワードや掛け合いがあってクスクス笑ってしまうし、芸人さんが声優をされたりもするので、聞き覚えのある声にわくわくします!
エンドロールでの答え合わせをぜひ楽しみにしていて下さい!
初めての方もこれを機に、ぜひオッドタクシーへご乗車下さいませ♡
プロフィール
渋谷凪咲(シブヤナギサ)
1996年8月25日生まれ、大阪府出身。2012年にNMB48の4期生オーディションに合格して芸能界デビューを果たした。個人・グループで「大阪ほんわかテレビ」「芸能界常識チェック!~トリニクって何の肉!?~」「~凪咲と芸人~マッチング」「かまいたちの机上の空論城」「よ~いドン!」「発見!仰天!!プレミアもん!!! 土曜はダメよ!」といった番組に出演中。2021年にはYouTubeチャンネル「なぎちゃんネル」を開設した。
渋谷凪咲 (@_Nagisa_Shibuya) | Twitter
盛山晋太郎(見取り図)
ほのぼの動物アニメだと思って観るのは大間違いです。ですが、そう間違ったまま今作品を観てもらいたいとも思います。
アニメが始まった時は自分だけがこの面白い作品を知っているんだと優越感に浸っていましたが、もう手遅れなぐらい話題になっているので、どうせなら話ができるぐらい広がってもらいたい。
新ジャンル。アニマルミステリー。しかも一級品のサスペンス。
あとTwitterでよく聞かれましたが、ヤノの声は僕じゃありませんので!
プロフィール
盛山晋太郎(モリヤマシンタロウ)
1986年1月9日生まれ、大阪府出身。2007年にリリーとお笑いコンビ・見取り図を結成。2018年にMBS「オールザッツ漫才」の若手バトルで優勝し、2019年1月には第4回上方漫才協会大賞の大賞に輝いた。主な出演番組は「ろくでなしミトリズ」「2時45分からはスローでイージーなルーティーンで」「ラヴィット!」など。YouTubeチャンネル「見取り図ディスカバリーチャンネル」は登録者数が38万人を超えた。
佐久間宣行が語る「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」
「オッドタクシー」のテレビシリーズは、知り合いのプロデューサーから「今度、テレビ東京でこんなアニメをやるんですよ」と教えてもらったのがきっかけで知りました。ただその時期忙しかったので、後日Amazon Prime Videoで観たんですが、すごく面白かった。一気に全話観てしまいました。僕、リミテッドシリーズで完成度が高いものって好きなんです。全13話で満足させてくれる「オッドタクシー」はまさにそれ。セリフと伏線の張り方もいいし、後日談をYouTubeでラジオドラマとして配信したりという、世界観の広がりも楽しい。これはいいアニメだなと思いましたね。
第1話で思ったのは、「キャラクターが動物になっている意味がわからない。一体どういうことなんだろう」ということ。2話、3話と進むうちに、「これはかわいい動物キャラを使ってハードボイルドな世界を描いているんだな」と気付いて、「きっと仕掛けがあるんだろう。この製作陣は信用できそうだな」とも思いましたね。このスタッフになら気持ちよく転がされてみたいなと、観進めるにつれて信頼度が増していきました。
動物のビジュアルだからどこかファニーなところがあるのかなと思っていたのに、悪いやつはとことん悪いし、どのキャラクターも描写が容赦ない。誰もが持っている弱さを増幅させたようなキャラクターが多いので、僕はどのキャラクターにも感情移入できましたね。特に好きなのは、樺沢(笑)。「こういうやつホント嫌いだわ~」って思いつつ、でも有名になりたいっていう思いは誰しもあるよなって共感して。「あいつと俺の何が違うんだ」という思いを持ったことは、僕も何度もあります。それが膨れ上がると、承認欲求の化け物みたいになっていく。自分が思春期の頃に今みたいなSNS社会だったとしたら、地方でくすぶっている自分と東京にいる人を比べて、気持ちのバランスが取れなかっただろうなと思うので、樺沢には同情してしまいましたね。
そして「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」を拝見したわけですが、この映画も志が高いなと思いました。ただの総集編にせず、リミックスのように再構築されている。2時間の作品としての完成度になっていますよね。タイトル通り煙に巻くところがあるので、そこを観た人がどう感じるかは人それぞれかなと思います。最初から「藪の中」と宣言しているわけですからね。この映画で初めて「オッドタクシー」を体験する人は、すでにテレビシリーズを観てから映画を観る人とは、受ける印象が違うことになる。その感想も知りたいなと思います。
何よりテレビシリーズを観た人は、最終話のラストの続きがすごく気になっていると思うんですよ。僕もその気持ちがあったので、映画もぜひ観たいと思った。そこはぜひ映画館で観ていただきたいところですが、テレビシリーズを観た人に対してとても誠実な続編だと思いました。テレビシリーズをまとめただけの総集編的な劇場版って、すでにストーリーを知っている人にとっては確認作業でしかないですが、これは構成もガラッと変えてあるし、あの続きも描かれている。「どうなるんだろう」と2時間ワクワクしながら観れましたね。
「オッドタクシー」ファンの方なら、ただの総集編じゃないことにすぐ気付くと思います。そして、この製作陣はやっぱり一筋縄じゃいかないなとニヤニヤしちゃうんじゃないかな。そんな製作陣の仕掛けがどういう最後にたどり着くのか。煙に巻かれる感覚もひっくるめて大いに楽しんでほしいですね。
※インタビューより構成
プロフィール
佐久間宣行(サクマノブユキ)
1975年11月23日生まれ、福島県出身。テレビプロデューサー。1999年にテレビ東京に入社して以降、「ゴッドタン」やワンシチュエーションコメディの「ウレロ☆」シリーズ、「青春高校3年C組」などさまざまな番組を手がける。同局退社後は、自身のYouTubeチャンネル「NOBROCK TV」を開設。2019年からパーソナリティを務めるニッポン放送の番組「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」が、毎週水曜27時より放送中。