映画ナタリー Power Push - 「信長協奏曲」
同時代を生きるパートナー
小栗旬
山田孝之
旬くんは、真ん中に立っていて違和感のない人(山田)
──小栗さんは実写化の企画が立ち上がる前から原作を読まれていたそうですが、どんなところが魅力的だと思っていたのでしょうか。
小栗 そうですね……さっき話していて思ったんですけど、この作品が面白いのは、全員が偽者だっていうところ。それで主人公のサブローが、歴史を変えないために必死に“信長”になっていく。その設定が本当に面白いと思ってマンガを読んでいました。
──山田さんに秀吉役をオファーしたのは小栗さんですよね。山田さんしかいないと思ったのはなぜですか?
山田 (すかさず)いやいやいや、「しかいない」ではないです、「やってくれたらいいな」くらいですよ。
小栗 ははは(笑)。なんていうか、純粋に見てみたかったんでしょうね、孝之が演じる豊臣秀吉というものを。孝之の秀吉、ぴったりじゃないですか?
──秀吉の二面性に引き込まれました!
小栗 「信長協奏曲」の秀吉もぴったりですし、いわゆる“人たらし”として言い伝えられているような秀吉も、いつか機会があれば見てみたいです。大河ドラマあたりで。
──山田さんは、サブローを小栗さんが演じることについてどう思われましたか?
山田 旬くんは、真ん中にスッと立てる人なんですよ。真ん中に立っていて違和感のない人というか。なので、大勢の中心でサブローになるっていうのは僕の中ですごくしっくりきました。
僕ら今、仕事のパートナーとしていい距離感だと思うんです(小栗)
──信長・秀吉・家康という偉人たちが同時代に生きていたって改めてすごいことだなと思うのですが、お2人は俳優界における自分たちの世代をどのように捉えていますか?
小栗 世代っていうものについて考えることってそんなにないんですけど……逆に言うと、こういうふうに皆さんから言われるから意識するくらいで。でもすごく楽しいです、僕は。本当に魅力的な同世代がたくさんいますし。だけど最近思うのは、自分らの世代って人数が多いって言われてきたんですけど、最近、キャスティングの話なんか聞いているとパズルみたいになってきているように感じますね。同じ人たちの中から当てはめていくような。日本ってやっぱ役者少ないんだなって思うことはあります。
──考えようによっては、ライバルが少ないということだと思うのですが?
小栗 うーん。できればもう少し増えてほしいですけどね。
山田 うん、そうすればこんなに働かなくて済む(笑)。まあでも、あんまり自分のことは考えないですよね。それよりもっと広く……もっとバラエティに富んでいるほうが日本の映画業界全体が面白くなるっていう考え方のほうが強いと思う。
小栗 僕らも何年かに1度っていう形で共演させてもらってますけど、でもやっぱり「小栗と山田っていつも一緒にやってるよね」と思われることもありますよ。でもこっちからしたら「いや、孝之以外に頼める人、意外といないんだよ!?」って部分もあったりするんですよね。そこに孝之みたいなことをやってくれる俳優が現れたら、そのときにはまた別の人と組めることになるんですけど。
──小栗さんにとって、山田さんと共演することで引き出されるものは何かありますか?
小栗 僕に関してはただ単純に、意外とファンなんだと思いますね。
山田 意外とファン?(笑)
小栗 側で芝居見ているのが好きですし、「やっぱこの人いいんだよなあ」って思うこと自体が楽しいので。僕ら今、仕事のパートナーとしていい距離感だと思うんですよ。仲良すぎるわけでもなく、だけど別の仕事場でいろいろやってきたことを互いに持ち寄って。ほかの現場を経て久しぶりに会うと、「あ、ちょっとやり方変えたんだな」って思ったり。
山田 そうなの?
小栗 それこそ初めて会った頃の孝之は、かなり自分の内に内にと入っている人だったんで。それがいいか悪いかは抜きにしても、今はすごくフラット。そういうのを見るだけでも「ああ、人に歴史ありだな」って思ったりするというか。
時間が足りない(山田)
──山田さん自身は変化の自覚はありますか?
山田 はい。まあその理由は単純で、たぶん子供ができたことなんですけど。社交性っていうものをここ2年くらいで身に付けました(笑)。それまではもう、「人生長すぎるな」って。「なんでこんなダラダラ生きなきゃなんねえんだよ」みたいな。「できれば早く死にてえな」ってずっと思っていたんですよ、楽しくなかったんで。
小栗 だってこの間、八嶋(智人)さんに会ったらすごいビックリしてたもん。「『どうせ孝之と一緒の現場でも、全然しゃべってくんねえんだろうなあ』なんて思ってたら、アイツすげえしゃべってくれたんだよ!」って(笑)。
山田 うん、しゃべった(笑)。
小栗 (笑)
山田 なんかもう、生きづらいなと思っていても、子供ができたらそうも言えないじゃないですか。生きなきゃいけない。生きるためにはどうしたらいいんだろう? 人生を楽しくしなきゃいけない。楽しくするためにはどうしたらいいんだ? 自分から動いていかなきゃいけない。っていうので、いろんな人に会っていろんな話を聞いて。やっぱり仕事関係が多いんですけど……でも今までは俳優としての仕事をするだけだったのが、いろんな仕事へと広げていて。そうすると、大変だけど楽しい。人と会うとか、話すとか、コミュニケーション取るっていうのはすごくいいことだと思ってきています。だからわりと積極的に人と話すようになったんですよね。
小栗 めっちゃアクティブだもんね?
山田 うん。時間が足りない。
──やりたいことが多すぎて時間が足りないのですか?
山田 やりたいことっていうより、実際やっていることですね。それこそ俳優と会うと、映画作りたいねっていう話になるんですよ。旬くんと会ってもそうですけど。みんなある程度経験を積んで、コネクションもできてきて、話を聞いてもらえるようになってきた。そうすると、どういう映画作ろうか? どういう脚本だったらいいんだろう? どれぐらいお金が集まって、どのくらいの規模のものができるんだろう? そういう話になってくると、どうすれば実現できるんだろうかっていうことになってくるんで。
小栗 たしかに、話は聞いてもらえるようになってきたね。現場でも、監督やプロデューサーに相手してもらえるようになった。
山田 実現できるかわからないですけど。芝居以外での、何か別の表現方法をいろいろ試してみたりはしていますね。
──それでは最後に、映画の見どころを教えてください。
小栗 (明智)光秀が戻ってきてから、作品がぐんと面白くなりました。“2人で織田信長”みたいな感じで進んできて、なのにいったいなぜ「本能寺の変」を迎えるのか。この作品は何があってもドラマからの映画なので、ここまで来たからには、サブローも少し真剣にやっているっていう感じになっています。ちなみに原作ではまだ「本能寺の変」を迎えていないので、そちらも楽しみにしていただければ。
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- 映画「信長協奏曲」2016年1月23日(土)公開
- 映画「信長協奏曲」
あらすじ
ひょんなことから戦国時代へタイムスリップし、“織田信長”として生きることになった高校生のサブロー。はじめは逃げ腰だったサブローだが、裏切りや陰謀が渦巻く中、天下統一を目指す覚悟を決める。そんなとき、かつて信長だった男・明智光秀が城に戻ってきた。彼は、家臣たちの信頼や妻・帰蝶の愛情を手にしたサブローに憎しみを抱くように。一方、歴史において信長の死が迫っていることを知ったサブローは、運命に抗おうと帰蝶との結婚式を計画。そしてその場所は、京都・本能寺。密かに信長への復讐を誓う秀吉は、光秀に本能寺で信長を討つことを提案するが……。
スタッフ
- 監督:松山博昭
- 原作:石井あゆみ「信長協奏曲」(「ゲッサン」で連載中)
- 音楽:☆Taku Takahashi(m-flo)
- 主題歌:Mr.Children「足音 ~Be Strong」
キャスト
- サブロー・織田信長・明智光秀:小栗旬
- 帰蝶:柴咲コウ
- 池田恒興:向井理
- 前田利家:藤ヶ谷太輔(Kis-My-Ft2)
- 市:水原希子
- 松永弾正久秀:古田新太
- 徳川家康:濱田岳
- 柴田勝家:髙嶋政宏
- 羽柴秀吉:山田孝之
©石井あゆみ/小学館 ©2016 フジテレビジョン 小学館 東宝 FNS27社
小栗旬(オグリシュン)
1982年12月26日、東京都生まれ。1998年、ドラマ「GTO」で初めてのレギュラー出演。ドラマのみならず、映画「ロボコン」「あずみ」「隣人13号」「キサラギ」といったヒット作に多数出演する。2007年に主演した三池崇史監督作「クローズZERO」での演技が高く評価され、エランドール賞新人賞、第17回日本映画批評家大賞主演男優賞などを獲得。2010年には「シュアリー・サムデイ」で劇場監督デビューも果たした。近年の出演作に「岳-ガク-」「キツツキと雨」「宇宙兄弟」「ルパン三世」など。舞台でも活躍し、蜷川幸雄をはじめ多くの演出家の作品に参加している。山田孝之と共演した「テラフォーマーズ」が4月29日に公開されるほか、主演作「ミュージアム」が2016年に公開予定。
山田孝之(ヤマダタカユキ)
1983年10月20日、鹿児島県生まれ。1999年放送のドラマ「サイコメトラーEIJI2」で俳優デビュー。「WATER BOYS」「世界の中心で、愛をさけぶ」「白夜行」など多数のドラマに出演する一方、映画でも「電車男」「手紙」「そのときは彼によろしく」など主演作が続く。小栗旬とは、2007年の「クローズZERO」で初めて本格共演を果たした。「その夜の侍」「のぼうの城」「悪の教典」などに出演した2012年には、第34回ヨコハマ映画祭、第67回日本放送映画藝術大賞映画部門などで助演男優賞を獲得。そのほか主な出演作に「闇金ウシジマくん」シリーズ、「凶悪」「新宿スワン」「バクマン。」など。三池崇史監督作「テラフォーマーズ」が4月29日に公開される。