映画ナタリー Power Push - 「信長協奏曲」

同時代を生きるパートナー

小栗旬

山田孝之

石井あゆみのコミックを原作とした実写映画「信長協奏曲」が1月23日に公開。2014年に放送されたテレビドラマから続くストーリーが展開され、“織田信長”として戦国時代を駆け抜けてきた現代人・サブローがついに本能寺へ足を踏み入れることになる。

戦国のルールになじめず苦悩しながらも、“信長”として天下統一を目指すサブロー役の小栗旬と、信長の寝首をかくチャンスを虎視眈々と狙う羽柴秀吉役の山田孝之。同世代の俳優として10代の頃から切磋琢磨してきた2人が、30代になった今語り合うこととは? 原作特集も掲載しているので、コミック未読の人はあわせてチェックしよう。

取材・文 / 金須晶子(P1~2)、熊瀬哲子(P3) 撮影 / 佐藤友昭

映画を見る前に…ドラマ「信長協奏曲」最終回プレイバック!!

「偽者は出て行け!」サブローが信長の身代わりであることを知り、怒りに打ち震える家臣の恒興。一方、妻の帰蝶も信長が別人であることに気付いていたが、「自分にとっての信長は“あやつ(=サブロー)”だけだ」と恒興に言い聞かせる。浅井・朝倉軍が織田を攻めてくることがわかると、サブローはその戦が終わるまで“信長”を続けることに。自害に追い込まれた長政の介錯を務め、すべてを終えたサブローは約束通り城を出発するが、恒興に引き止められる。従順な家臣・秀吉が信長への復讐を狙うことはつゆ知らず、サブローは戦のない世を作ることを再度誓い、“本物の信長”こと明智光秀と固い握手を交わすのだった。

小栗旬×山田孝之インタビュー

平和な時代を作るためには、倒さなきゃならないものがある(小栗)

──映画を拝見して、ドラマではずっと逃げ腰だったサブローが、戦に対してシビアに向き合うようになったことに驚きました。

“織田信長”として生きる覚悟を決めたサブロー(小栗旬)。

小栗 そうですね。やっぱり本能寺を迎えるにあたっては、そうならざるを得ないというか。ドラマの頃はどちらかというとライトな感じで作ってきたんですよ。それが今回、わりと早い段階から「本能寺の変」を迎えてしまうので、なんかもう、遊んでいられなくなっちゃったって感じでしたね。言ってしまえば、大きな矛盾なんです。

──「戦わなくては天下が取れない」という意識が、サブローに芽生えてきたという。

小栗 そう。ドラマのサブローは「手を出したくない、殺したくない」なんてひたすら理想論を述べていました。でも最後の最後に浅井長政の首を斬ったことで、彼は改めて戦国時代に生きるとはどういうことなのかを考えたと思うんですよ。本当に平和な時代を作るためには、確実に倒さなきゃならないものがあるっていうことを。あの時代に、“戦いたくないのに戦わなきゃならない人”が命がけで戦っている。それがこの「信長協奏曲」ならではの面白さなんじゃないかなと思います。

山田 それで言うと、秀吉の役に関しては何も変わっていません。村を焼き討ちにした信長を幼い頃から恨み続け、「コイツいつか殺してやる」という復讐の思いから織田家に家臣として入り込む。でもただ単純に殺すだけでは惜しい、死ぬよりもっとひどい目に遭わせてやりたい。そんな気持ちで信長を追い込んできたので、映画はその最終段階というか、詰めの作業みたいでしたね。

“サブロー(小栗旬・左)と、“恒ちゃん”こと池田恒興(向井理・右)。

──なるほど。ただ、そんなシリアスな展開の中にも、信長と家臣たちのにぎやかなシーンは健在でした。ドラマファンには「待ってました!」という場面じゃないでしょうか。

小栗 むしろドラマでは、だいたいあんなことしかしてなかったから(笑)。本当は映画でも、もう少し家臣たちとふざけていたかったんですけどね。次から次へと事件が起こってしまうので、そんな余裕もなかった。あと信長と家臣団が遊んでるシーンって、秀吉もその中にいるのがまた違った面白さを生んでいると思いますね。

山田 あの(秀吉の)笑顔は、本物の笑顔じゃないからね。1人だけ冷静。

目開けてんの、超しんどかったよね?(小栗)

──そして待ちに待った「本能寺の変」ですね。炎が迫り来る中、2人が対峙するシーンは鬼気迫るものを感じました。撮影現場はどんな雰囲気でしたか?

本能寺にいたサブロー(小栗旬)は奇襲に遭う。

小栗 とても静かでしたね、あのときは。本当にラストって感じでした。それに夜もどんどん更けていって。

山田 最後に本能寺が燃えたときは、もう……。

小栗山田 朝だった!

──合戦シーンの撮影も大変そうですが、また違った苦労がありましたか?

小栗 煙がすごかったんですよ、本当に。目開けてんの、超しんどかったよね?

山田 あれはしんどかった。で、叫んだりすると、喉に煙がすごい入ってくるんですよ。しかも現場では撮影しながら火を焚いているので、ゴーッゴーッって音がしていて。「ああ、こんなに感情を込める大変なシーンを、またスタジオに入ってアフレコで録り直すのか……」とか(笑)。

小栗 思うよねえ。「これ、もう1回セリフ言うのキツイだろうなあ」って。まあ、結果的にすべて現場の音でいけたんでよかったですけど。

山田 いや、そこはアフレコでやったって言っといたほうがすごそうじゃない? 「全部アフレコで録り直しました」。

小栗 (笑)

映画「信長協奏曲」2016年1月23日(土)公開
映画「信長協奏曲」
あらすじ

ひょんなことから戦国時代へタイムスリップし、“織田信長”として生きることになった高校生のサブロー。はじめは逃げ腰だったサブローだが、裏切りや陰謀が渦巻く中、天下統一を目指す覚悟を決める。そんなとき、かつて信長だった男・明智光秀が城に戻ってきた。彼は、家臣たちの信頼や妻・帰蝶の愛情を手にしたサブローに憎しみを抱くように。一方、歴史において信長の死が迫っていることを知ったサブローは、運命に抗おうと帰蝶との結婚式を計画。そしてその場所は、京都・本能寺。密かに信長への復讐を誓う秀吉は、光秀に本能寺で信長を討つことを提案するが……。

スタッフ
  • 監督:松山博昭
  • 原作:石井あゆみ「信長協奏曲」(「ゲッサン」で連載中)
  • 音楽:☆Taku Takahashi(m-flo)
  • 主題歌:Mr.Children「足音 ~Be Strong」
キャスト
  • サブロー・織田信長・明智光秀:小栗旬
  • 帰蝶:柴咲コウ
  • 池田恒興:向井理
  • 前田利家:藤ヶ谷太輔(Kis-My-Ft2)
  • 市:水原希子
  • 松永弾正久秀:古田新太
  • 徳川家康:濱田岳
  • 柴田勝家:髙嶋政宏
  • 羽柴秀吉:山田孝之

©石井あゆみ/小学館 ©2016 フジテレビジョン 小学館 東宝 FNS27社

小栗旬(オグリシュン)

1982年12月26日、東京都生まれ。1998年、ドラマ「GTO」で初めてのレギュラー出演。ドラマのみならず、映画「ロボコン」「あずみ」「隣人13号」「キサラギ」といったヒット作に多数出演する。2007年に主演した三池崇史監督作「クローズZERO」での演技が高く評価され、エランドール賞新人賞、第17回日本映画批評家大賞主演男優賞などを獲得。2010年には「シュアリー・サムデイ」で劇場監督デビューも果たした。近年の出演作に「岳-ガク-」「キツツキと雨」「宇宙兄弟」「ルパン三世」など。舞台でも活躍し、蜷川幸雄をはじめ多くの演出家の作品に参加している。山田孝之と共演した「テラフォーマーズ」が4月29日に公開されるほか、主演作「ミュージアム」が2016年に公開予定。

山田孝之(ヤマダタカユキ)

1983年10月20日、鹿児島県生まれ。1999年放送のドラマ「サイコメトラーEIJI2」で俳優デビュー。「WATER BOYS」「世界の中心で、愛をさけぶ」「白夜行」など多数のドラマに出演する一方、映画でも「電車男」「手紙」「そのときは彼によろしく」など主演作が続く。小栗旬とは、2007年の「クローズZERO」で初めて本格共演を果たした。「その夜の侍」「のぼうの城」「悪の教典」などに出演した2012年には、第34回ヨコハマ映画祭、第67回日本放送映画藝術大賞映画部門などで助演男優賞を獲得。そのほか主な出演作に「闇金ウシジマくん」シリーズ、「凶悪」「新宿スワン」「バクマン。」など。三池崇史監督作「テラフォーマーズ」が4月29日に公開される。