最上もがが語るNetflixオリジナルシリーズ「13の理由」|学生時代にこんな子いた!共感ポイント満載のミステリードラマ

心の逃げ場所を作るのは大事

──ハンナが自殺に至る背景には、友人とうまくコミュニケーションが取れなかったり、ささいなすれ違いなどが積み重なったりすることも含まれるのではと思いました。最上さんは、そのあたりの描写についてはどう感じましたか。

最上もが

ハンナは期待していた見返りを相手から受けられなかったのを「裏切られた」と錯覚しているし、それがどんどん積み重なって、重くなって自殺に至ってしまった。でもそれは、どうやったら防げたかというのはすごく難しい問題だと思っていて。彼女と同じ立場に立たないと気持ちはわからないから、救えたかどうかと言うと、ぼくは無理だったんじゃないかと思っちゃうんですよね。

──なるほど。

ハンナと同じような子をどう救うかとなったときは、いい方法じゃないかもしれないんですけど、ぼくは「ある種の自己防衛として、他人に期待しない」と言うかもしれないです。それと、1つの世界で完結しようとするとけっこう追い詰められる気がするので、自分の心の逃げ場所を作るのは大事。ぼくはネトゲ(ネットゲーム)上で友達ができたから、学校で無理に作らなくてもいいやって思えましたし。

──エピソードが進むにつれて、特に印象が変わった人はいましたか?

「13の理由」シーズン1より、アリーシャ・ボー演じるジェシカ(左)、ジャスティン・プレンティス演じるブライス(中央)、マイルズ・ハイザー演じるアレックス(右)。

序盤で衝撃的だったのは、ハンナとジェシカとアレックスがすごく仲良しだったのに、いきなりハンナだけ拒絶されるところです。決定的な要素がよくわからなかったので、ジェシカとアレックスに対して、「この2人なんなの!?」とちょっとイラッとしました(笑)。結局あのリストを作ったのもアレックスなんですよね?

──男子の間で回覧されたリストで、“最高の尻”としてハンナの名が挙げられた件ですね。あれを作ったのはアレックスです。

あれも「何やってんの!」と感じて。アレックスは最初はいいやつだと思ってたのに……。

──しかもそのリストの存在にハンナが悩んでいるのに、クレイはあまり深刻に捉えないというのも……。

あの描写にも、ああーっ!と思いました。ハンナのお父さんもよくわかっていなくて「こんなの褒め言葉じゃん」と言っていましたね。いやいや、わかってあげて! 嫌に決まってるじゃん!という気持ちです。悪口ではないけど、女の子だったら自分が性的な目を向けられていると思うはずです。わかりやすく言うと「お前はビッチだ!」と言われているのと一緒だから。絶対にショックなのに、男ってなんでこんなに理解がないんだろうとすごく感じました。あとはタイラーはわかりやすく気持ち悪かった(笑)。そのほかはわりとみんな悪い印象からのスタートなので、あまりギャップは感じなかったですね。

ぼくは大人に相談しようと考えたことがなかった

──少しネタバレになってしまいますが、シーズン2ではハンナの死を巡る裁判が行われて生徒たちの新たな一面が見えてくるんです。ちなみにいじめや性暴力などの問題が扱われたシーンに込めた思いについて、キャスト、スタッフ、精神医療の専門家らが話し合う解説番組「『13の理由』現代が抱える社会の闇を考える」はご覧になりました?

観ました!

──ハンナの母役の女優ケイト・ウォルシュは、演じるにあたって自殺した息子を持つ母親に話を聞いたとか。生徒の親やカウンセラーの先生など、大人たちの物語はどうでした?

ハンナのお母さんにまつわる展開はつらいですね……。ただこのドラマを観ていて思うのは、大人たちがちょっと弱いかなと。子供への歩み寄り方がわからなくて、コミュニケーションがうまく取れていなかったのかなという残念さがあります。この作品の大人たちは相談しにくい感じがします。特にポーター先生、この人よくないと思うんですよ!(笑)

──どんなところで特にそう感じましたか。

「13の理由」シーズン2より、デレク・ルーク演じるポーター。

決め付けがちなところがあるので、生徒たちのささいなサインに気付いてあげられたらと思いました。やっぱり10代の頃って、言いたくても言えないというしぐさをどこかですると思うんですよ。でもそこに先生は気付いてたのか、それとも気付いてないのか、スルーしちゃっている。

──シーズン2には、ポーター先生の心情にスポットが当たる回も登場します。話は変わりますが、最上さんが高校生くらいの頃は大人に対してどんな感情を抱いていたんでしょうか。

ぼくは大人に相談しようと考えたことがなかったんです。絶対わかってもらえないだろうなと思って。高校の頃、違うクラスの子がいじめられているのを先生に言ったことがあるけど、解決しなくて。「男子同士でじゃれているだけじゃん」と言われてしまって。

──一番つらいパターンですね……。

最上もが

男子同士でじゃれていて飲み物に消しゴムのカスを入れる?と思って。いじめているほうは学校の人気者で、ほかの生徒からは「あいつカッコいいよね」と慕われるタイプだったので、みんな見て見ぬふりをしていたのも悔しかったです。いじめの場面にたまたま遭遇して「先生、なんですかこれ! よくないですよね!」と言ったんですけど、ダメでした。先生ってそんなに頼りにならないんだなと感じたし、自分が進路や人間関係で悩んだときにも先生に話そうとは思わなかったですね。だからわりと1人で考えていた気がしますね。学校に行っても勝手に帰っちゃったり、休むことが多くて、ネトゲに走ってました。

──いじめや性差別などいろいろな社会問題が扱われていますが、その中でも特に気になったものはありますか?

どれも日本でも同じような問題が起こっている印象がありますが、ハンナが性被害に遭っているシーンはすごくリアルでした。恐怖でノーと言いづらかったりするのが女性の弱みだなと思っているので、男性側が変わることはできないのだろうかと切なくなります。

高校生の自分に教えたいことは「もっと楽しんで」

──4月にキャストが来日した際に、SNSで流行っていたハッシュタグ「高校生の自分に教えたいこと」にちなんだ質問がクレイ役のミネットとジェシカ役のアリーシャ・ボーに投げかけられてたんです。ディランは「周りの人を考えて行動するべき」、アリーシャは「孤独を感じてもいい」と答えていて。最上さんが高校生の自分に教えたいことはありますか?(参照:「13の理由」キャストら来日、高校生の自分に教えたいことは「孤独を感じてもいい」

うーん……。「限られた時間なんだからもっと楽しんで」ですね。

──その理由は?

最上もが

ぼくは学生生活を楽しまなかったので、もったいなかったなって。もう少し人と交流して自分から楽しもうとすれば、もっと楽しかったと言えたのかなと思います。でも……伝えても無駄な気もしちゃいます(笑)。今の年齢になったからこそわかったことであって、10代の頃に理解しろと言われてもたぶん難しい。当時のぼくは自分で何かを変えられないって思っていましたし、未熟だったからこそ経験できたこともたくさんありました。

──ハンナのように“生きづらさ”を感じる人へ向けて、最上さんから伝えたいことはありますか?

正直、ぼく自身がめっちゃ生きづらいと思っています。だからハンナに共感することも多かったですし、孤独にまつわる話も自分と同じだなと感じて。「『13の理由』現代が抱える社会の闇を考える」に、1人が自殺すると6人が悲しむという統計が出てきましたよね。それで自殺を抑止させようとしているのかもしれないけど、本人はわからないんですよ。結局言われた側はそれがまたストレスになってしまう。

──つらい気持ちの真っただ中にいると、自分の死を悲しむ他者に思いを馳せるのは難しいということでしょうか。

そうです。つらさの渦中にいる人が「あなたが自殺するとこれだけの人が悲しむんだよ」と言われると重く捉えてしまって、自分の存在が迷惑なんじゃないかと考えてしまう。ぼくはそんなタイプだったので、それだったらもういないほうがいいと一時期は思っていたんですよ。だからなんか……すごい難しいですね、生きづらい人に……。ぼくめっちゃ生きづらいんですよー!(笑) 仕事や勉強、アニメ、ゲームなどなんでもいいから、目の前のことに一生懸命集中して、孤独を感じない努力をすることかなと思います。自殺するための行動を起こさなければ失敗をしたところで人は死なないし、やり直しはきくから生きていても大丈夫。

──この作品は、特にどのような人に観てほしいと感じますか?

10代向けに描かれてると聞きましたが、ぼくはもっと広い視野で観ていたんです。学校だけじゃなく一般社会でもいじめは起こり続けているし、10代に限らず自殺する人も増えている。いろんなタイプの子が出てくるので、誰でも自分に近いところを見いだして共感できるだろうし、自らの行動も見直せそうな気がします。学校生活に悩みを抱えてたり、会社でうまくいかなかったり、少しでも世の中がつらいと感じている人は、観てみると納得できることもあると思います。余計にヘコんでしまうこともあるかもしれないけれど、それも人生経験の1つとして観てほしいなって感じますね。

──最上さん自身が知り合いに薦められたそうですが、別の人にオススメするとしたらどのように伝えますか?

ぼくは、テープによって登場人物たちの新たな面が暴かれていく描写を面白く感じたので、「最初に自殺した女の子がテープを残して、それをみんなに聴かせる話だよ。ちょっと重たいストーリーだけど、いろいろ考えさせられるよ」でしょうか。「えっ? 何それ?」と思ってもらえるかも。

──ありがとうございます。先日、シーズン3の配信決定が発表されました。クレイ役のミネットは「すべてのキャラクターに迫るシーズン」とコメントしていて。

重そうですね……!

──シーズン3に期待したい展開があれば教えてください。

やっぱりハッピーエンドにしてほしい! みんなが他人をうらやんだり陥れたりせずに、いい人になってくれたらいいな。わかりやすく言うと、ブライスに改心してほしいなって思います。自分のどこがいけなかったのか、どんなにひどいことをしてしまったのかをちゃんとわかってもらいたいし、ただの嫌なやつで終わってほしくないです。

最上もが
「13の理由」シーズン1、2
Netflixで独占配信中(各13話)
「13の理由」シーズン1、2
ストーリー

リバティ高校に通う少女ハンナ・ベイカーが自ら命を絶った。ほどなくして、ハンナに恋心を抱いていた同級生クレイ・ジェンセンのもとに7本のカセットテープが届く。そこにはハンナ自身の声で彼女が死を選んだ“13の理由”が吹き込まれており、クレイはテープを通して彼女が生前に体験したさまざまな出来事を知っていく。そんな折、ハンナの両親は学校を相手に裁判を進めるように。するとクレイは、ハンナの死に関する真実を隠そうとする人物の気配を感じて……。

スタッフ

製作総指揮:セレーナ・ゴメス、マンディ・ディーフェイ

脚本:ブライアン・ヨーキー

原作:ジェイ・アッシャー「13の理由」(講談社)

キャスト
  • クレイ:ディラン・ミネット
  • ハンナ:キャサリン・ラングフォード
  • ジェシカ:アリーシャ・ボー
  • ジャスティン:ブランドン・フリン
  • アレックス:マイルズ・ハイザー
  • タイラー:デヴィン・ドルイド
  • コートニー:ミシェル・セリーン・アン
  • マーカス:スティーヴン・シルヴァー
  • ザック:ロス・バトラー
  • ライアン:トミー・ドルフマン
  • ブライス:ジャスティン・プレンティス
  • ポーター:デレク・ルーク
  • トニー:クリスチャン・ナヴァッロ
関連番組

「『13の理由』現代が抱える社会の闇を考える」Netflixで配信中

Netflix

映画やアニメ、ドラマをストリーム再生して楽しむことができるオンラインエンタテインメントサービス。作品によってはダウンロードも可能。コースはひと月あたり650円のベーシック / 950円のスタンダード / 1450円のプレミアムの3種類が用意されている。

最上もが(モガミモガ)
2月25日生まれ、東京都出身。グラビア、ドラマ、映画などで活躍中。主な出演作にはドラマ「ウルトラマンギンガS」「重版出来!」、映画「闇金ウシジマくん Part3」「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」など。2月には2nd写真集「MOGAMI」も発売された。
  • ヘアメイク / 澤西由美花(クララシステム)
    スタイリスト / ヨシダミホ
  • ワンピース 2万520円 / manon(M・K SQUARE)
    ネックレス 2740円、ピアス 2160円 / ROOM(サードオフィス)
    サンダル 1万3500円 / ダイアナ 銀座本店
  • 問い合わせ先
    M・K SQUARE
    〒550-0014 大阪府大阪市西区北堀江4-6-18
    06-6534-1177
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