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“観たい人だけ観ればいい”Netflixに松尾スズキが感じる可能性

観てみたいのは、荒川良々の「裸の大将放浪記」

──ほかにNetflixのラインナップで気になった作品は?

アメリカのスタンダップコメディがたくさん入ってるのは興味深いですね。日本だとまったく観る機会がないですから。

──今後、こんなコンテンツを増やしてほしいという要望はありますか?

松尾スズキ

VHSしか残っていないような古い作品とか、それすらなかった時代のドラマとかがあったら観たいですね。それから日本の役者を使ったドラマでも、地上波だと成立しないような俳優が主役のやつが観たい。「え、この人が?」みたいなのを。それこそ、荒川良々主演の「裸の大将放浪記」とかね。

──それ、かなり観たいです(笑)。松尾さんはこれまでに地上波の深夜ドラマ「演歌なアイツは夜ごと不条理(パンク)な夢を見る」や、BSのバラエティ「美しい男性!」などを手がけてきて、テレビでギリギリの表現というものをずっと探られている気がします。作り手としてこういった新たなサービスについて思うところはありますか?

ありますねー。「美しい男性!」はBSジャパンの深夜で放送してたんですけど、それでも男同士のキスシーンはダメだって言われて。

──そうなんですか!? でもイケメンたちがローションまみれになったりしてましたよね?

ローションは大丈夫なんですよ。

──いいんですか? その線引き、よくわからないです。ローションはよくて、キスはダメ(笑)。

うん。でも動画配信だったらキスはいいんじゃないか、いや、もっといけるんじゃないかなって。だからもう一度「美しい男性!」みたいなのをやらせていただければ(笑)。

──ぜひお願いします。

いろんなジャンルの人が同じ土俵で戦えるバラエティを作りたい

Netflix担当者 それ以外に、Netflixで作ってみたいコンテンツはありますか?

松尾スズキ

芸人じゃなくて俳優によるコント番組とかね。最近、ネタ番組がなくなっちゃったから、ネタをきちんと観られる番組が作れたらいいなって思う。あと世に知られてないアーティストやミュージシャン、演劇の人を紹介するような番組があったら、その人たちを育てていくこともできるじゃないですか。昔、フジテレビで「冗談画報」っていう番組があって。

──かつて大人計画の皆さんも出演された番組ですね。

そう。大人計画もそこで紹介されて世に知られていったんですけど、そういうチャンスが今はないんで。音楽の人も芸人さんも演劇の畑の人も映像の人もみんな同じ土俵で戦えるようなバラエティが作れたらいいなと思います。

──作り手としては、劇場やテレビに加えて、もう1つ作品を世に出す場ができたという感覚もありますか?

そうですね。あと、僕の昔の映画を掘り起こして観てくれた人が、それをきっかけにまた新しい作品に興味を持ってくれたり。目に触れる機会が増えることで裾野が広がっていくこともありがたい。そういう意味でも可能性を感じますね。

Netflixとは

世界最大級のオンラインストリーミングサービス。50カ国以上で6500万人を超える会員を抱え、オリジナルシリーズを含めたドラマや映画、ドキュメンタリーを数多く配信している。日本でも2015年9月にサービスが開始された。

松尾スズキ(マツオスズキ)
松尾スズキ

1962年12月15日生まれ。福岡県出身。1988年に大人計画を旗揚げし、1997年「ファンキー!~宇宙は見える所までしかない~」で第41回岸田國士戯曲賞を受賞。2004年に「恋の門」で長編監督デビュー後、2008年には「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」ほか俳優としての出演作も多く、小説「クワイエットルームにようこそ」「老人賭博」で芥川賞にノミネートされるなど作家としても活躍している。監督作「ジヌよさらば~かむろば村へ~」のBlu-ray / DVDが発売中。10月28日にNHK BSプレミアムで放送されるドラマ「ガッタン ガッタン それでもゴー」に出演。


2015年10月9日更新