寂しさや虚無感があふれていたときに書いた(須田)
──須田さんは2019年の「二ノ国」、2020年の「水曜日が消えた」に続いて、3年連続で映画の主題歌を担当することになります。
須田 ありがたいです。
──オファーは快諾されたんでしょうか?
須田 もちろんです。映画を観る前、お話をいただいた時点で「ぜひ」という思いでした。ただ「名も無き世界のエンドロール」という映画のエンドロールで流れる主題歌を作るということに関しては、めちゃめちゃプレッシャーを感じました。タイトルにエンドロールって入ってるよ……って(笑)。
岩田 確かに(笑)。
──書き上げるのは苦労しました?
須田 正直、映画を観てすぐにふさわしい曲のアイデアが浮かんだわけではないです。そのあとに佐藤(祐市)監督とお話しさせていただいたとき、映画全体に統一された寂しさを感じたことを伝えました。監督は虚無感を曲にしてほしいと思っていたらしく、リンクする部分があったので、そこで方向性が決まってからは早かったです。新型コロナウイルスの感染が広がっていて、世の中に寂しさや虚無感があふれていたときだったので、より一層書きやすかったというのもあります。
岩田 そうなんですね。それは初めて聞きました。
──映画の予告が公開されたタイミングで、岩田さんは「ゆるる」について「キダの気持ちを代弁してくれている歌詞」とコメントを出されていました。
岩田 僕はエンドロールの最後まで観てから劇場を出るタイプなんですけど、曲と映画がしっかりハマっているものもあれば、「これは自分が思っているのとは違うな」ということもあります。でも今回はすごくテンションが上がりました。正直「これは来た!」と思いましたね。
須田 よかった……よかった!(笑)
岩田 観終わった皆さんの心に言葉がスッと入ってくると思います。よく言われることではありますが、この映画は本当に「エンドロールまで観て完結するタイプの作品」です。
須田 映画を観終わったあと、緊張がほどけて脱力する人も多い気がしていて。そのあとに「ゆるる」を聴いて、自然と「さあ劇場を出よう」という気持ちになれるようなグラデーションをイメージしました。
自分の正直な感情と向き合ってほしい(岩田)
──ポスターには「ラスト20分の真実。」というキャッチコピーが添えられています。
岩田 僕個人としては、ポスターに書かれていることを鵜呑みにせず(笑)、1回目は頭をからっぽにして観てほしい気持ちがあります。伏線を意識しすぎると純粋に作品を楽しめなくなってしまう気がするので。
須田 僕はあえて原作を読まず、なるべく情報を入れずに映画を観たんですが、だからこそ楽しめた部分が大きかったです。1回目は何も考えずに観て、2回目に伏線などを探したりするのがいいかもしれないですね。
岩田 そうですね。試写会で一番多かった感想が「どう表現すればいいかわからない」だった通り、観た人に複雑な感情を抱かせる作品であることは間違いないし、その複雑さも千差万別だと思います。まずは映画をシンプルに楽しんで、自分の正直な感情と向き合ってみてほしいです。