中国ドラマ「夢華録(むかろく)」のDVDが7月5日より順次リリース。同日よりU-NEXTで独占配信される。ディズニー実写映画「ムーラン」のリウ・イーフェイと「月に咲く花の如く」のチェン・シャオが共演した本作は、逆境に負けず勇敢に生きるヒロインと宮廷秘密警察のエリートが身分や立場にとらわれず愛を貫く姿を描いたロマンス時代劇だ。
映画ナタリーではNHK「中国語!ナビ」のレギュラーを務めるなど、中国文化に触れている橘ケンチ(EXILE / EXILE THE SECOND)に本作を鑑賞してもらい、インタビューを実施。共感したキャラクターやラブストーリーの魅力を聞いた。思わずキュンとした瞬間とは?
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取材・文 / 小酒真由子
中国ドラマ「夢華録(むかろく)」予告編公開中
それぞれの人物像が生き生きと見事に描かれている
──橘さんは英語も中国語も達者でいらっしゃって、今年4月からはNHK「中国語!ナビ」のレギュラーも務めていらっしゃいますが、中国語を始めたきっかけはなんだったのでしょうか?
2011年にEXILEが中国初ライブをするちょっと前に仕事で中国に行く機会があって、現地の人々のものすごいエネルギーを肌で感じて圧倒されたんですよね。そのときに英語だけでなく中国語もしゃべれたらほぼ世界中の人々とコミュニケーションできるんじゃないかと考えて、帰国してすぐに勉強を始めました。
──だから北京での中国初ライブ(「三国演義 中日韓風雲音楽祭」への出演)では橘さんが中国語でMCをされたんですね。大舞台で堂々と話されていましたが、あのときはまだ勉強を始めて間もなかったとは驚きです。最近では記者会見などでさらにスラスラと中国語でお話しされていますが、中国語上達の秘訣はなんでしょうか?
北京での初ライブのときは自分で内容を考えてひたすら暗記してしゃべりましたが、まあ、緊張しましたね(笑)。今でもそんなに流暢とは言えないんですけど、いろんなやり取りがちょっとずつできるようになって進化はしていると思います。語学上達の秘訣の一つは映像を観ることですね。普段から機会があれば中国のドラマやテレビ番組を観るようにしていて、「創造101」「創造営」といったオーディション番組や「這!就是街舞」といったダンス番組もチェックしたりしています。中国語の勉強になりますし、中国のオーディション事情や日本人とはまた違ったセンスで踊る中国人ダンサーを知ることができて面白いですね。
──今回は2022年の中国時代劇ドラマNo.1ヒットを記録した話題作「夢華録(むかろく)」をご覧いただきました。
2022年度配信ドラマ再生指数ランキング1位「夢華録」ってどんなドラマ?
父の罪により妓楼で働いていた過去を持つヒロイン・趙盼児(ちょうふんじ)と宮廷秘密警察のエリート顧千帆(こせんはん)が身分や立場にとらわれず愛を貫く姿を描いた大ヒットロマンス時代劇。自分の生い立ちに劣等感をいだき、それを払拭するため懸命に生きてきた趙盼児をリウ・イーフェイ、“生き閻魔”と恐れられているものの実は心優しい顧千帆をチェン・シャオがそれぞれ好演し絶大な支持を得た。
主人公2人が紡ぐ上質なラブストーリーだけでなく、婚約者に裏切られた趙盼児、夫に愛する息子を奪われた親友の孫三娘(そんさんじょう)、結婚詐欺でひどい目に遭っている妹分の宋引章(そういんしょう)が逆境に負けず人生を切り開いていくサクセスストーリーも見どころ。彼女たちが悪を懲らしめる爽快な展開やスリリングな宮廷の陰謀劇も視聴者の心をわしづかみにし、1話あたりの再生数が1億4270万回を超え、2022年度配信ドラマ再生指数ランキング1位(endata調べ)を記録した。
──ドラマの感想はいかがですか?
最初はキャラクターの名前を覚えたり設定を把握したりするのに忙しかったんですけど、10話目あたりからすっと物語が入ってくるようになってすごく面白くなりました。どのキャラクターにもスポットが当たる時間がしっかりあって、それぞれの人物像が生き生きと見事に描かれているなと思いました。だから彼らに感情移入できるし、さまざまな人々の感情が交錯して複雑に絡み合っていくストーリーに引き込まれて、どんどん先が見たくなりました。
僕もデビュー前には趙盼児と同じようにもがいていた
──橘さんが一番共感できたキャラクターは誰でしたか?
ヒロインの趙盼児(ちょうふんじ)です。彼女はお父さんが原因で賎民に落とされた過去があって、自分ではどうしようもできない定められた環境の中でもがきながらも、いろんな人から助けを受けて変わっていく。そんなふうに彼女が“不可能を可能にしていく”ところがこのドラマのもっとも人を惹き付けるところだと思うんです。今の日本に住んでいたらそういう厳然とした社会階級の差を感じることもないですし、境遇も違うんですけど、僕もデビュー前には趙盼児と同じようにもがいていた時期がありました。大学を卒業して就職せずに好きなダンスを続けていたものの当時はストリートダンサーという職業や社会的な役割があまり認知されていなかったので、「今に見てろよ」という気持ちをずっと持ち続けていたんです。そんな中でEXILEの先輩方と一緒に1つひとつ目標を達成していって現状をひっくり返していくことを繰り返した結果、今があるので、趙盼児のようなキャラクターに一番共感できますね。
──そんな趙盼児と孫三娘(そんさんじょう)、宋引章(そういんしょう)との友情ストーリーはいかがでしたか?
3人とも婚約者や結婚相手にひどい目に遭わされて、そこから立ち直っていくのが面白いですよね。一緒に困難を乗り越えて成長していくのは女性の皆さんも憧れるところじゃないでしょうか。それにこの3人はバランスもいいですよね。3人で茶坊を始めて最初はうまくいかないけれど、それぞれ役割を認識し始めるとお店がうまく回りだす“チームワーク”がいいなと思いました。例えば、ダンスのチームもそれぞれの特技を伸ばして見せたほうがお客さんに届くし、個性が突出したメンバーを集めたほうがチームの色が出るということがあります。趙盼児が経営をやって、孫三娘が料理を担当して、宋引章が芸の道を行く。そんなふうにお互いを尊重し合ってそれぞれの担当がしっかり決まると、チームってうまくいくんですよね。
──この3人のチームワークで女性をいじめる悪い男たちを成敗していくのも、女性からするとスカッとする見どころですが……。
中国ドラマって女性がひどい目に遭うシーンがけっこうあって、ここまでやるんだなって実はびっくりしたところではあります。でも「夢華録」に登場する女性はそれにやり返す強さがありますよね。中国の方って個の力が強いなという印象があって、感情の振り幅も大きくて、ドラマの演出や演技に関してもスケール感が大きいというか、豪快さが際立つというか。俳優としての視点から見ても、そういう日本との違いを興味深く感じました。
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「笑った! 顧千帆が!」と思わずキュンときました(笑)