「ミスミソウ」山田杏奈×清水尋也×大谷凜香×内藤瑛亮 キャスト & 監督 座談会 / 押切蓮介 インタビュー|雪景色と鮮血のコントラスト…トラウマ復讐劇が実写化

純真無垢な少女がクラスメイトに家族を焼き殺され、復讐の鬼と化していく悲しくも切ない姿を描いた押切蓮介の衝撃作「ミスミソウ 完全版」が実写化。「先生を流産させる会」「ライチ☆光クラブ」などで少年少女の不安定な心情をすくい取ってきた内藤瑛亮がメガホンを取り、その残虐描写から「実写化不可能」と言われてきた“トラウマ作品”を映画として生まれ変わらせた。

映画ナタリーではメインキャストの山田杏奈、清水尋也、大谷凜香、そして監督の内藤による座談会を実施。過酷な雪山での撮影を、若き役者たちはどう乗り越えたのか、裏話満載で語ってもらった。さらに原作者である押切が、いち観客として映画の魅力を語るインタビューもお見逃しなく。

取材・文 / 金須晶子 撮影 / 入江達也

キャラクター紹介
野咲春花
  • 野咲春花(山田杏奈)
  • 野咲春花

野咲春花(山田杏奈)

心優しく物静かな中学3年生。父親の都合で東京から転校してくるが、クラスメイトからいじめの対象にされる。いじめグループによって家を放火され、両親を焼き殺されたことで彼らへの復讐を決意。

相場晄
  • 相場晄(清水尋也)
  • 相場晄

相場晄(清水尋也)

クラスメイトからいじめを受ける春花の唯一の味方である温和な少年。春花に好意を持っており、写真撮影が趣味。祖母と2人で暮らしている。

小黒妙子
  • 小黒妙子(大谷凜香)
  • 小黒妙子

小黒妙子(大谷凜香)

春花をいじめるグループのリーダー的存在。大人びた金髪の少女。本人は自分の周りに群れてくるクラスメイトたちを疎ましく感じている。

中島愛

春花はコントラストを大事に演じました(山田)

──まずは役に関するお話をお聞かせください。山田さんは、主人公である転校生・野咲春花を演じられました。

山田杏奈

山田杏奈 クラスのいじめっ子たちに両親を焼き殺され、復讐していくという役です。初めは優しくて物静かな女の子ですが、事件のあとはサイボーグのように機械的に復讐していく。そのコントラストみたいなものを大事に演じました。

──山田さんの憧れの女優は満島ひかりさんだそうですね。満島さんも過去にバイオレンス要素のあるヒロインを演じていましたが、何か参考にされたものは?

山田 今回の参考になったかはわからないですけど、「愛のむきだし」は観たことがありました。マネージャーさんに薦められて。

大谷凜香 私も観たことある! 面白かった。

清水尋也 満島さんのどんなところが好きなの?

山田 まず雰囲気が素敵だなって。あと、しゃべり方も好き。

清水 うんうん。

山田 満島さんがやる役って、満島さんが演じるから面白いんだと思うことがよくあって。そんなふうに、その俳優さんだからこそ出せる魅力があるところに憧れます。

──清水さんは、春花の心の支えとなる相場晄役を演じています。原作と比べて、序盤から何やら不穏さを醸し出している気がしたのですが……。

左から大谷凜香、清水尋也。

清水 僕の顔のせいでしょうか(笑)。でも相場って二重人格なわけではないんですよ。ドロドロしたものが彼の核としてあるけど、表面上は見えていないだけで。だから相場は何か隠しているつもりはないし、嘘をついているわけでもない。そこはすごく意識しました。

──内藤監督から見た、清水さん演じる相場はいかがでしたか?

内藤瑛亮 ほかのキャラクターたちが自分の感情に反した行動を取る中で、相場くんだけは最後まで「自分は正しい」と信じて正義を実行していくんです。少年マンガの主人公が言いがちなカッコいいセリフもあるけど、相場くんを通して発するとその言葉の危なさが浮き彫りになる。

「ミスミソウ」

──「僕が君を守る」といったセリフが。

内藤 いいセリフっぽく聞こえますが、無意識に女性の自立心を無視している。男性にありがちな「強くカッコいい自分への憧れ」が表れています。清水くんはそういった面を“普通”に演じてくれたのがよかったです。

人一倍がんばらなきゃならなかった(大谷)

──春花をいじめるグループにとっての女王的存在・小黒妙子役の大谷さんは、今作で初めて演技に挑戦されました。

大谷 はい。たくさんの原作ファンに愛されている作品で、こんな重要な役を……。大きな不安がありましたが、金髪の役ということで形から役に入ることができて。そこでまず1つ、いい意味でストッパーを外せたと思います。

大谷凜香

──監督とのリハーサルも重点的に行ったそうですね。

大谷 はい。中でも春花と妙ちゃんのバス停の場面はかなり重要になるので、特にたくさん練習させてもらいました。

内藤 基本的には山田さんと大谷さんと3人でリハーサルをして。山田さんが参加できないときは、俺が春花役をやったり。

清水 それ観たい!(笑)

内藤 結局、俺が相手役を演じちゃうと、大谷さんの芝居がわかんなかったんだけどね(笑)。

大谷 あとは宿の部屋で杏奈ちゃんがいないとき、翌日撮影するシーンについて主題歌を流しながら1人でずっと考え込んだり。

清水 病んでた?(笑)

大谷 あのときは病んでた(笑)。本当に、私は人一倍がんばらなきゃならなかったから。

内藤 妙子役は、とにかく存在感が大事だなと思っていて。演技がうまいとか原作の絵に似ているだけでなく、その人自身の輝きを求めていました。そういう意味で大谷さんには、求めていた輝きをオーディションのときに感じて。

「ミスミソウ」

──監督はこれまでも演技未経験のキャストを多く起用されているので、そのあたりは特に気にならなかったのでしょうか。

内藤 スタッフには「大丈夫ですか?」と散々言われましたが(笑)、最終的に「大谷さんで行きたい」と通しました。でも最初のリハーサルをやったときは「ちょっとヤバいかも……」という雰囲気になって(笑)。

大谷 (申し訳なさそうに)そうでした。

内藤 あの輝きはなんだったんだ!?って一瞬焦ったり。その場にいた人たちの「あれ、本当に大丈夫なのかな?」っていう空気……大谷さんも感じたんじゃない?(笑)

大谷 はい。申し訳ありませんでした……(笑)。

内藤 (笑)。でも本当によくがんばってくれたなと。本人も芝居したいという気持ちがもともとあったみたいだし、妙子という役を必死につかみ取ろうとしてくれて。そうやって1人の女の子が女優になっていく姿を見れた感動がありました。試写を観た人たちからは「(演技が)初めてだとは思わなかった」って感想をよく聞くよ。

大谷 本当ですか!? ありがとうございます。

内藤 この3人だけじゃなく、ほかのみんなもそう。雪まみれ、血まみれで本当に寒かったと思いますが、よくがんばったなと思います。

妙子は“田舎の子ががんばっておしゃれした感”(内藤)

──雪山での撮影は本当に大変だったと思いますが、真っ白な景色に赤い血が映えて美しく感じました。

「ミスミソウ」

山田 私もスクリーンで観て、きれいだなと思いました。マンガの白黒だけでは表せない、実写ならではの表現ですよね。映画では、春花の衣装も赤なんです。原作は特に赤い服は着ていないので、なんでだろう?と思っていたんですけど、映画を観て納得しました。

内藤 白い世界に血の赤が鮮烈に映えるっていうのは、「ファーゴ」という映画なんかもそうで、定番ではあるんです。春花は序盤では紺色の服を着ていて、赤が差し色になっている。そして彼女が復讐者になるにしたがって、赤に染まっていくイメージで。最終的にはジャケットの下に着ている服も赤になる。

──対する妙子は白い服を着ていました。

「ミスミソウ」

内藤 春花に対して不吉な存在である人たちが、それぞれ白い服を身にまとっています。その白い服が赤色に染まっていく。あと妙子は“田舎の子ががんばっておしゃれした感”を出そうとしました。

大谷 金髪にする前、イメージの写真をもらったんです。今どきの金髪だったら白っぽかったりピンクを入れたり、いろいろあると思うんですけど、妙子のは本当に抜きっぱなしの色! セルフブリーチ風の金髪を意識しています。

top
「ミスミソウ」
2018年4月7日(土)公開
「ミスミソウ」
ストーリー

東京から田舎に転校してきた野咲春花は、部外者として扱われ、壮絶ないじめを受けていた。唯一の味方は、同じように転校してきたクラスメイトの相場晄。彼の存在を心の支えに、必死に耐えてきた春花だったが、クラスの女王的存在・小黒妙子の取り巻きによる嫌がらせは日に日にエスカレートしていく。そんなある日、春花の家が火事に遭う。春花の妹・祥子は大やけどを負いながらも助かったが、両親は命を落としてしまった。やがて事件の真相を知った春花は、いじめっ子たちへの陰惨な復讐を開始する。

スタッフ

監督:内藤瑛亮
脚本:唯野未歩子
原作:押切蓮介「ミスミソウ 完全版」(双葉社刊)
主題歌:タテタカコ「道程」(バップ)

キャスト

野咲春花:山田杏奈
相場晄:清水尋也
小黒妙子:大谷凜香
南京子:森田亜紀
佐山流美:大塚れな

※R15+指定作品

山田杏奈(ヤマダアンナ)
2001年1月8日生まれ、埼玉県出身。2011年、「ちゃおガール☆2011オーディション」でグランプリを受賞してデビュー。近年の出演作に映画「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」「咲-Saki-」「あゝ、荒野」「野球部員、演劇の舞台に立つ!」、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」など。2018年6月には「わたしに××しなさい!」が公開され、同作のドラマ版にも出演する。
清水尋也(シミズヒロヤ)
1999年6月9日生まれ、東京都出身。2014年、中島哲也監督作「渇き。」でいじめられっ子の【ボク】を演じて強い印象を与える。その後、「ソロモンの偽証 前篇・事件 / 後篇・裁判」「ストレイヤーズ・クロニクル」「ちはやふる」シリーズ、「逆光の頃」、ドラマ「電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-」「anone」などに参加。公開待機作に「3D彼女 リアルガール」がある。
大谷凜香(オオタニリンカ)
1999年12月24日生まれ、宮城県出身。2012年、第16回ニコラモデルオーディションで応募者12272人の中からグランプリに選ばれ、ファッション誌・ニコラの専属モデルとなる。その後、2016年6月号まで同誌で活躍した。2015年10月からテレビ東京系のバラエティ番組「ポケモンの家にあつまる?」にレギュラー出演中。
内藤瑛亮(ナイトウエイスケ)
1982年12月27日生まれ、愛知県出身。短編「牛乳王子」で学生残酷映画祭2009のグランプリを獲得。その後、「先生を流産させる会」「ライチ☆光クラブ」「ドロメ」2部作、dTVオリジナルドラマ「不能犯」など話題作を立て続けに手がけた。現在、長編自主映画「許された子どもたち」を制作中。