「君子盟」は本当にうまいタイトル(島田)
──主人公2人だけでなく、蘭珏の頼れる親友・王硯(おうけん)、張屏の世話を焼く親友・陳籌(ちんちゅう)といった周囲の人物との関係性も「君子盟」のお楽しみポイントです。蘭珏&張屏のほかに好きなコンビはいましたか?
沢井 まずは張屏と、グオ・チョン(郭丞)演じる陳籌ですね。張屏が行き詰まったとき、陳籌が迎え入れてくれるのが“お家”みたいというか。張屏の帰るべき場所みたいなポジションでほっこりしました。蘭珏と張屏もよきバディなんですけど、張屏と陳籌はちょっと温かみがあって、お互いの理解者という印象。すごく好きなペアでした! もう1組は張屏とホウ・トンジアン(侯桐江)扮する師匠です。師匠が張屏をギュッとして「お前をどこにもやらん」みたいなことを言うシーンすごく心温まりました。張屏の愛されぶりは、殺伐とした事件が続く中での癒やしでしたね。
島田 師匠が好きな人、けっこう多いですよね。あとみんな絶対に気になるのがホン・ヤオ(洪堯)演じる王硯と蘭珏のペアでは。友情のその先の余白を残す2人ですよね。王硯ってすごくいいやつじゃないですか。物語の後半になるほど、本当に気持ちのいいやつだってことがわかってくる。男気があって弱い者を放っておけない。そして蘭珏の秘密を知りながらも守っていく。張屏のことも、最初は厄介者扱いしていましたけど最終的には守っていましたし。そんな王硯にシビれて、蘭珏との特別な関係がすごく気になりました。
沢井 いいキャラですよね。主人公にそれぞれ親友がいて、この4人の中で誰かが嫉妬したり邪魔していくのかな?と思いきや、誰一人そんなことなく。力を合わせていく姿に、みんな君子だ!と感動しました。
島田 だから「君子盟」なんですよね。うまいタイトルだなと思います、本当に……。
これや! こういうのが観たかった!(沢井)
──さらにドラマの後半、蘭珏の謎めいた旧友・辜清章(こせいしょう)が登場します。そこからまた急展開を迎えていくわけですが……。
沢井 辜清章の登場には、これや! こういうのが観たかった!となりました(笑)。蘭珏が辜清章を「知己」と呼ぶのも、はいはい、これは必須ワードですよねと。蘭珏が辜清章を紹介するシーンでは、張屏が2人の距離感に入り込めない自分を持て余しているようで。その淡い嫉妬心みたいなものに張屏本人は気付いてない……でも顔には出てるぞっていうのがよかったです。
島田 私もそこは印象的でした。この2人絶対“アレ”でしょ!という親密さが伝わってきました(笑)。蘭珏は辜清章との再会に戸惑いながらもウキウキして、もう浮き足立っちゃってるんですよね。そして張屏は、辜清章に対してあからさまに「怪しいぞ」という顔をしていて……そこが面白いです。
沢井 思わずまた1話を観返してしまいました(笑)。蘭珏に嫉妬するようになったのか……と胸に来るものがありましたね。張屏が陳籌に「知己ってどうやったらなれるんだ?」と尋ねるのも面白かったです。
島田 照れる陳籌がかわいかったですね(笑)。辜清章役のワン・ドゥオ(汪鐸)はぴったりでした。中国でもワン・ドゥオがどんな人物を演じるのか?とすごく話題になったみたいで。彼目当てで本作を観た人も多かったようです。
沢井 本当に、あのはかなげな登場から素晴らしかったです。登場話数としては多くないですが、しっかりこちらに訴えかけてくる存在感でした。辜清章のスピンオフはないんですか? 作ってください、とリクエストしたくなりました(笑)。
怪しくて引き込まれる余韻(島田)
──ミステリアスな世界観を際立たせる衣装、美術、音楽といった要素も「君子盟」の見どころですが、映像の美しさはいかがでしたか?
島田 幻想的でしたよね。夢か現(うつつ)か妖(あやか)しか……みたいな、不思議な気分になる演出が印象的でした。あと最近の流行りかもしれませんが、全体的にほの暗いトーンで、夜のシーンが本当の夜の闇を感じさせる臨場感でした。オープニングとエンディングも、本作の楽曲は歌ものではなく、それが物語の世界観を際立たせていて、怪しくて引き込まれる感じで余韻が残りましたね。
沢井 島田さんのおっしゃるように夜のシーンが印象的でした。人の顔がわかるぐらいの明るさではあるんですけど、怪しくて美しい雰囲気で。美しいから怖いのかな?とも思ったりして、引き込まれていきました。大きいスクリーンで観たいです。
──ろうそくのゆらめきが怪しくてきれいでしたね。中国の時代劇やブロマンス好きの方々はすでに本作に目を付けていた方が多いかと思いますが、ほかにどんな人にお薦めしたいですか?
沢井 ミステリー、サスペンス、宮廷の権力争い、出生の謎、あとは東洋的な呪術だったり、何か「好きかも」とピンと来るものがあれば、ぜひ観てほしいです。中国のブロマンスものって「ブロマンスと武侠」「ブロマンスと仙侠」みたいにプラスアルファが必ずあるんですが、今回は「ブロマンスとミステリー」で、その要素が気になる人にもお薦め。意外と硬派な描写も多いので「三国志」のような歴史もの好きの方も面白く観られるんじゃないでしょうか。
島田 観る角度によっていろいろな捉え方ができる作品ですよね。武侠ものではないけれど、それに通じる義理や人情みたいなものもありますし。時代劇ですが現代ミステリー好きな方にとっても見応えがあると思います。不思議な物語が好きな方も楽しめますので、普段から中国ドラマに触れていなくても、もし興味を持ったらぜひ一度のぞいてみていただきたいです。
中国ドラマ「君子盟」第1話特別公開中
プロフィール
沢井メグ(サワイメグ)
ライター / 翻訳者。中華圏のドラマとマンガを溺愛し、多数媒体で中国・台湾エンタメや文化、時事ニュースなどを中心に記事を執筆、翻訳。Cinem@rt公式Xにてドラマがもっと楽しくなる豆知識「#たのしいアジアドラマ」をお届け中。主な訳書にルアン・グアンミン「用九商店」シリーズ、毎日青菜「DAY OFF」(ともにトゥーヴァージンズ刊)がある。TOKYO MX「日曜はカラフル!!!」、日本テレビ「スッキリ」の中国ドラマの特集コーナーにも出演した。
島田亜希子(シマダアキコ)
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆するほか、中文翻訳もときどき担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「アジア俳優名鑑」「中国エンタメニュース」を連載中。「中国時代劇で学ぶ中国の歴史」(キネマ旬報社)、「見るべき中国時代劇ドラマ」(ぴあ)などにも執筆している。ポッドキャスト番組「小酒真由子・島田亜希子の中華ドラマ雑談」を配信中。
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