ツォン・シュンシー×リウ・ユーニン 美男スター共演!中国ドラマ「江湖英雄伝~HEROES~」をライタートークで紐解く

中国ドラマ「江湖英雄伝~HEROES~」がU-NEXTで独占先行配信中。DVD-SET1~3が4月5日、5月3日、6月2日に発売となり、同日にDVDレンタルも開始される。

本作は中国での配信開始から21時間で再生数1億回を突破したロマンスアクション時代劇。義を重んじる金風細雨(きんぷうさいう)楼と利益重視の六分半(ろくぶはん)堂が勢力を二分する江湖(こうこ)を舞台に、英雄に憧れる心優しき青年・王小石(おうしょうせき)、一匹狼の剣客・白愁飛(はくしゅうひ)、洛陽王の娘・温柔(おんじゅう)による愛と友情の物語が紡がれる。「宮廷衛士の花嫁」のツォン・シュンシーが王小石、「長歌行」のリウ・ユーニンが白愁飛、「鳳舞伝 Dance of the Phoenix」のヤン・チャオユエが温柔を演じた。

映画ナタリーではライターの小酒真由子、島田亜希子の対談をセッティング。数々の中国ドラマを観てきた2人に、恋愛・アクション・ブロマンスなどの視点で魅力を語ってもらった。

取材・文 / 小澤康平

小酒真由子×島田亜希子 対談

「中国ドラマってこういうものでしょ」という概念を吹き飛ばしてくれる

小酒真由子 この作品、始まり方からとにかくかっこよかったです! 講釈師のおじさんが英雄について語る歌を歌っているところに、誰かのお骨を持って旅する主人公・王小石(おうしょうせき)が通りかかって「歌詞に出てきたのは私の旧友と敵だ、皆もういない」と告げるんです。日本で言うと琵琶法師が「平家物語」を語るみたいな演出ですよね。何があったのかはこれから振り返って描かれるというワクワク感があって、これは私の好きなタイプの作品だと思いました。気が付いたら最後まで一気に観てましたね。

島田亜希子 私も面白くて一気見しちゃったんですけど、終わった途端にロスになっちゃって。先がすごく気になるストーリーなので、ついつい見進めてしまうんですよね。もうちょっとゆっくり観ればよかったかな……。

小酒 2周目でまたじっくり観るのはどうでしょう(笑)。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、ツォン・シュンシー演じる王小石。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、ツォン・シュンシー演じる王小石。

島田 そうですね(笑)。中国では配信後21時間で1億回再生されたという作品なのですが、「中国ドラマってこういうものでしょ」という概念を吹き飛ばしてくれるロマンスアクションだったので、その人気の理由がわかります。アクションシーンはリズム感があって、骨太なんだけど適度な軽さもある。武侠ファンじゃなくてもとっつきやすいのが魅力的だなと思いました。

小酒 本当にそうでしたね。武侠ドラマと言えば竹林のてっぺんに人が立ってるみたいな、普通ではあり得ない豪快なアクションがお約束だったりしますが、「江湖英雄伝~HEROES~」のワイヤースタントはちゃんと重力を感じるというか。しかもみんな重そうに刀を振っていて、超人的すぎる技は出てこない。人間と人間のリアルな戦いという感じがしました。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、シャオ・フォン演じる雷損。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、シャオ・フォン演じる雷損。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、リウ・ユーニン演じる白愁飛。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、リウ・ユーニン演じる白愁飛。

島田 アクションが今どきでしたよね。印象的なサウンドとともに剣術を繰り広げる場面は、かっこいいミュージックビデオみたいだし、新感覚でもあって。あとは悪役の悩みの描写が濃くてよかったです。例えば六分半(ろくぶはん)堂の雷損(らいそん)には「こんなことやりたくないけど、やらないとみんなを守れない」という葛藤がありますよね。悪い部分と、仲間思いの優しい部分が共存している。「わかるその悩み!」みたいなのがたくさんあったので、悪役の人気が高いのも納得でした。それから白愁飛(はくしゅうひ)はバックボーンがない自分に対するいじけが悪い方向に行っちゃいますけど、「王小石と比べて俺には何もない」みたいな、他人と比べて卑下してしまうところは、なんとなく共感できちゃいますよね。

小酒 悪役にもフォーカスを当てて深く掘り下げているのは、現代的かもしれないですね。さらに、どうしようもない世界でヒーローが奮闘するというのは全世界共通のテーマだなと。役人が一番の悪で、法の秩序が失われた世界の話というのはアメコミにもあるような設定ですよね。王小石の視点としては若い人の共感を得られると思うし、物語全体としては年代を問わず楽しめると思います。

バロン・チェンの魅力に開眼

──王小石役のツォン・シュンシーの魅力はどんなところにありますか?

島田 素直で明るくて、自然とみんなが周りに寄ってくる太陽みたいな王小石のキャラクターが、ツォン・シュンシーの見た目や雰囲気にぴったりでした。以前はやんちゃで元気なキャラを演じていて、かわいい王子様という印象だったんですが、近年は「宮廷衛士の花嫁」の李謙(りけん)のように、少年らしい心を持ちながらも包み込むような優しさのある大人を演じるようになって。ますます輝きが増してきていると思います。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、ツォン・シュンシー演じる王小石。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、ツォン・シュンシー演じる王小石。

小酒 中国版Instagramと言われている小紅書(RED / レッド)でツォン・シュンシーのことをフォローしているんですが、いちいち写真がかっこいいんですよ。子犬っぽい顔だからかわいらしくも見えるけど、実は男気がある感じというか。そのギャップも好きです。

島田 ギャップ萌え、ありますよね。彼は少年から大人へと成長していく思春期の脆さや、心揺れ動く感じを表現するのがすごくうまい。明るさの中にさみしさを漂わせていたり、華やかな見た目からは想像しづらい二面性を感じさせてくれるんですよね。余談ですがツォン・シュンシーは広東省出身ということもあって、広東語でインタビューに答えているときがあるのですが、雰囲気がまた全然違って。そういう意外性が魅力であり、ドキッとさせられるところなのかな、と思います。

──では白愁飛役のリウ・ユーニンはいかがですか?

小酒 リウ・ユーニンはネット発でブレイクしたバンドのボーカルで、自分たちでいっぱいライブ配信をして人気を獲得した人です。中国には名門の音楽学校や芸術学校出身の音楽アーティストがたくさんいるので、その中では異色で。それこそ自らの力でのし上がってきたところは白愁飛と共通点があって面白いですね。そういうバックグランドの持ち主だからか、演劇学校やアイドル出身の俳優たちとも出してるオーラが異なっている気がします。いい意味で我が道を行くナルシストな雰囲気があるというか。悪役が似合うクールさがあるんだけど、どこかちょっとだけ隙があって、母性本能がくすぐられるかわいさも持っています。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、リウ・ユーニン演じる白愁飛。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、リウ・ユーニン演じる白愁飛。

──中国ドラマ「山河令」「長歌行」などのサントラを歌ってますよね。

島田 このドラマの中でもアーティストっぽい雰囲気がありました。白愁飛の絵の才能がフィーチャーされる展開もありますけど、もうそっちの道に進めばいいのにって。

小酒 あははは。

島田 しかも、アクセサリーも作れる特技まで持っているという。だから彼は、あえて剣を持たなくてもよかったのかもしれない(笑)。

小酒 リウ・ユーニンって、たぶん男性から見たらそこまで女性にモテるタイプと思われないんじゃないかな。でも、バレンタインデーに誰よりもいっぱいチョコをもらって、ほかの男子から「なんであいつモテるの?」と思われるようなタイプですね。

島田 わかります、それ。

小酒 彼は中学校に入ったらモテ出したそうなんですが、「モテて生意気だ」と、周りの男子に因縁をつけられるようになったらしくて。それで喧嘩に強くなるために山の上にいるカンフーの師匠みたいな人に武術を習いに行ったんだけど、それが健康武術みたいな感じで、実戦には役に立たなかったんだとか。このドラマのアクション演技にも全然役に立っていないという話をインタビューでしていましたよ。

島田 なんか、かわいい人ですね(笑)。あと蘇夢枕(そむちん)を演じたバロン・チェンも最高でしたよね。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、バロン・チェン演じる蘇夢枕。

「江湖英雄伝~HEROES~」より、バロン・チェン演じる蘇夢枕。

小酒 私、そこまでバロン・チェンのファンではなかったんですけど、これを観てバロンの魅力に開眼しました。バロンのお父さんって台湾で有名な組織のボスなんです。幼いうちに両親が離婚したので父とは離れて育ったらしいんですが。そういう出自だけど真っ当に生きてきた彼が、仁義ある組織のボスを演じたことも何だか感慨深くて。彼の代表作になったと思います。