映画ナタリー Power Push - NON STYLE井上裕介が語る、「心が叫びたがってるんだ。」
新しくて懐かしい青春映画の魅力に“超ポジティブ芸人”が迫る
アニメなのにアニメじゃないみたい
──「あの花」も「ここさけ」も好きだという井上さんから、長井龍雪監督をはじめとするスタッフの方々に聞いてみたいことはありますか?
うーん……どんなときにこんな話を思いつくのかを聞きたいですね。スタッフの方々もずっと前に高校を卒業しているはずなのに、なんでこんなにリアルに今の10代を描けるのかを知りたいです。あとは女の子の感情を上手に掬い上げているので、高校時代にモテたかも聞いてみたいですね(笑)。
──監督の長井さん、脚本の岡田さん、キャラクターデザイン・総作画監督の田中将賀さんはともに1976年生まれですね。
どうしたら「ここさけ」のような物語が思い浮かぶんですかね? しかも今回、スタッフが再集結して、同じく秩父を舞台にしているから「あの花」と比較されることを前提にしている部分があったと思うんです。その中で、「あの花」はリアリティから始まってファンタジーに着地するような印象を受けたんですが、「ここさけ」は逆にファンタジーから始まってリアリティに着地するような感覚を持ったんです。その物語の構成やキャラクターのリアリティが、観ているうちに「アニメなのにアニメじゃない」って感じの不思議な感覚を生んでいたように思えて。「あの花」が実写化されますけど(参照:「あの花」が実写ドラマ化、村上虹郎ら“超平和バスターズ”のキャスト発表)、「ここさけ」もすごく実写化に向いてると思いますね。
──実写化されたとして、井上さんが演じてみたいキャラクターは誰ですか?
年齢的に近いからというのもありますけど順ちゃんたちの担任の城嶋ですかね。終盤すごくかっこいいセリフを言うので、それを自分の口で言ってみたいですね(笑)。
──劇中のミュージカルを総括する素敵なセリフですよね。
でも、もし出演させていただけるなら、順の父親でもいいです。不倫してその結果として離婚される散々な役ですけど(笑)。
皆ネガティブな青春映画
──この作品の魅力を、叫んで伝えるとしたらなんと言いますか?
そうですね……「みんなネガティブだぞ!」かな(笑)。
──(笑)。
本当に城嶋ぐらいしかポジティブな人がいないんですよ。しかも実写化されたときに僕が狙っている(笑)城嶋先生は、ネガティブな人がポジティブになる環境を作っているから素晴らしい。
──なるほど。Twitterや「まいにち、ポジティヴ!」での井上さんのようですね。
いやいや……。メインの登場人物は皆ネガティブだけどそんな人たちでも集まれば大きな力を生み出せるってことが、作品の中で力強く描かれていると思いました。
──では最後に井上さんが今、心から叫びたいことを叫んでいただけますか?
俺にも声優をやらせてくれー!
──その言葉は誰に向けているんですか?
長井監督です。監督、オファー待ってますよ。
──もしオファーが来るとして、どういう役をやりたいですか?
ラブストーリーで二枚目の役を演じたいです。それでクレジットには僕の名前を出さないで、アニメファンの子たちが「あのキャラクターの声かっこいいよね」と話題になっている中で、「実はNON STYLEの井上でした」って発表したいですね(笑)。
キャラクター紹介
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- 成瀬順(CV:水瀬いのり)
- 玉子の妖精によっておしゃべりを封印された少女。高校に進学したあとも無口なまま周囲に心を閉ざしていたが、ミュージカルでは主役を務める。
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- 坂上拓実(CV:内山昂輝)
- チャレンジする気持ちを失った少年。心を閉ざした成瀬順に自分と似た境遇を感じ、ミュージカルを作曲担当として支えていく。
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- 仁藤菜月(CV:雨宮天)
- チアリーダー部の部長を務める優等生。中学時代に坂上拓実と付き合っていたが、周囲のからかいや、すれ違いがきっかけで疎遠になる。
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- 田崎大樹(CV:細谷佳正)
- 大会直前に肘を負傷した野球部の元エース。挫折と不満から攻撃的な態度をとるようになり、坂上拓実らと衝突していく。
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- 城嶋一基(CV:藤原啓治)
- 成瀬順らの担任教師。地域の人々に喜んでもらう催し“地域ふれあい交流会”の実行委員に、関わりのない4人を強引に選出する。
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- 成瀬泉(CV:吉田羊)
- 成瀬順の母。幼い頃の順の一言をきっかけに夫と離婚。その後、女手ひとつで娘を育ててきた。言葉を発しない順を恥ずかしく思っている。
ストーリー
幼い頃、何気なく発した言葉によって家族がバラバラになってしまった少女・成瀬順は、突如現れた“玉子の妖精”に二度と人を傷つけないようおしゃべりを封印されてしまう。高校2年生になってもトラウマを抱えたまま、周囲に心を閉ざしていた順だったが、ある日担任の城嶋から、「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命される。同じく城嶋によって選ばれたのは、やる気のない少年・坂上拓実、チアリーダー部の優等生・仁藤菜月、野球部の元エース・田崎大樹らクラスメイトたち。最初は実行委員を辞退しようとした順だったが、彼らとの交流を通し少しずつ変化していく。そんな中、城嶋の思惑により交流会の出し物がミュージカルに決定。歌なら声を発せられる順は主役に抜擢され、楽曲の作詞も務めることに。周囲の協力を得て、すべてが順調に動き出して迎えた発表前日、順はある光景を目撃してしまい……。
スタッフ
- 原作:超平和バスターズ
- 監督:長井龍雪
- 脚本:岡田麿里
- キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀
- 音楽:ミト(クラムボン)、横山克
- 主題歌:乃木坂46「今、話したい誰かがいる」(Sony Music Records)
- 制作:A-1 Pictures
キャスト
- 成瀬順:水瀬いのり
- 坂上拓実:内山昂輝
- 仁藤菜月:雨宮天
- 田崎大樹:細谷佳正
- 城嶋一基:藤原啓治
- 成瀬泉:吉田羊
井上裕介(イノウエユウスケ)
1980年3月1日、大阪府生まれ。中学、高校の同級生である石田明とNON STYLEを結成し、兵庫県・三宮駅付近の路上を中心に漫才を行う。2000年、baseよしもとのオーディションに合格、プロデビューを果たす。2006年、第4回MBS漫才アワードで優勝。以後多くの漫才コンクールで新人賞を獲得する。2008年、活動拠点を東京に移す。同年、M-1グランプリで優勝し、4489組の頂点に輝く。2015年3月、日めくりカレンダー「まいにち、ポジティヴ!」が発売された。