映画ナタリー Power Push - 「恋妻家宮本」阿部寛 / 天海祐希 / 遊川和彦インタビュー
「家政婦のミタ」脚本家が初メガホン、伝えたいメッセージは“正しさより優しさが大切”
「女王の教室」「家政婦のミタ」などで知られる脚本家・遊川和彦が初めてメガホンを取った「恋妻家宮本」が、1月28日に公開される。本作は重松清の小説「ファミレス」をもとに、子供が独立して2人きりになった50代夫婦の生活をコミカルに描いたホームドラマ。阿部寛と天海祐希がダブル主演を務めた。
映画ナタリーでは、阿部と天海に自身が演じたキャラクターへの思いや久々に共演した感想について語ってもらった。さらに遊川には、主演の2人を起用した理由や撮影エピソード、過去に手がけたドラマ作品を楽しむためのポイントを聞いた。
取材・文 / 秋葉萌実 撮影 / 小坂茂雄
阿部寛 インタビュー
ご自身が演じた宮本陽平について教えてください。
僕が演じた陽平は、優しいけど優柔不断ではっきりしないところがあって、相手にうまく気持ちを伝えられない男です。50歳近い男なんですけどすごく純粋で。教師としては、心から迷いながら教育しているところがいいなと思います。こういう先生っていつまでも心に残っていて、大人になってからも「あの先生よかったな」と思うんですよね。自分が出会った先生たちと重なったので、このキャラクターがすごく好きです。
完成した作品を観たときの感想は?
自分の演技が今まであまり見たことのないものだったので、最初はびっくりしました。でも人はそういうのに心が揺さぶられるところがあるんだなと、観てくださった方の意見を聞いて思いました。遊川監督は役者をやられていたから、(撮影時に)ご自分で演じてくれるんですよ。超えられないんだこれが! 監督が演じられることで出る哀愁と、僕を通したものがちょっと違うものになっちゃうのは、そこはちょっと悔しいんですけど。
天海さんと共演されていかがでしたか?
すごくうれしかったです。僕は天海さんががんばっていらっしゃる姿を陰ながら応援して、自分の励みにしていました。最後に2人で駅の中で語り合うシーンは、テストのときから涙が止まらなくて。セリフを借りながらも、何かほかのものも伝わってきたんです。天海さんがそういう女優さんになられたことを僕は本当に尊敬するし、自分が助けていただいた瞬間だなって思いました。
これから映画を観る方にメッセージをお願いします。
今回の作品は夫婦で観に行っても優しい気持ちになって劇場を出られるというのがすごく素晴らしいと思うんです。もちろん若い人にも観ていただきたいし、そこを過ぎた年齢の方たちにとっても、何か心にあるものがよみがえってくる作品なので。いろんな優しい心が出て行くといいなって思いますし、そういうのを見送りたい気分です。
天海祐希 インタビュー
ご自身が演じた宮本美代子について教えてください。
授かり婚をして、教員になる夢をあきらめて家庭に入った専業主婦の女性です。子供が手を離れて陽平さんと2人になると、なんとなく「自分はこれでいいんだろうか」という思いが生じてきて。陽平さんは趣味や仕事など家庭以外の世界を持つようになるんですが、そこに美代子は寂しさなのか怒りなのか悔しさなのか嫉妬なのかを抱えて、離婚届を手に入れました。それは彼女にとってなんだったのか、そしてなぜ離婚届を手にしたのかということがこの物語の始まりです。
完成した作品を観たときの感想は?
私は家庭にいる陽平さんしか見ていないので、学校や料理教室の姿をすごく楽しんで見られました。「ああ、ここでも打たれてる。ここでも……。打たれ続けて家に帰ってきて、ガミガミ言われたら嫌だよな」と思いながら。でもどこでもすごく誠実に向き合っている陽平さんを見ていると、一生懸命に人生を歩んでいる姿がすごく素敵だなあとも感じて、「もう、美代子さんもわかってあげて!」と思いました(笑)。
阿部さんと共演されていかがでしたか?
阿部さんの顔を見ると初心に戻るんですよね。最初にご一緒したのは、私がドラマに出始めた頃の作品で、それから約20年後に、2人でこうやって映画をやらせてもらえるまで自分がお仕事をいただけているとは思いませんでした。阿部さんはたくさんの作品の中心でみんなを引っ張っているところにおられるので、その背中を見て「私もがんばろう!」って思えるような貴重な先輩です。
これから映画を観る方にメッセージをお願いします。
妻に恋している旦那さんも多いんだけど、それをなかなか言葉にできなかったりしますよね。この映画を観てそれを陽平さんに代弁してもらって、映画館を出たら2人で手をつないでお家に帰ってほしいなあなんて思いました。 もちろん老若男女どの立場の方が観ていただいても、映画の中に必ずご自分のキャラクターがいると思います。
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ストーリー
宮本陽平と美代子は大学時代にファミレスでの合コンをきっかけに付き合い始め、妊娠発覚を機に結婚。それから27年を経て一人息子・正が自立し、夫婦は久しぶりに2人きりになった。ある日、陽平は美代子が隠していた離婚届を見つけてしまい……。
スタッフ / キャスト
- 監督・脚本:遊川和彦
- 原作:重松清「ファミレス」
- 劇中歌:吉田拓郎「今日までそして明日から」
- 出演:阿部寛、天海祐希、菅野美穂、相武紗季、工藤阿須加、早見あかり、富司純子
阿部寛(アベヒロシ)
1964年6月22日生まれ、神奈川県出身。モデルとして活動し、1987年に俳優デビュー。「テルマエ・ロマエ」では第36回日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞をはじめとする数々の映画賞に輝いた。近年の出演作は「エヴェレスト 神々の山嶺」「海よりもまだ深く」「疾風ロンド」など。
天海祐希(アマミユウキ)
1967年8月8日生まれ、東京都出身。1987年に宝塚歌劇団へ入団し、1994年に月組トップスターに就任。退団後はドラマ、映画、アニメーション作品など幅広いジャンルで活躍している。3月11日には出演作「チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」が公開される。