映画ナタリー Power Push - 「キングコング:髑髏島の巨神」
モンスターバースの幕開け!オタク監督がお気に入りを詰め込んだ新たな怪獣映画
“少年”に数百万ドル与えるとこういう作品ができあがるんだよ!
──ファイティングシーンを描くうえでこだわった点も教えてください。
今の時代、怪獣同士の戦いというだけでは十分ではないでしょう? そんなものはみんなもう何度も観てきているから。昔だったら怪獣映画だとかオタク文化って希少価値があったというか……怪獣同士が対決してるだけで「すげえ!」ってなったのですが。けど、今は何か違うアプローチになるフックがないといけなくて。
──例えば、どんな仕掛けを入れましたか?
キングコングが刀を鞘から抜くように木を取ったり、ヘリコプターのプロペラを道具にして振り回したり。そういうところから、キングコングにはきちんと戦略があるとわかり、彼の人となりが伝わってくるような設定にしているんです。とにかく人に期待以上のものを、そして今までと違う新しいものを観てもらいたかった。30m以上ある巨体がヘリコプターをやっつけるのも、ベトナム戦争兵たちが巨大生物の骨が散らばる墓場で戦うのも観たことないと思うので。こんな“少年”に数百万ドル与えるとこういうものができあがるんだよ!という作品になっています(笑)。
「自分がこの現場をコントロールする」と思って臨んだ
──本作は「キングス・オブ・サマー」に続く2本目の長編監督作品ですね。このような大作の現場をコントロールすることに不安はありませんでしたか?
大学を出たばかりでフィルムメーカーとして駆け出しだった頃、僕は一匹狼でした。だからすべてのプロダクションを自分でやっていたんです。照明、撮影、録音、ミックス、編集……すべてを自分でやりました。小道具係もです。すべての部門をできる限り理解しようとしました。今作で唯一自分にとって本当に新しかったことは、この規模のビジュアルエフェクト(VFX)でした。だからVFXに没頭して、よく理解するぞと思っていました。若い監督を雇い、VFX部門の思うままに進めるという状況にならないように、僕がこれらすべてをコントロールするんだと。
──相当大変だったのでは?
もちろんすごい仕事量でした。たぶん寿命が10年は短くなったかと(笑)。僕が「こんなふうにやりたい」と言うと、人々が「なぜ? そういうふうにやるべきじゃない、僕らはこうやるんだ」ということがよくあった。こういう映画を何十年もの間、何度も何度も作っていたら、あるアイデアや自負心が組み込まれてしまうんでしょう。ストーリーがどう展開すべきか、クリーチャーがどう動くべきか、エフェクトをどうするべきかとか。僕はそれらすべてを一新したかった。時々大変になりましたが、経験がないということが実際映画にとってよいこともあったのです。
「シン・ゴジラ」は大好き
──日本の「シン・ゴジラ」もご覧になったそうですが、いかがでしたか?
大好きですよ。「シン・ゴジラ」で成し遂げられたことを、僕もこの映画でやろうとしていました。それは、いかにしてこれまでのゴジラ映画とは違う特別な作品にするのか?という試みです。また非常に日本っぽいところもツボでした。官僚主義体制の愚かさにモンスターの要素が入ってくるのには新鮮みを感じましたし、まさに今の時代に作られるべきゴジラ映画でした。
──ありがとうございます。それでは最後に、映画の公開を楽しみに待っている日本のファンへメッセージをお願いします。
この映画は日本の文化から大いにインスパイアされて作った作品です。そして何より、なぜ2017年に新たなキングコング映画を公開するのか? なぜ人々は映画館に観に行くのか? そういったことを意識して作りました。「シン・ゴジラ」同様、この映画もモンスターを登場させることによって、よりメッセージ性を帯びたものになっていると思います。近年なかなか映画館へ足を運ばない人が多くなっていますが、「シン・ゴジラ」のように、この「キングコング」もぜひ映画館で観ていただきたいです。
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ストーリー
未知なる生命体の存在を確認しようと、学者やカメラマン、軍人からなる調査隊が太平洋の孤島スカル・アイランド(髑髏島)に上陸した。そこに突如現れたのは、巨大なる島の守護神・キングコング。島を破壊したことで彼を怒らせてしまった人間たちは究極のサバイバルを強いられることに。脅威はキングコングだけにとどまらず、まだまだ多くの巨大怪獣たちが島に潜んでいた。為す術もなく逃げ惑う人間たち。果たして調査隊は島から脱出できるのか──。
スタッフ
- 監督:ジョーダン・ヴォート=ロバーツ
- 脚本:ダン・ギルロイ、マックス・ボレンスタイン、デレク・コノリー
- 原案:ジョン・ゲイティンズ、ダン・ギルロイ
- 製作:トーマス・タル、メアリー・ペアレント、ジョン・ジャシュニ、アレックス・ガルシア
- 製作総指揮:エリック・マクレオド、エドワード・チェン
キャスト
- ジェームズ・コンラッド:トム・ヒドルストン(日本語吹替:GACKT)
- メイソン・ウィーバー:ブリー・ラーソン(日本語吹替:佐々木希)
- プレストン・パッカード:サミュエル・L・ジャクソン
- ビル・ランダ:ジョン・グッドマン
- ハンク・マーロウ:ジョン・C・ライリー
- ジャック・チャップマン:トビー・ケベル
- ビクター・ニーブス:ジョン・オーティス
- ヒューストン・ブルックス:コーリー・ホーキンズ
- グレン・ミルズ:ジェイソン・ミッチェル
- レグ・スリフコ:トーマス・マン
- レルス:ユージン・コルデロ(日本語吹替:真壁刀義)
- グンペイ・イカリ:MIYAVI
- モーションキャプチャ(キングコング):トビー・ケベル、テリー・ノタリー
- 「キングコング:髑髏島の巨神」公式サイト
- ワーナー ブラザース ジャパン (@warnerjp) | Twitter
- ワーナー ブラザース ジャパン | Facebook
- 「キングコング:髑髏島の巨神」作品情報
ジョーダン・ヴォート=ロバーツ
1984年9月22日生まれ、アメリカ・デトロイト州出身。映画監督。もともとはテレビドラマや短編作品を手がけていた。長編デビュー作となった青春コメディ「キングス・オブ・サマー」は2013年のサンダンス映画祭コンペティション部門でプレミア上映され、高い評価を受ける。現在は映画版「Metal Gear Solid(原題)」の監督としてプロジェクトを進行中。
2017年3月31日更新