中国ドラマ「祈今朝~失われた記憶、共鳴する愛~」のDVDが10月2日より順次リリース、U-NEXTでは独占先行配信されている。シュー・カイ(許凱)とユー・シューシン(虞書欣)が共演した本作は、3年前に記憶をすべて失った状態で目覚めた男女が、自分たちの素性と過去を探す旅に出るアクションファンタジー時代劇だ。
映画ナタリーでは、中国ドラマに造詣の深いライターの小酒真由子と沢井メグの対談をセッティング。作品の魅力、シュー・カイとユー・シューシンが海を越えて愛される理由などを語り合ってもらった。さらに話題はニチアサ(テレビ朝日系の朝の時間帯)の特撮戦隊ヒーローものや2.5次元舞台と中国ドラマとの親和性へ。中国ファンタジー時代劇特有の“愛の重さ”についてもトークを展開している。
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取材・文 / 金子恭未子
3年前に記憶をすべて失った状態で目覚めた越今朝と越祈は、自分たちの素性と過去を探すため江湖を渡り歩いていた。ある日、越今朝の予知能力をきっかけに、2人は過去の糸口をたどる新たな冒険の旅へ。苦楽をともにするうち、互いへの恋心に気付いていく2人だったが、越今朝と瓜二つの謎の男・扁絡桓が現れたことから運命が大きく動き出す。
「祈今朝~失われた記憶、共鳴する愛~」予告編公開中
同じ時空にシュー・カイが2人いる(沢井)
──お二人にはひと足早く「祈今朝~失われた記憶、共鳴する愛~」をご覧になっていただきましたが、いかがでしたか?
沢井メグ 同じ時空にシュー・カイが2人いるのがまず衝撃的で。これまでも彼は1人2役を演じたことはありましたが、それは転生の前後だったりしていたんです。でも、今回は声優さんもそれぞれ違う方で、どうやら別人格らしいというのが最初から匂わされている。どういう関係なんだろう?とすごくワクワクしながら観ました。最後まで観るとそういうことか!と。新しい1人2役で、面白かったです。越今朝派か、扁絡桓派かといったところでも盛り上がれそうですよね。
※編集部注:多様な方言がある中国では、標準語である普通話での放送を求められることが多く、また音響など制作上の事情もあり、中国ドラマでは俳優のセリフを声優が当てるケースもある。
小酒真由子 私はまったく予備知識なしで観始めたので、この仮面を被っている男性もシュー・カイだよね? この物語はどこに向かっていくんだろう?と最初はハテナがいっぱいだったんです。でも、主人公たちが旅に出てミッションを達成する中で、だんだんとその謎が解けて、世界や人間関係が明らかになっていく。お話が進めば進むほど面白く観られました。物語は複雑ではあるんですが、非常に親切な作品で、視聴者を置いてきぼりにはしない。
──過去の記憶を持たない主人公2人はいったい何者なのか? 同じ顔をした越今朝と扁絡桓はどんな関係なのか? その謎が解き明かされていくストーリー展開は本作の大きな見どころの1つです。
沢井 なかなか先が読めなくて、最終話まで食い入るように観ました。タイトルの「祈今朝」は越祈と越今朝の名前が合わさったものなので、世界の命運を背負った男女が、何かを成し遂げるような壮大なストーリーだろうと予想はしていたんです。実際、その予想は当たっていたんですが、ただ想像以上の展開が待ち受けていて。
小酒 まさかああいう展開になるとは。おー!と思いました。序盤で挫折せず、最後まで観てほしい作品です。
──小酒さんは日本上陸以前にすでに本作をご覧になっていたとのことですが、中国本国ではどういった評価だったんでしょうか?
小酒 「祈今朝」は「仙剣奇侠伝」というゲームの6作目が原作なんですが、日本でいうなら「ファイナルファンタジー」ぐらい人気と知名度のある作品なんです。これまで何度も映像化されているシリーズなので、ものすごく注目度が高かった。そんな中、原作をリスペクトしていると原作ファンからは好評でした。さらにドラマ化にあたって、恋愛要素、主人公カップルの成長ストーリーがかなり膨らませてあるので、原作を知らなくても、共感できて、ハマったという声が大きかったです。ちなみに「祈今朝」は「仙剣奇侠伝」の1作目と同じく記憶喪失と“もう1つのとある要素”が重要な鍵になっているんです。今作はさらに現代的なSFっぽいひねりがあったのも、面白いと思いました。
ニチアサの戦隊ヒーローものとの共通点は多い(小酒)
──謎に満ちたストーリー展開、仲間との友情や敵との因縁、かっこいいアクションなど、本作は見どころ満載です。少年マンガや、戦隊ヒーローものが好きな人などにも刺さりそうな要素がちりばめられている印象を受けました。
小酒 主人公2人が旅をしながら仲間を増やして、試練に立ち向かっていくので、ニチアサの戦隊ヒーローものとの共通点は多いと感じます。個人的には「王様戦隊キングオージャー」のような作品が好きな人には刺さりそうだなと思ったんですが、沢井さんはいかがですか?
沢井 確かにそう思います!
小酒 「キングオージャー」は、その世界にある伝説と予言が語られるところから物語が始まって、世界に危機が訪れるんです。物語は壮大で予測不能な展開。さらに「キングオージャー」も「祈今朝」もアドベンチャー的な要素とコメディパートのバランスがよくて、アクションの見せ場もわかりやすく派手な印象。だから「キングオージャー」のような作品が好きな人は「祈今朝」も好きなのではないかなと思いました。
沢井 どちらも話数が多いので、じっくり物語を描いていますし、戻って観直すと「あー!」となるところは共通点。中国ドラマはお話が長くてびっくり!といった声も聞きますけど、特撮ヒーローものも、1年を通して放送していますし、そう考えると同じようなノリで観てもらえるのかなと思います。
──お二人は以前から中国ファンタジー時代劇とニチアサの戦隊ヒーローものに共通点があると感じていましたか?
小酒 同じくシュー・カイが主演を務めた「雪華の炎~揺るぎない誓い~」の特集で、「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」に出演されていた樋口幸平さんに作品を観た感想をインタビューしたんです。そのとき、樋口さんのお話を聞いて、アクションに共通点があると感じました。ワイヤーアクションが楽しめるのは、日本だと時代劇ではなく戦隊ヒーローのイメージがありますよね。「ドンブラザーズ」も、中国で放送された際には人気を集めていました。
沢井 仙侠ファンタジーの戦い方やエフェクトを使った表現は共通点があるなと。「陳情令」の序盤で石像と戦うシーンを観たときに、特撮っぽさを感じましたね。あと時代劇ではないんですが「鎮魂」はニチアサっぽいよねとけっこうファンの間では言われていました(笑)。ただ中国時代劇は変身はしないので、ニチアサと2.5次元舞台の魅力が掛け合わさったイメージもあって。私も2.5次元舞台は大好きなのですが両者ともに魅力的な美男子たちがたくさん出てきますし、CGエフェクトを使った迫力あるバトルも楽しめる。
小酒 確かに「刀剣乱舞」とか共通性を感じます。
沢井 だからニチアサのファンや2.5次元舞台のファンの方に、中国ドラマを試してみてほしいなと思っているんです。どういうふうに感じられるのか感想を伺ってみたい。
──日本産コンテンツとの親和性もある一方、やはり中国時代劇には、ならではの魅力もありますよね。
小酒 そうですね。特撮ヒーローものは一応、子供がメインターゲットだと思うので、急に主人公がキスをし始めたりはしないですよね(笑)。「祈今朝」はキスシーンもしっかり楽しめます。ただこの作品は恋愛描写も非常にさわやかでした。
沢井 少女マンガ雑誌の「りぼん」とか「なかよし」ぐらいなラブの感じですよね(笑)。
小酒 あはははは。
沢井 ただ、さわやかなんですが、「祈今朝」で描かれる愛の重さは中国時代劇ならではだなと思います。重たくて切なくて、なかなか結ばれない。中国ではそういった切なくて苦しい作品を虐(nüè / ニュェ)と形容するんですが、このドラマは虐が爆発している“爆虐”と表現されていました。
小酒 中国のファンタジー時代劇って、スケールが大きいので、世界がぶっ壊れるぐらいの大惨事が起こるのが普通じゃないですか。世界の終わりが迫ってきて、主人公たちがなんとかしようとする。命を懸けたり、犠牲が伴ってくるので、“激重の愛”とつながっていくんですよね。この愛の重さはなかなか日本のドラマでは味わえないかなと思います。
沢井 世界と引き換え……みたいな感じですもんね。
小酒 「祈今朝」のヒロインが背負っている使命も重すぎてびっくりしました(笑)。