「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」が7月29日に全国で公開。それを記念して、ナタリーではジャンルを横断して全3回の特集を展開していく。
今回は映画監督の樋口真嗣に感想を聞いた。ハリウッドの大ヒット作「ジュラシック」シリーズの完結編である本作を「最適解だった」と断言する樋口。果たしてその理由とは? シリーズの生みの親スティーヴン・スピルバーグから受けた影響も明かす!
取材・文 / 渡辺麻紀撮影 / 渡会春加
新シリーズは宇宙が舞台でもいい
──「ジュラシック・パーク」から始まったシリーズも、この6作目「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」でピリオドとなります。樋口さん、いかがでしたか?
50年以上前の「猿の惑星」の大ヒットからこういうシリーズもの──フランチャイズと呼ばれる、作家性よりもビジネスの側面から要求される形式の人気映画シリーズが生まれたわけですが、まさしく“フランチャイズ映画”として正しい作品になっていたんじゃないかな。最後の作品ということなので、きれいに完結させないといけない。そういう使命を背負った作品です。だからリユニオン映画のごとく、過去作のキャラクターを次々と登場させる手法を選んだ。サム・ニールやローラ・ダーンまでそろえて、風呂敷を思いっきり広げてしまったので、果たしてこれをどう畳むのか? 野球ができそうな人数が同時に絶体絶命の状況に陥って、どうやって全員を助けるのか? そういうややこしいところにハラハラしますよね。
──1作目ではちょびっとしか出てこなかったルイス・ドジスンまで登場していたので驚きました。
今までのヴィランは、だいたい最後は恐竜に食べられていたから、生き残っていたのは彼ぐらいしかいなかったんでしょうね(笑)。そういう懐かしい連中を次々と登場させ、どうやって終わらせるのか? そのためにシリーズ最長の2時間27分があるとも言えるわけだけど、ちゃんと面白がらせてくれたので問題なしですよ。
──どこがもっとも楽しめました?
やっぱりマルタ島での恐竜たちと車&バイクの大チェイスですね。おお、これでついに「ジュラシック」も「007」シリーズの仲間入りを果たした!と思いましたから(笑)。このチェイスシーンは大好きで、もう永遠に続いてくれ!というくらい。「007」シリーズという最長のフランチャイズと、「ジュラシック」シリーズという最強のフランチャイズの見せ場が合体しているわけだから、もう無敵ですよ。こうなったら「ワイルド・スピード」も混ぜて、向かうところ敵なし状態にすべきです!(笑)
──いったんシリーズは終わりましたが、いろいろな可能性を感じさせる完結編だった?
そうそう。絶対「ワイルド・スピード」化すべきです。恐竜とヴィン・ディーゼルの相性、めちゃくちゃよくないですか? 「ワイルド・スピード」もカーアクション映画という枠を飛び越えて、すでに宇宙まで行っているわけだから。「ジュラシック」も新シリーズは宇宙が舞台でもいいわけですよ。「ジュラシック・ユニバース」。アリじゃないですか?
──「ワイルド・スピード」も「ジュラシック」もユニバーサルの映画ですし、大いにアリですね! でも、どうやって恐竜が宇宙に行くんですか?
もう、人間の手に負えなくなって恐竜たちを宇宙に捨てちゃう。そしたら宇宙に順応する恐竜が出現してしまうんです。国際宇宙ステーションが恐竜に襲われるんですよ!(笑) もうね、縦横無尽にイマジネーションが膨らんでしまう刺激にあふれているのも本作の魅力なんですよ。余白があるというか、伸びしろがあるというか。これだけ娯楽映画の重要な要素を詰め込んでいるのに、まだ余白や可能性があるって、やっぱりすごいことだと思います。
──そういうところも、やはり色褪せない人気につながっているのですね?
そうです。例えば最近では、一緒に仕事している若い連中に「『スター・ウォーズ』観てるよね?」と聞くじゃないですか、もうこの仕事していたら一般教養として。ところが「いやあ、『スター・ウォーズ』はちょっと……」みたいな答えが返ってくる。じゃあ、何を観ているのか? 何を観て成長したのか? そうしたらどうも「ジュラシック」シリーズなんですよ。
──それはびっくりですね!
でしょ? 俺も驚いちゃって。「スター・ウォーズ」は飛躍しすぎていて付いて行けないけど、「ジュラシック」は大丈夫なんですよ。むしろ「ジュラシック」ジェネレーション。子供の頃から親と一緒に観たり、レンタルビデオショップのキッズコーナーにも置かれていたりして、すごく身近なわけです。子供たちは恐竜が大好きですし。しかもパブリックドメインじゃないですか、恐竜って。版権フリー! そこも大きいですよね。どんどん新しい恐竜を出しても、文句言う機関はありませんから。スティーヴン・スピルバーグのシリーズ1作目は子供が中心の物語だったので、そういう視点でも共感できるでしょ?
──そうですね。子供が喜びそうなお菓子もたくさん出てきましたから。
あんな山盛りのゼリー、子供は大興奮でしょう! 子供たちが大きくなって、今でも劇場に詰めかけるのが「ジュラシック」シリーズのパワーの1つなんだと思います。
最新作に期待していた展開は…
──「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」のストーリーはいかがでしたか? テーマは恐竜と人類の共存でしたが。
面白いと思うのは、「ジュラシック・パーク」3部作のときは、共存させないためにどうするかみんな必死になっていた。それが「ジュラシック・ワールド」シリーズになって、避けていたことが本当に起きてしまい、この地球が再び恐竜に支配されるとどうなるのか予感させたわけじゃないですか? ところが意外なことに大丈夫だった。
──樋口さんは、最新作にどんな展開を期待していました?
ラプトルのブルーは、自分の遺伝子だけで子を産める単一生殖の特性を持っているので。やたらめったらブルーの子供が増えまくって大変、みたいな?(笑)
──その図は楽しそうですね!
まあ、その代わりじゃないですが、巨大イナゴがたくさん出てきましたけど。巨大イナゴが雲霞のごとく群れるより、ブルーの子の群れのほうが怖くないですか? でも、そうなるとフランチャイズらしいライトな感覚がなくなってしまう(笑)。だから、この映画のチョイスでよかったんだと思います。
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“シザーハンズ恐竜”のキャラが立っていた