ツルの無償の愛は、母性の爆走とでも言うのかな
──ツルの岩男に対する偏愛ぶりは、息子がどんな状況のときでも晩ごはんを作って待っている姿に象徴されていますよね。
母親ってごはんが大事なんですよ。お母さんは普通、子供にお弁当を作るじゃないですか。とにかく、3食ちゃんと食べさせて、丈夫で健康な子に育てるというのが基本でしょ。ツルの場合は、特にそのごはんが大事な愛情表現なんだと思いました。何があろうとごはんを作っているし、どんなことがあってもお弁当を持たせますからね。まあ、いつ作っているんだ?とも思うんだけど、ちゃんと作っているんですよ(笑)。
──とんでもないことが次々に起きますが、全編を通して観ると、本当にピュアな愛の映画だと思いました。
そうですね。不器用な人たちが命懸けで愛したなと思えるから、最後にジワッとくるんじゃないかな。ツルの愛情は極端だと思いますけど、それだけ愛情が強いということなのかな。すごく切ない片思いですね。
──そんな木野花さんが考える“愛”とはどんなものでしょうか。
この映画を観て、普通の人はみんな、自分を愛してほしくて恋愛をしているんだろうなと思いました。岩男やツルのように、自分のことは置いて、相手のために愛情を注ぎ込むのはつらいし、すごく覚悟がいることだと思うんですよね。そういう意味では、私も相手のことだけを考えて突っ走る愛をまだ体験したことがないよう気がします。唯一あるとしたら、子供の頃に感じた母親の私に対する愛かな。ツルと岩男の関係性においても、母性というものを考えました。ツルの無償の愛は、母性の爆走とでも言うのでしょうかね。
- 「愛しのアイリーン」
- 2018年9月14日(金)公開
- ストーリー
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年老いた母と認知症の父と地方の山村で暮らす、42歳まで恋愛を知らずに生きてきた男・宍戸岩男は、コツコツ貯めた300万円を手にフィリピンへ花嫁探しに旅立つ。現地で半ばヤケ気味に決めた相手は、貧しい漁村生まれの少女・アイリーン。岩男は彼女を連れて久方ぶりに帰省するが、岩男の母・ツルは、息子が見ず知らずのフィリピーナと結婚したという事実に激昂する。
- スタッフ / キャスト
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監督・脚本:吉田恵輔
原作:新井英樹「愛しのアイリーン」(太田出版刊)
主題歌:奇妙礼太郎「水面の輪舞曲」(ワーナーミュージック・ジャパン / HIP LAND MUSIC CORPORATION)
出演:安田顕、ナッツ・シトイ、木野花、伊勢谷友介、河井青葉、ディオンヌ・モンサント、福士誠治、品川徹、田中要次ほか
※吉田恵輔の吉はつちよしが正式表記
※R15+指定作品
©2018「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ
2018年9月13日更新