「ULTRAMAN FINAL」BD-BOX発売記念、青柳尊哉が語る「ULTRAMAN: Rising」との相違点 (2/2)

アオシマ隊員役は、ヘビクラとは真逆

──声の出演と言えば、配信開始が迫っている「Ultraman: Rising」でも、怪獣防衛隊KDFのアオシマ隊員役を演じていらっしゃるとか。

ええ、やらせていただきました。「ULTRAMAN」の五条隊員や、「ウルトラマンZ」のヘビクラを演じさせていただく中で、「こういう役があるんですけど、いかがですか?」と声を掛けていただき、これまた「私なんかでいいんですか?」と(笑)。

──今回のアオシマも、ヘビクラと同様、部下を率いる立場ではあるけども、さらに上の立場である長官の下で無茶な命令に従わなければいけない立場ですね。

とは言え、ヘビクラ隊長(の正体)は(ジャグラス)ジャグラーなので、板挟みになってもそれほど動揺する必要がないんです。自分のやりたいことを自由に貫けるタイプの隊長でしたが、今度のアオシマ隊員は真逆。抗いようもなく強い立場のオンダ博士という人がいて、アオシマ隊員自身が怪獣防衛隊の在り方について強い信念を持っている。自分自身の正義感と、隊を統率する者として果たさなければならない責任との間で揺れ動く心みたいなものを意識しながら、セリフと向き合わせていただきました。アオシマ隊員の実直さというのは、自分にはあまりない資質なので(笑)、そういう意味での難しさはありましたね。

「Ultraman: Rising」より、青柳尊哉が日本語吹替を担当するアオシマ隊員(右)。

「Ultraman: Rising」より、青柳尊哉が日本語吹替を担当するアオシマ隊員(右)。

──タイプはまったく逆であったと。

それに加えて、アオシマ隊員のほうは、部下に命令するとか率いるとかいうシーンがあまりなかったというのもあります。KDFはかなりミリタリー寄りに描写されていて、隊員も多いし、1人ひとりの個性が描かれているわけでもない。ですから、ほぼオンダ博士としか会話していなくて、それも劇中では描写されていない調査や分析の報告が多かった印象ですね。逆に言えば、アオシマ隊員はKDFで唯一、顔と名前のあるキャラクターであるとも言えます。

──インダストリアル・ライト&マジック(ILM)が描くCGアニメーションとしてのウルトラマンのビジュアルに対する印象はいかがでした?

ULTRAMAN SUITももちろんそうですけど、ウルトラマンの解釈って、本当に人それぞれ、千差万別なんだなと思いました。一方で、これだけ違っていてもウルトラマンだと認識できるのはすごいなとも思います。「Ultraman: Rising」のウルトラマンは、よりエイリアン味が強いというか、奇抜ですよね。異質と言えばいいのかな。日本人の思考からは、おおよそ出てこないデザインだと思います。だからこそ新鮮だし、海を渡った先の異なる文化と歴史をすごく感じる。わくわくしますね。

ケンは進次郎と似た境遇だけど対処の仕方がまったく違う

──本作も「ULTRAMAN」の進次郎と同様、父親からウルトラマンの力を受け継いだ男サトウ・ケンが主人公です。両者のどんなところに共通点、あるいは相違点を感じられますか?

進次郎もケンも、ウルトラマンという強大な力を父親から受け継いでしまった。でもそれは必ずしも、彼ら自身が望んで手にした力ではない。その点は、確かに共通しているところだと思います。しかし一方はごく普通の少年、もう一方はスーパースターとして世間に認知された大人であるというのが大きな違い。葛藤の仕方、苦悩の仕方が全然違うんです。濡れ具合と言いますか、苦悩の湿度、ウェットさが違う。ケンのほうは、悩むにしても爽快感がありますよね。カラッとしている。進次郎みたいに、そっと寄り添って背中を押してあげたくなるんじゃなくて、みんなで豪快にバンバン背中をたたいてやりたくなる。どれだけたたいても大丈夫というか、たたきやすい背中を持っているというか。進次郎に対するような繊細さは必要ない気がします(笑)。

「Ultraman: Rising」場面カット

「Ultraman: Rising」場面カット

──主人公ケンにもっとも共感できたシーンはどこでしょう?

共感ですか? 難しいな、俺はそんなスーパースターじゃないからな(笑)。ただ、「孤独は理解されないな」ということは、すごく感じました。彼がスーパースターであればあるほど孤独になっていく。周囲から理解されなくなっていく。人に言えない悩みが増えていく。怪獣の子供を隠して育てなきゃいけないし、ウルトラマンであることも秘密。家族との確執も抱えている。そのせいで、試合では結果を出せず、みんなの期待に応えられない。でも理由は言えないから、どんどん孤独感を募らせていくしかない。その孤独さって、誰もが持っていると思うんです。そんな誰でも持っている孤独の大きさとどう向き合っていくかっていうあたりが、「ああ、自分もケンなのかもしれないな」と感じた部分ですね。ケンだけじゃなく、オンダ博士についても同じです。彼にだって人に言えない、言わない孤独がある。

「Ultraman: Rising」より、主人公のサトウ・ケン。ウルトラマンでありながら、プロ野球のスター選手という顔も持つ。

「Ultraman: Rising」より、主人公のサトウ・ケン。ウルトラマンでありながら、プロ野球のスター選手という顔も持つ。

──みんな家族を守りたいだけなのに、理解されない孤独を抱えて対立してしまう。

家族愛の話ではありますよね。僕が演じさせていただいたアオシマ隊員も、子供がいることが劇中で語られています。彼も家族ファーストな父親の1人なんです。身近な人を守りたい。なのに孤独になっていく。そこは進次郎たちについても同じだと思います。

──「Ultraman: Rising」を、どんな方にお薦めしますか?

子供たちが何度でも観たくなる作品になってほしいですね。できれば家族、ご両親と一緒に観て楽しんでもらえるのが理想です。「たまたま子供が観ていたから一緒に観たら面白かった」でもなんでもいい。親御さんにとっても共感できる部分がきっとあるし、すごく楽しい物語になっていると思うんですよ。

愛を感じる描き下ろしコミック

──ここからは実際に「ULTRAMAN FINAL」Blu-ray BOXを開封していただきながら、ご感想を伺っていきたいと思います。まずボックスアートはいかがですか?

「ULTRAMAN FINAL」Blu-ray BOX(特装限定版)のボックスアート。

「ULTRAMAN FINAL」Blu-ray BOX(特装限定版)のボックスアート。

特典の描き下ろしコミックを読む青柳尊哉。

特典の描き下ろしコミックを読む青柳尊哉。

従来のスーツのマスクの下からCタイプスーツが現れるっていう構図は、清水先生・下口先生から聞いていたんです。かなりのこだわりをもって作られたとおっしゃるだけあって、迫力がありますね。ガワの剥がれ方も含めてかっこいい。背景というか、ベースカラーが白なのも新鮮です。単純にかっこいいし、潔いデザインだなと思います。

──恒例の描き下ろしコミックも封入されています。

3本目の特別編です。いいですね。僕がずっと「なぜなんだろう?」と気になっていたことについて言及されています。どう触れていいのかさえわからなかったので、そこがちゃんとマンガになっているのもうれしいですし、一瞬ヒヤッとするシーンもあって、一筋縄ではいかない清水先生・下口先生ならではの、油断しているところを刺しに行く感じが面白いです。アニメにも原作マンガにも、どちらにも愛がある。アニメにする側の原典に対するリスペクトもあるし、原作者からのアニメに対するアンサーにもなっていて、クリエイターたち同士のラブレターみたいなマンガだと思いました。本当に素敵な仕事が詰まっています。

ヒーロースーツって大変なんです

──ブックレットもご覧ください。

特写がいいですねえ。キャストの皆さんが、自分の役のスーツを着て、気合いが入ってる。僕もジャグラス ジャグラー(魔人体)のスーツを着て撮影したことがあるんですけど、本当に大変なんですよ。着たまま縦横無尽に動けると思われるかもしれませんけど、そんなことは全然ない。可動域も狭いですし、着るだけでも体力を使います。呼吸をするのさえままならない。顔出しの状態ですらそうなんですから、ましてやマスクを着けてたら絶望的ですよ。視界なんてほとんどないに等しくて、歩くどころかまっすぐ立つのも難しい。スーツアクターの皆さんへの尊敬が止まりませんでした。卓越したプロの技があればこそ、このスーツたちを生き生きと動かすことができるんだなと思い知りました。で、MARIE SUITはいつ作るんですか?(笑)

「ULTRAMAN FINAL」Blu-ray BOXの特典映像にはJACK SUITのメイキング映像が収録されている。

「ULTRAMAN FINAL」Blu-ray BOXの特典映像にはJACK SUITのメイキング映像が収録されている。

──最後に、このBlu-ray BOX、および「Ultraman: Rising」に興味を持った読者へ向けて青柳さんからメッセージをお願いいたします。

アニメ「ULTRAMAN」は、一応FINALシーズンということにはなっていますけど、原作マンガはまだ終わったわけではありません。アニメでこの作品に出会って、原作マンガを読んだことがないという方は、ぜひ原作も手に取っていただけるとうれしいです。「ウルトラマンっていろんな解釈があっていいんだな」「こんなに広くて自由なんだな」ということを体現しているのが、アニメ「ULTRAMAN」であり、原作マンガの「ULTRAMAN」であり、近々配信される「Ultraman: Rising」であると思います。どうぞ、楽しんでください。そして、いくつになっても「ウルトラマン、いいよね」と楽しみを分かち合える仲間を探しに行きましょう。その仲間の輪が、この作品を通して、またテレビシリーズを通して、世界中に広がっていくとうれしいなと思います。

青柳尊哉

青柳尊哉

プロフィール

青柳尊哉(アオヤギタカヤ)

1985年2月6日生まれ、佐賀県出身。舘プロ所属。数々のドラマや映画、舞台などで活躍する俳優。アニメなどで声優にも挑戦している。2016年「ウルトラマンオーブ」ジャグラス ジャグラー役で注目を集め、2020年「ウルトラマンZ」でもヘビクラ ショウタ / ジャグラス ジャグラーとして出演。TSUBURAYA IMAGINATIONにもレギュラー番組を持つなど、ウルトラマンシリーズには縁が深い。