多言語の豊富さ
──英語圏以外の視聴者も多い「ULTRAMAN」は何言語に翻訳されたんですか?
字幕は28、吹替は8の言語を制作しました。ただ一部の国ではアニメを吹替で見る文化がそこまで根付いていなくて、字幕が好まれる場合もあります。国や地域によって最適化していくことも、視聴者がもっとも親しみのある形で興味を引く大事な要素です。
──日本では声優にも注目が集まりますが、ほかの国はそういったことはないですか?
どの言語圏でもそうですが、ローカルのキャストで誰が声を当てるのかファンのこだわりが強いらしく、盛り上がるみたいで。声優で盛り上がれるのは、日本に近いですよね。面白いところだとポーランド。レクトリングという手法で、キャラクターごとに別の声優が声を当てるんじゃなくて、1人がボイスオーバーの形で読み上げる、活弁のようなスタイルがあるんです。それは弊社でも取り入れています。
CGだからこそできた怒涛のアクション
──CGというフォーマットに対して、海外のアニメファンの反応はいかがでしたか?
CGか手描きか、という部分はあまり関係なかったと思います。フォーマットにこだわらずいい作品は観てもらえるし、手描きであっても作品がよくなければ見向きもされない。そこは実写も同じで、劇映画でもドキュメンタリーでも作品の出来がよければみんな観ますよね。“30分”や“2時間”を消費するに値する作品なのか。それが観客の大きな評価軸です。数十億ドル掛けたハリウッド大作とも同等に戦えると考えると勇気が湧いてきます。
──なるほど。
ただ「ULTRAMAN」に関して言えば、手描きのアニメでこれだけのアクションシーンを入れるのは難しい。CGならではの強みで意識的にアクションを盛り込んだと思います。「こんなにアクションシーンが続くアニメは観たことないぞ」と思わせようという気持ちで。手描きと違って、CGはノウハウが蓄積されていくのも強み。モデリングされたものはクオリティが劣化しないし、むしろ動きがよくなっていく。シーズン1の中でも顕著で、後半はさらによくなっていった印象を持ちました。シーズン2はさらに進化しているはずなので、そこは期待していただきたいです。
最大の理由……普遍的ストーリー
──さまざまな観点からお話しいただきましたが、海外でもヒットした最大の理由を挙げるとしたら、なんだと思いますか?
究極のところで言うと、いい作品はウケる。これに尽きます(笑)。もちろん円谷プロが生み出した原作の強さ、築き上げた歴史があってのもので。その強固なコンテンツにクリエイターがブーストをかけた結果です。作り手とコンテンツの相性が合い、いい作品に生まれ変わったという点では湯浅政明監督の「DEVILMAN crybaby」にも通ずると思います。
──主人公の成長や葛藤も国を超えて共感を呼んだのではないでしょうか。
少年の成長譚として王道のストーリーですからね。それぞれタイプの違う3人のウルトラマンが登場したり。主人公がウルトラマンとして目覚めていく中で、仲間とのもつれや連携もあったり。世界にはそういう王道なストーリーテリングがウケるんだと改めて証明されたと思います。奇をてらわず、正面突破でやり切ったのが国内外で評価を得た要因でしょう。そういう意味では「スパイダーマン」も普遍的なテーマで毎作品、共感を集めていますよね。
──さまざまな地域でNetfllixオリジナル作品が生み出されていますが、共感や王道を取り入れることで身近な物語に感じられる部分があるかもしれません。
オリジナル作品の制作がどんどんローカル化していく中で、普遍性は重要になってくると思います。自国に限らず世界中にプロダクションを持つNetflixの強みとして、国や時代背景に関係なく親しみを持って観てもらえる作品を届けたいと思っています。
──貴重なお話ありがとうございました。4月23日には同じ制作陣による「攻殻機動隊 SAC_2045」が配信開始となります。こちらもフル3DCGアニメーションの作品ですね。
「ULTRAMAN」のような骨太さは変わらず、ビジュアルはさらに進化してキャラクター性も強い作品になっています。ここからまた技術が積み重ねられ、「ULTRAMAN」シーズン2で新たな結晶となるはずです。
2020年4月22日更新