マンガ原作、時代劇、バイオレンス、子供向け……どんなジャンルもこなす“日本で一番忙しい監督”三池崇史が、ド直球なタイトルの新作を放つ。
その名も「初恋」。三池自身「初めて撮ったラブストーリー」だと語る本作が、2019カンヌ国際映画祭監督週間など海外映画祭や全米での先行上映を経て、いよいよ日本で2月28日に封切られる。
映画ナタリーでは、主要キャストの窪田正孝、内野聖陽、大森南朋、染谷将太、小西桜子、ベッキー、村上淳による座談会を実施。刺激に満ちた三池組の面白さを振り返ってもらった。
取材・文 / 金須晶子 撮影 / 上山陽介
シンプルでストレートな題名で勝負(小西)
──本作は三池崇史監督の“自身初のラブストーリー”として、その直球なタイトルとあわせて話題になっています。
窪田正孝 僕は最初に「初恋」というタイトルと、ボクサー役であることを聞きました。そのときは確か、まだ「初恋(仮)」でした。台本を読んでみたら「初恋……?」という感じで(笑)。主人公のボクサーが誰かと出会って恋する話を想像していたんですけど、まさかこういう映画になるとは。
内野聖陽 でも、観ていくうちにこれはまさしく「初恋」だなっていう映画になってたよね。
窪田 そうなんです。できあがった映像を観て、納得しました。まさに「初恋」です。
小西桜子 私が台本をもらったときは、まだタイトルが書かれていなくて。あとから「初恋」だと知り、内容とのギャップにびっくりしました。いろいろなことが起こる映画だけど、シンプルでストレートな題名で勝負するのって、なんだかかっこいいと思いました。
──小西さんが演じたモニカは、「初恋」というタイトルから想起するヒロイン像とはかけ離れている設定でした。
小西 はい。親に借金背負わされて、ヤクザに売られて、薬物中毒で……(笑)。モニカ以外も、いわゆるラブストーリーに出てきそうなキャラとはかけ離れた役ばかりでした。でも、ちゃんと「初恋」になってましたよね?
内野 うん、なってたよ。
小西 (安心して)この映画は「初恋」です!
親戚のおじさんみたいな気持ちに(大森)
──モニカ(小西)と出会い、レオ(窪田)は裏社会へ足を踏み入れていくことになりますが、2人はとてもピュアに見えました。同じ出演シーンの多かった大森さんと染谷さんは、お二人と共演されていかがでしたか?
大森南朋 窪田くんはしっかりされていますし、雰囲気もよくしてくれました。小西さんは初々しさがかわいらしくて。親戚のおじさんみたいな気持ちになりました(笑)。
お二人とも繊細で。ちょっと押されただけで崩れて壊れちゃいそうな、そんな関係を表現している2人を横で見ながら、僕たちは「今日も寒いっすねー」なんて話してました(笑)。
大森 「今日は何時ぐらいまで掛かるかねー」とか。染谷くんは昔から知っていますし、演技について話し合ったりする必要も特になくて。楽しかったです。
窪田 車の中のシーンは、そめしょー(染谷)の新しい一面が見られて最高でした。あの芝居はなかなか見られない。
あれは楽しい時間だったなあ。カースタントの方が実際に運転したんですけど、そこにカメラさんと監督と一緒に乗って、僕が銃をパンパン撃って。カットがかかった瞬間、みんなで大爆笑しました。
憧れに憧れていた初の三池組(村上)
──村上さんとベッキーさんも、小西さんと同じく三池組初参加でした。現場はいかがでしたか?
村上淳 憧れに憧れていた初の三池組でしたからね。監督とスタッフの関係もできあがっていて、現場は完璧でしたよ。
ベッキー あうんの呼吸が、スタッフ間だけではなくキャストともぴったりなんです。私が「感情マックスのところでカメラを回してほしい」というわがままを言わせてもらった場面があって。「今カメラ回してほしいな」と思った瞬間、三池さんが「カメラ回して!」と指示を出してくださったんです。初めて組ませてもらったと思えないような感覚で、うれしかったです。
──皆さんの突き抜けた演技が印象深いですが、監督からはどのような演出があったんですか?
内野 言わないんですよ、何も! でも一番いい観客として現場で見てくださるから、役者は乗っちゃう。「え、いいんですか? もうちょっとできますけど?」みたいな(笑)。
すっごくわかります。その気にさせてもらえますし、乗ってみたらそれも採用してくれて。
村上 カットのかかり具合が絶妙なんだよね。「まだ行く? まだ行く?」みたいな。
──ベッキーさん演じるジュリは、恋人を殺され、まさに“復讐の鬼”と言える振り切ったキャラクターでしたね。
ベッキー なかなか監督が(カメラを)止めないのもあって……振り切っちゃいましたね(笑)。
一同 (笑)
ベッキー 監督から「これはジュリの、ヤス(恋人)に対する初恋でもあるんだよ」と言われて。役の根底にテーマを与えてくださったので、ただキレるだけじゃない“怒り”になったと思います。
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10年前も今回も感じた、三池監督への印象(窪田)