映画ナタリー Power Push - 「極道大戦争」

三池崇史インタビュー 常識とジャンルの壁を超えた原点回帰作

普段とは異なる役柄で、俳優に非日常を体験させる

──キャスティング面でいうと、高島礼子さんが若頭の膳場壮介役で出演されていることが印象的でした。

「極道大戦争」より

なんで高島さんにあの役を演じてもらったかっていうと、よくあるパターンを避けたかったからなんです。リリーさんが組長役ならこの俳優さんかなとか、型にはまりがちなポジションなんですよね、若頭役というのは。

──置きに行く感じになってしまうんですね。

僕は特に何も考えていなくて、普段こういう役をやらないような人が来ると面白いなとは思ってたんです。そしたら、キャスティングディレクターの杉野(剛)さんが「高島さんでどうですか?」って。「え、高嶋って弟(政伸)のほうですか? お兄ちゃん(政宏)のほうですか?」って聞いたら「いやいや高島礼子のほうです」って言うから「え?」って(笑)。結果出演してくれることになったんですけど、「こんなのやってたらあんまり2時間もの(ドラマ)とか呼んでもらえなくなるんじゃないの?」と。

──あはは(笑)。

耳から汁出したりする役だし大丈夫なのかなと思って。でも高島さんは「大丈夫です」って言ってくれました(笑)。役者というのは、ある程度売れてしまうとイメージが固まってしまう。演じる役も限定されてくるんですよね。そうなってくると、映画であれテレビであれ、いつも同じ人を演じてるような気になるんじゃないかって僕らは思うわけです。売れている役者にとって撮影現場って日常なんですけど、役柄によっては非日常に変わる。本人にそう感じさせることができるとね、こっちも楽しくなってくる。ウキウキしてきて、もっと深みに連れてってやろうって思う。ズブズブズブって。

欠点も含めて作品を楽しんでくれる海外の映画ファン

──「極道大戦争」は、10月9日から北米で公開されることが決まっています。三池監督の作品はこれまで外国の映画祭にも何度も出品されていますが、海外の観客と日本の観客の間で映画への反応に違いを感じたりすることはありますか?

三池崇史

たくさんの作品が上映されている中で日本映画を観るっていう人は、全体から見れば本当にカルトだと思います。映画はほかにもたくさんあるのにわざわざ僕の作品を観に来て、しかも異様に盛り上がっちゃう。よほどの変わり者ですよ。で、欠点も含めて映画を楽しんでくれる。そういう観客の中で観る自分の映画は、ほかのどこで観る映画より面白いです。観客が後押しする形で、劇場にライブ感が生まれていく。

──海外の観客は、日本の観客よりも反応がビビッドだというようなことはよく聞きますね。

もうめちゃくちゃですよ。今度、第40回トロント国際映画祭の「ミッドナイト・マッドネス」っていう部門で「極道大戦争」が上映されるんです(現地時間9月18日深夜に公式上映が行われた)。やや爆音で、でっかいスクリーンで、観客は1000人ぐらい集めて。たぶんそこはもうめちゃくちゃなことになると思います。僕らが作った映画をそんなふうに楽しんでくれる人が世界のどこかにいて、鳥肌が立つような盛り上がりを見せてくれる。そういう事実が、「極道大戦争」のような映画を撮るときの原動力になっているのは間違いないですね。

「極道大戦争」

「極道大戦争」
ストーリー

敏感肌を持つ半端者のヤクザ・影山亜喜良は、カタギの人々からも慕われる組長・神浦玄洋に憧れて神浦組に入った。だがある日、神浦は突如街に現れた2人組・狂犬と伴天連の襲撃に遭遇し、駆け付けた影山とともに倒される。最期の力を振り絞り、影山の首に噛み付いて「我が血を受け継いで、ヤクザ・ヴァンパイアの道を行け!」と叫ぶ神浦。影山は超人的な力を身に付けて覚醒するが、噛んだ人間をヤクザ化させてしまう能力も継承してしまう。自身の変貌に苦悩しながらも、神浦の敵討ちを果たすため激闘を繰り広げる影山。しかし彼の敵は狂犬たちだけではなかった。世界最強の殺し屋・KAERUくんがやってきたのだ……。

監督:三池崇史
脚本:山口義高
主題歌:KNOCK OUT MONKEY「Bite」
出演:市原隼人、成海璃子、青柳翔、渋川清彦、ヤヤン・ルヒアン、ピエール瀧、でんでん、リリー・フランキー、高島礼子ほか

Blu-ray / DVD

「極道大戦争」2015年11月3日発売 / 発売元:日活 販売元:ハピネット
プレミアム・エディション [Blu-ray Disc 2枚組] 5616円 / BIXJ-0211
プレミアム・エディション [DVD 2枚組] 4536円 / BIBJ-2870
初回限定特典

オリジナルスリーブケース

音声特典

コメンタリー:三池崇史監督×市原隼人×でんでん×モルモット吉田(進行役)

映像特典

極道の現場~メイキング&インタビュー~ / イベント映像(三池崇史Presents大人だけの空間、ヒット祈願イベント、初日舞台挨拶、MX4Dイベント) / アニメ「極道酒場でんでん」 / 特報、劇場予告、TVスポット

三池崇史(ミイケタカシ)

1960年8月24日、大阪府八尾市出身。今村昌平、恩地日出夫に師事し、1991年にオリジナルビデオ「突風!ミニパト隊」で監督デビュー。1995年の「新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争」で劇場公開映画の初監督を務め、以来ジャンルを問わず多種多様な作品を次々に手がける。ヴェネツィア国際映画祭、カンヌ国際映画祭、ローマ国際映画祭のコンペティション部門に監督作が出品されるなど、その手腕を評価する声は日本国内にとどまらない。2016年のゴールデンウイークには伊藤英明、山下智久らが出演する「テラフォーマーズ」、2017年には木村拓哉が主演を務める「無限の住人」が公開される。