映画ナタリー Power Push - 「シン・ゴジラ」公開記念特集
塚本晋也、ゴジラを語る
自分が「ゴジラ」を撮るなら、圧倒的に強い怪獣と戦わせたい
──さきほど中学生時代に怪獣映画を作ろうとしたというお話が出ましたが、今後ゴジラの映画を撮ってみたいとは思いますか。
実は僕、ヒーロー怪獣と戦わせたい怪獣の構想があって。監督できる機会があったら、その怪獣をぶつけようかと思っています。絶対太刀打ちできないような圧倒的に強いキャラクターなんですよ。夏休みに子供たちが観る映画として上映したいですね。
──すごく観てみたいです。その怪獣について、少しだけでも教えていただくことはできますか?
とにかく突拍子もなくデカイんですよ。「シン・ゴジラ」のゴジラよりも大きくて、体は黒いですね。聞けば「なーんだ」って思うようなものかもしれませんが……。
最新作は一言で言うとリアルゴジラ!
──さきほどゴジラシリーズ最新作の「シン・ゴジラ」をご覧になったばかりですが、いかがでしたか。
一言で言うと、リアルゴジラ!という感じです。未知なる巨大な災害が日本を突然襲ったら、日本の人々はどうするの?ということを問うような映画なので。ファンタジーではあるんですけど、ゴジラが出てくるドキュメンタリーを観ているようなリアリティがありました。
──そうなんですね。「シン・ゴジラ」にご出演されるという話を周囲の方にしたときは、どういう反応が返ってきましたか?
僕の息子は中学生になったんですが、昔からずっと怪獣や変身ものが大好きで、今や僕より詳しいんです。僕が「シン・ゴジラ」に出ると知ったときは大喜びして、観るのをすごく楽しみにしています。彼は小さい頃からそうなんですけど、朝どんなに声をかけてもピクリとも布団から出てこないのに「頭が3本で、手のない怪獣は?」というふうに怪獣クイズを出すと「キングギドラ……」と答えながら起き上がるんですよ(笑)。
庵野さんが描いた巨神兵のエネルギーに熱狂した
──総監督を務めた庵野さんの作品については、どのようにご覧になっていたんでしょうか。
庵野さんの作品は実はあまり拝見していなかったのですが、「風の谷のナウシカ」の巨神兵を描いたというたった1つのことだけでも、充分すぎるほどその才能を感じていました。強烈なエネルギーを放ちながら崩れていくあの場面があまりにも素晴らしくて熱狂したんです。「新世紀エヴァンゲリオン」は僕が「鉄男 II BODY HAMMER」という映画を作って間もなくの頃の作品で、同時代的な意識をビビッドに感じますね。
──「シン・ゴジラ」には、特技監督を務めた樋口真嗣さんのオファーを受けてご出演されたそうですね。塚本さんはクセのある研究者チームの一員という役柄でした。
樋口さんとはときどきお会いしていて。僕の作品のオールナイト上映を新文芸坐まで観に来てくれてそのまま池袋の公園で夜明けにビールを飲んだりとか、いいお付き合いをさせていただいています。樋口さんの特撮作品は、今までの特撮とまた違うリアルな臨場感を醸し出すものだったので非常にワクワクさせられました。その樋口さんと巨神兵の庵野さんの映画ときたら、やるっきゃないでしょう!という感じでした。映画の中ではすごく恐ろしい事態が起きていますけど、研究者チームで休憩しているときはいつも和やかでした。僕は俳優として現場に行くときは、緊張して気合いが入りすぎて、待ち時間は無口になってしまうんですけど、今回は共演者の方々とリラックスしたいい関係性が築けた気がします。
──以前、「俳優・塚本晋也は、監督の言うことをよく聞くいい俳優」だと冗談交じりに話していましたが。
はい(笑)。まずどうするかというと、監督の言うことは下唇を軽く噛んで、神妙な顔をしてきっちりと聞くんです。そしてあまり多くの質問をせずに自分なりに咀嚼して、理屈ではなく芝居で表現していく。僕が監督だったら俳優にそうあってほしいという願望がちょっとあるので、現場ではそのように振る舞っています。
──現場では庵野さん、樋口さんから何か特別な演技指導は受けましたか?
ときどきヒントをもらえるんです。「そうなんだ!」と気付くたびにこれまでのことを考え直して帳尻を合わせながらやっていきました。そういえば、激昂してくださいという指示が出たので、思い切りやったら限度を超えてしまいみんなで大笑いしたことがありましたね。
──今回塚本さんが演じたのは、間邦夫という生物学者です。ゴジラシリーズといえば、初代ゴジラの山根恭平博士や芹沢大助といった“研究者”たちが作品の重要なカギを握ることが多いと思いますが。
大勢の人たちが登場しますが、間邦夫はいい役でした(笑)。彼みたいに、少ないヒントで大きなことに気付く人がゴジラシリーズも含めて映画にはよく出てくるんです。市川崑監督の金田一耕助シリーズに出てくる等々力警部みたいに「よし、わかった!」とは言うけれど大概外れているような人もいますが(笑)。実は、僕の最後のセリフは当初ほかのキャラクターが言う予定だったもので。撮影を進めているうちに「やっぱり間邦夫に言ってもらおう」となって、もらったセリフなんです。あれのおかげで役の流れができた気がしてホッとしました。どんなセリフなのかは、ぜひ作品をご覧いただければと思います。
「24時間まるごと 祝!シン・ゴジラ」
日本映画専門チャンネル
7月28日(木)19:00~29日(金)22:00
庵野秀明が総監督を務める「シン・ゴジラ」が7月29日に封切られる。その公開を記念し、庵野がこれまでに手がけた実写5作品を連続放送。また「シン・ゴジラ」主演の長谷川博己、石原さとみ、芸能界屈指のゴジラファンとして知られる佐野史郎らゲスト10名が初めて鑑賞したゴジラ作品と、当時の思い出やエピソードを語る特別トーク番組「ゴジラ ファーストインパクト」全8回も一挙放送する。さらにゴジラ作品8本も放映され、その中にはシリーズで初めて全編4Kデジタルリマスターで送る「『キングコング対ゴジラ』<完全版>4Kデジタルリマスター」も含まれる。
庵野秀明実写映画 放送作品
「巨神兵東京に現わる 劇場版」
「式日」
「ラブ&ポップ<R-15>」
「キューティーハニー」
「流星課長」
©2012 Studio Ghibli
「ゴジラ ファーストインパクト」
日本映画専門チャンネル 毎週木曜 21:00~
8月までオンエアされる特別番組。ゴジラシリーズへの出演経験を持つ宇崎竜童、お笑いコンビ・ドランクドラゴンの塚地武雅ら計10名のゲストが初めて鑑賞したゴジラ作品と、鑑賞当時の思い出を語る。7月のゲストには篠原信一、山田五郎、ドランクドラゴン塚地武雅、「シン・ゴジラ」主演の長谷川博己、石原さとみらが並ぶ。
なお、抽選で555名に特製ゴジラTシャツが当たる「ゴジラ初体験記」投稿キャンペーンが7月31日まで特設サイトにて開催中だ。
「シン・ゴジラ」2016年7月29日より全国東宝系にて公開
東京湾アクアトンネルが、巨大な轟音とともに崩落する原因不明の事故が発生。首相官邸では閣僚たちによる緊急会議が開かれ「原因は地震や海底火山」という意見が多数を占める中、内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川博己)だけが海中に棲む巨大生物による可能性を指摘する。内閣総理大臣補佐官の赤坂(竹野内豊)ら周囲の人間は矢口の意見を否定するも、その直後、海上に巨大不明生物の姿が露わになった。そして政府関係者が情報収集に追われる中、謎の巨大生物は鎌倉に上陸し、建造物を次々と破壊しながら街を進んでいく。この事態を受けて、政府は緊急対策本部を設置し自衛隊に防衛出動命令を発動し、米国国務省からは女性エージェントのカヨコ・アン・パタースン(石原さとみ)が派遣された。そして川崎市街にて、“ゴジラ”と名付けられたこの巨大生物と自衛隊との一大決戦の火蓋が切られた。果たして、日本人はゴジラにどう立ち向かっていくのか……。
スタッフ
総監督・脚本:庵野秀明
監督・特技監督:樋口真嗣
キャスト
矢口蘭堂:長谷川博己
赤坂秀樹:竹野内豊
カヨコ・アン・パタースン:石原さとみ
©2016 TOHO CO., LTD.
塚本晋也(ツカモトシンヤ)
1960年1月1日生まれ、東京都出身。1989年「鉄男」で劇場映画デビューし、以降は「東京フィスト」「BULLET BALLET/バレット・バレエ」「KOTOKO」など数々の監督作を発表。2015年には監督、主演、脚本、編集、撮影、製作の6役を務めた「野火」が公開され、第70回毎日映画コンクールの監督賞や男優主演賞などさまざまな映画賞を獲得した。8月3日には、監督作7本をBlu-ray化するシリーズ「SHINYA TSUKAMOTO Blu-ray SOLID COLLECTION」の最新作「六月の蛇」「ヴィタール」「HAZE(ヘイズ)/ 電柱小僧の冒険」がリリースされる。