撮れば撮るほど「あれも撮りたい。これも撮りたい」
──沖田さんが手がけた「ダンディ・ボーイ。」の撮影はいかがでしたか?
沖田さんも映画監督なので、だんだん長編を撮っているようなスタンスになってくるんですよね。脚本も、長尺で詳細なものを書いてくださいました。撮れば撮るほど「あれも撮りたい。これも撮りたい」ってなってきて、編集前の段階で10分以上ありました(笑)。
──「ダンディ・ボーイ。」は、松坂さんが演じる吉男のキャラクターも魅力的ですよね。
吉男は基本ダメダメで情けないヤツなんですけど、どこか誇りを持っているというか。彼の中の誇りが、彼自身を動かしてるんです。その強さが明るみに出たときの輝きが好きです。
──吉男の恋人・ちはるは芳根京子さんが演じています。ご共演されていかがでしたか?
芳根さんとはこれまで時代劇でしか共演したことがなかったんですけど、現代劇での初共演がこれでいいのかなっていう……なぜ出演していただけたんだろうと考えると、今回の企画をすべて理解されていたのかは少し心配なところです(笑)。
──そうだったんですね(笑)。「何もきこえない。」では、俳優としてご共演経験がある齊藤さんが監督を務めました。監督としての齊藤さんはご一緒されていかがでしたか?
齊藤さんは非常にアーティスティックで冷静、かつ物事を俯瞰で見る方なので、それが映像にも反映されている気がしましたし、情熱も感じました。「何もきこえない。」から伝えたいメッセージ性は2人で共有していましたし、齊藤さん独自の世界観で撮ってくださって楽しかったです。ちょっとフランス映画っぽい仕上がりになっています。
──共演の満島真之介さんとは、長年親交があるそうですね。
そうなんです。朝ドラや真之介の主演映画で共演して、ずっと仲良くさせてもらっています。「月刊 松坂桃李」で久しぶりに共演したので、本人は「ウェーイ!」みたいなハイテンションでした(笑)。特殊な企画でしたが、すぐに順応してくれましたね。
“妄想”は趣味というより、通常運転
──「月刊 松坂桃李」では、番組に関連したSNS向けショート動画を120本配信するプロジェクトが行われています。ショート動画の撮影で印象に残っているものはありますか?
「おいしく料理しまーす!」とロケ弁を奪われ、戻ってきた弁当に雑に切ったマグロの赤身が入っているという「なんでやねん」って感じの動画を撮りました。僕がマグロを好きだからみたいですが、これで成立させる力量が本当にすごいなって思いました。
──動画では「革命飯 まぐろ弁当」と名付けられていましたね(笑)。見どころ満載の「月刊 松坂桃李」ですが、楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
ショートコンテンツなので、視聴者の方もおそらく“満足”はしないのではないかと思います。ただ、皆さんの反響次第では長編が撮れるかもしれません! そのときは映画ナタリーさんにまた取材していただいて、映画としてインタビューに答えたいと祈るばかりです(笑)。でも、こんなふうに軽い気持ちで楽しめるショートコンテンツがあってもいいんじゃないかと思うので、がっつりキャッチャーミットで構えず、キャッチボールするくらいの感覚で観てもらえるとうれしいです。
──長編化を期待しています! ちなみにこの企画自体、松坂さんの妄想が原点となりますが、松坂さんは今でも妄想をすることはあるんでしょうか?
あります、あります。妄想はクセみたいなものなので。「こうだったらいいな」とか「ああだったらこういうことができるな」とか考えます。趣味というより、通常運転ですね。
プロフィール
松坂桃李(マツザカトオリ)
1988年10月17日生まれ、神奈川県出身。2009年に特撮ドラマ「侍戦隊シンケンジャー」で俳優デビュー。以降、「日本のいちばん長い日」「キセキ ーあの日のソビトー」「彼女がその名を知らない鳥たち」「不能犯」「娼年」、「孤狼の血」シリーズ、「蜜蜂と遠雷」などに出演する。石田衣良の小説を原作とする「娼年」では舞台、映画ともに主演を務めた。2020年には「新聞記者」での演技により第43回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。近年の作品には「流浪の月」「耳をすませば」「ラーゲリより愛を込めて」「シン・仮面ライダー」「ゆとりですがなにか インターナショナル」「スオミの話をしよう」、Netflixシリーズ「離婚しようよ」などがある。また、待機作に2025年1月2日放送のTBS新春スペシャルドラマ「スロウトレイン」や、1月24日公開の主演作「雪の花 —ともに在りて—」などがある。