「月刊 松坂桃李」の放送・配信が本日10月20日21時にWOWOWでスタートした。
“俳優・松坂桃李が妄想した映画のフライヤーを作る”という雑誌連載をまとめたビジュアルブック「妄想・松坂桃李」。「月刊 松坂桃李」ではその中から3作品が映像化され、松居大悟が監督を務める10月号「横★須★賀 探偵事務所」、沖田修一が監督を務める11月号「ダンディ・ボーイ。」、齊藤工が監督を務める12月号「何もきこえない。」が展開される。
映画ナタリーでは、各作品の脚本も手がけた松居・沖田・齊藤の3名にそれぞれインタビュー。企画を聞いたときの感想や、物語の生みの親でもある松坂の印象など、制作現場の裏側を語ってもらった。
取材・文 / 小林千絵撮影 / 清水純一
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うひゃうひゃって言いながら書きました
──「妄想・松坂桃李」を映像化するという企画を最初に聞いたとき、どのように感じましたか?
まず連載の企画自体がぶっ飛んでるなと思いました。妄想だけど、「役作りが大変だった」と松坂さんがコメントしていたり、細かいディテールまで考えられていて。妄想もかなり深いですし。
──「横★須★賀 探偵事務所」のチョイスは松居監督によるものですか?
いや、松坂さんから「『横★須★賀 探偵事務所』を松居監督で」とお声掛けをいただきました。松坂さんとはお仕事をご一緒したことがなかったので、まず「松居監督で」と言っていただけたこともうれしかったし、しかもそれが探偵ものだったのが意外で。青春群像劇や恋愛ものならイメージもあるかもしれないんですけど、探偵ものって自分のイメージからは一番遠いものだと思っていたので、そこを指定していただけたのは面白いなと思いました。
──松坂さんからの逆オファーという形だったんですね。
そうなんです。気になっている俳優さんから指名されて挑むのはうれしかったですね。指名してもらったことで、「松坂さんの新しい一面を見せたい」とがんばれたところもあるし。だから「横★須★賀 探偵事務所」では、新しい松坂さんが見られると思います。
──「横★須★賀 探偵事務所」は松居監督にとって初の探偵ものとなりましたが、どのように作っていったのでしょうか?
「私立探偵 濱マイク」や「探偵物語」「探偵はBARにいる」といった、歴代の探偵ものの作品を観返してかなり研究しました。その中で、やはり探偵ものと言えば、キャラクターが重要だなと。例えば「濱マイク」だったら柄シャツ、「探偵物語」だったらハット。そういうアイコンがあったらいいなと、松坂さんと一緒に主人公の龍哉のアイコンはなんだろうと相談して決めていきました。いただいた草案から、長編の台本に膨らませていく作業も楽しかったです。どうやって撮るかはさておき、まずは風呂敷を広げようと思って、龍哉が実家に帰って弟の知らなかった真実に気づいてしまうところもそうですし、船の爆破シーンとかも。“妄想・松坂桃李”に対して“妄想・松居大悟”のつもりで、うひゃうひゃって言いながら書きました。楽しかったです。
──松坂さんが演じる龍哉はいかがでしたか?
僕の想像していたちょっと抜けた探偵、横須賀に愛されている人という雰囲気も要所要所で醸し出していましたし、かと思えば「絶対に見つけてやる」というキャッチコピーを象徴するようなヒリヒリするところもありました。硬軟どちらもとてもバランスがよくて、すごいなと。松坂さんってそもそも、どんな無茶にもまず乗ってくれるんですよ。現場を信じてくれてると思えるし、全体重で挑んできてくれる。だから一緒に作るのがすごく楽しかったです。
──アルバイト助手の高校生・さやは、「不死身ラヴァーズ」で松居さんとタッグを組んだ見上愛さんが演じています。
ちょうど「不死身ラヴァーズ」のタイミングでこの作品の開発をしていたこともあって、18歳のフレッシュで少しミステリアスな役を見上さんが演じたらどうなるだろう、と。さやは「不死身ラヴァーズ」の主人公・長谷部りのとはまた全然違う役だし、もう1回ご一緒したかったので声を掛けました。作品としては2回目だったから見上さんは肩の力が抜けていて、自由自在に動けるし、顔も表情も作れる。俳優としての印象も「不死身ラヴァーズ」のときとは全然違ったので、そんなところを見られたのも面白かったです。
──さらに永瀬正敏さんも出演されています。参加に至った経緯を教えてください。
僕が永瀬さんのことが大好きで。それに僕の中ではやはり今回は「濱マイク」の存在が大きかったので、ダメもとで声を掛けてみたら……「やります」と言ってくださいました。こんなにうれしいことはなかったですね。現場でも「濱マイク」の話をいろいろ聞かせてくださいましたし、さらには「もったいない、これはシリーズもので作るべきだ」と言ってくださって。それもとてもうれしかったですね。
──企画から撮影まで松坂さんとご一緒されましたが、松坂さんとの初めての作品作りはいかがでしたか?
今回、原案者ということもあったのかもしれないですが、部署関係なく1つの作品をよくするためにがんばろうとみんなを引っ張ってくれていて。助手の子にも声を掛けてくれるし。一緒に作っていて「同じチームなんだな」と。その姿がすごく魅力的だなと思いました。
──また別の作品でも、できれば長編で、松居さん×松坂さんのタッグ作を観てみたいなと思いました。
僕もやりたいです。やってくれないかなー。
プロフィール
松居大悟(マツイダイゴ)
1985年11月2日生まれ、福岡県出身。劇団ゴジゲン主宰。2012年に「アフロ田中」で長編監督デビュー。監督作に「スイートプールサイド」「アズミ・ハルコは行方不明」「アイスと雨音」「君が君で君だ」「くれなずめ」「手」「不死身ラヴァーズ」など。「バイプレイヤーズ」シリーズを手がけるほか、2021年に「ちょっと思い出しただけ」で第34回東京国際映画祭の観客賞とスペシャルメンションを受賞した。
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沖田修一インタビュー