岡崎京子の人気マンガを実写映画化した「ジオラマボーイ・パノラマガール」が、11月6日に全国公開される。舞台を現代の東京に置き換えた本作は、“平坦で平凡”な女子高生・渋谷ハルコを主人公に、平行線の恋を繰り広げる10代の男女を描くラブストーリー。「5windows」「PARKS パークス」などで知られる瀬田なつきが監督を務めた。
映画ナタリーでは、ハルコ役の山田杏奈と神奈川ケンイチ役の鈴木仁の対談をセッティング。瀬田とともにリハーサルを重ねて模索した役作りや、物語の舞台となった“東京”の魅力を語ってもらった。さらに瀬田には、岡崎のマンガを現代に置き換えて実写映画化した意図、そして影響を受けた岡崎作品などについて聞いた。なおこの特集には、山田と鈴木が写ルンですを使って互いを撮り合った写真も掲載。インタビューとともに楽しんでほしい。
取材・文 / 村尾泰郎 撮影 / 曽我美芽
山田杏奈:スタイリング / 中井彩乃 ヘアメイク / 菅長ふみ(Lila)
鈴木仁:スタイリング / 小松嘉章(nomadica) ヘアメイク / NOBUKIYO
ハルコは感覚的で小動物みたい(山田)
──山田さんから見てハルコはどんな女の子でした?
山田杏奈 感覚的に動くところがあるなと思いました。普通は躊躇するようなことに飛び込んでしまう子で、いつも小動物みたいにクルクル動いているというか。瀬田さんと一緒に、声のトーンから「じゃあ、こうやってみようか?」「こうかもしれない」と少しずつ役を作っていきました。
──今お話しされている感じだとハルコとは雰囲気が違いますね。落ち着いてるし、声のトーンも低くて。
山田 そうなんですよね。でも、私も「わっ!」となることもあるので、そのときの感覚を意識したりして。ハルコはまっすぐで勢いのある子だから、その勢いを維持し続けるようにしたんです。
鈴木仁 (山田が)ハルコをやると聞いて、おお、楽しみー!と思っていました(笑)。どんなふうになるんだろうと思って。
山田 私も楽しみだったよ!
──鈴木さんから見てケンイチはどんな男の子でした?
鈴木 ケンイチは不思議な感じがするし行動も大胆だけど、自分の思いにまっすぐな青年。彼はきっと衝動的に生きているんですよね。
山田 仁くんもリハーサルをたくさんやって声のトーンから作っていたよね。「もっと棒読みで」と瀬田さんに言われていた。
鈴木 そうそう。最初は僕に合うケンイチがわからなかったので、とにかくいろんなパターンをやってみて、フラットな感じにたどり着きました。自分ではどんなふうに声が出ているかってわからないんですよね。トーンを落としているつもりでも、ちょっと気持ちが入るとクセが出てしまう。そういう部分を瀬田監督に聞いていただきながら調整していきました。
──フラットな演技というのも調整が難しいですね。山田さんは監督から「もっと軽く」と言われることが多かったとか。
山田 そうでした!
鈴木 そりゃそうだよね、ハルコなんだから(笑)。
山田 これまでは重めの役が多かったので、何かあると(芝居が)そういう方向にいきがちなんですよ。ハルコはワーッとなることがあっても、そこで落ち込まず、パワーに変えることができる子だから、トーンを調整するのが大変でした。
──そんなハルコはケンイチに一目惚れしますが、ハルコの恋心についてはどう思われました?
山田 すごいですよね(笑)。“ファーストミート”の瞬間に「あっ!」となる経験が私にはなくて。ずっとその人のことを考えてしまうっていうのは、恋愛をしているときは普通にあることだと思いますが、よく知らない人のことをいきなり好きになるのは、何か本能的なものなのかな。
鈴木 しかも出会ったときは、こっちは目の前でバタっと倒れて血だらけですからね。ただの迷惑なヤツですよ(笑)。
山田 ハルコは何かを感じてしまったんでしょうね。
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鈴木仁としても、森田望智さんに振り回された(鈴木)