「去年の冬、きみと別れ」岩田剛典インタビュー|“負けず嫌い”と“向上心”───俳優・岩田剛典を作るキーワード

「教団X」で知られる芥川賞作家・中村文則の同名小説を、岩田剛典(EXILE、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE)主演で映画化した「去年の冬、きみと別れ」が、3月10日に公開される。「グラスホッパー」の瀧本智行がメガホンを取った本作は、ある事件の真相を追ううちに抜けられない罠にはまっていく記者の姿を描くサスペンスだ。岩田のほか、山本美月、斎藤工、浅見れいな、土村芳、北村一輝らが出演している。

映画ナタリーでは、本作の特集を2回にわたり展開する。第2弾では、主人公・耶雲恭介役の岩田が登場。「やればやるほど楽しい」という俳優業について、そして単独初主演を果たした本作の過酷な現場に関して話を聞いた。ストイックな努力家である岩田という人物を、“負けず嫌い”や“向上心”などのキーワードから掘り下げると、その人格形成に影響を与えた幼少期のある経験が浮かび上がってきた。

取材・文 / 浅見みなほ 撮影 / 須田卓馬

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幼少期に刷り込まれた「負けたら駄目なんだ」

──オフィシャルインタビューでは、俳優業に関して「やればやるほど楽しさを感じています」とおっしゃっていました。お芝居のどんなところに、そう思われるのでしょうか?

岩田剛典

至らない自分に対して悔しい思いをするところというか、「次はもっといい芝居をしてやろう」という向上心を掻き立てられるところです。お芝居って正解がない仕事だと思うので。

──演技のお仕事は、役になりきるという意味で“いかに自分の個性を消すか”と考えている役者さんもいると思うのですが。

そうですかね? 役になりきると言っても1人の人間の振り幅は決まっていると思うので、僕も知らない自分自身の引き出しを見つける作業をしている感覚ですね。まだ出会ったことのないタイプの役をやることで、新しい自分を見つけているような気持ちです。

──以前もご自身のことを「負けず嫌い」と話されていましたが、“向上心”や“負けず嫌い”というのが、岩田剛典さんという人物を考えるにあたっての重要なキーワードだと思うんです。小さい頃から負けず嫌いだったのでしょうか?

そうですね。子供の頃から人とたくさん競争しながら育ってきたので。今はそんなに周りを気にしているわけではなく、やりきれない自分や弱い自分に対する嫌悪があるので、後悔したくないと思って努力をしています。でも根底にあるのはあきらめたくない、ストイックにやりたいっていう、負けず嫌いな部分だと思います。

──岩田さんはこれまで、EXILEや三代目 J Soul Brothersでアーティストとして第一線で活躍されてきましたね。ダンスの前はラクロスなどのスポーツでも活躍されていたようですが、人生で最初に何かに打ち込んだ経験はなんでしょう?

受験ですね。中学受験なので、小学校の頃の話ですけど。

──幼少期から競争してきたというのは、そういった意味なんですね。

岩田剛典

はい、その経験は今の人格形成に大きく関わっているかもしれません。小さい頃にはまだそんなに自分の意志がないので、親の影響って大きいですよね。小学生の頃から全然知らないよその子と競争して、点数を付けられて、ときには怒られて……。毎週成績の順位が出てクラス変動して、特進クラスのAになったり、降格したりすることもありました。それを繰り返していたら、自然と「負けたら駄目なんだ」っていう意識が頭に刷り込まれるじゃないですか。今思うと、普通は社会に出てから味わうポジション争いみたいなことを、小さい頃に経験していたんだなって。その分、部活動や遊びに没頭するような子供らしい生活を送れなかったかもしれないですけど。とにかくあの経験は絶対、今の自分に影響していますね。

──努力をすることがつらくなる瞬間はありませんか?

つらくても、好きなことだからやれるんだと思います。逆に言うと僕、努力できることとできないことがはっきりしてしまっているので、ある意味わがままなんです。たまたま小学生の頃は勉強が好きだったし、今はこの仕事が好き。つらい状態が一生続いたら嫌ですけど、もちろん楽しいときもあるので、「だったら今は我慢しようかな」という気持ちになれる。そういう部分は昔から変わっていないですね。

──がんばれないこともあるというのが意外です。「これは自分には向いていない」と思ったのは、具体的にどんなものでしょう?

基本的に、今続けているもの以外は全部がんばれないものです(笑)。ダンスをずっとやってこられたのも興味が続くからで、今は仕事のほかに趣味や打ち込めるものもないんですよね。僕はすごく飽き性なので、何かに興味を示して始めてみても、自分の中で満足したらそれ以上追求したいと思う気持ちがなくなってしまって。仕事とか受験って目標がわかりやすいので、努力できるんだと思います。目標やゴールがないと、自分がなぜ今つらい思いをしているのかも、なぜこんなに努力しているのかもわからないので。

──仕事といえば、三代目 J Soul Brothersのメンバーになる直前、大学時代には就職活動も経験されていますよね。当時は内定先も決まっていたそうですが、もしもそこで一般企業に就職していたら、今どうなっていたと思いますか?

全然わからないけど、今みたいな生活ではないから、こんなに体が絞れていない可能性もありますね(笑)。コミュニケーション能力は低いほうではないと思うので、内定先の会社でも営業担当になりそうだったんです。まあ何年も営業を続けているかはわからないですけど……おそらく今とは違うストレスと闘いながらがんばっていると思います。僕、芸能界の友達はそんなに多くないんですけど、一般企業に勤めているような学生時代の同期がたくさんいるんです。話を聞くと、彼らは彼らでつらいことがたくさんあるんだなって。僕くらいの歳になると、みんな自分のやりたいことを考えたり、人生を見つめ直す時期みたいで、転職してる人も増えてきているんですよね。独立したいと言っている人もいて、そんな話を聞くと刺激をもらうし、面白いなと思います。

「去年の冬、きみと別れ」
2018年3月10日(土)全国公開
「去年の冬、きみと別れ」
ストーリー

結婚を控える記者・耶雲恭介は、“最後の冒険”としてあるスクープに狙いを定めていた。その相手とは、世界的に有名な天才カメラマン・木原坂雄大。猟奇殺人の疑いで一度は逮捕されたものの、姉・朱里の尽力により事故扱いとなり釈放されていた。真実を暴く本を出版しようと、担当編集者・小林良樹の忠告も聞かず木原坂に接近する耶雲。取材にのめり込んでいく耶雲をあざ笑うかのように、彼の婚約者・百合子にまで木原坂の魔の手が迫り……。

スタッフ / キャスト

監督:瀧本智行

原作:中村文則「去年の冬、きみと別れ」(幻冬舎文庫)

主題歌:m-flo「never」(rhythm zone / LDH MUSIC)

出演:岩田剛典、山本美月、斎藤工、浅見れいな、土村芳、北村一輝ほか

羽田圭介が語る「去年の冬、きみと別れ」
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岩田剛典(イワタタカノリ)
1989年3月6日生まれ、愛知県出身。三代目 J Soul Brothersのパフォーマーとして2010年にデビューし、2014年にEXILEへ加入。俳優としても活躍し、2016年には高畑充希とダブル主演した「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」で第41回報知映画賞新人賞、第40回日本アカデミー賞新人俳優賞と話題賞、第26回日本映画批評家大賞新人男優賞に輝いた。主な出演作に「HiGH&LOW」シリーズ、ドラマ「ワイルド・ヒーローズ」「砂の塔~知りすぎた隣人」などがある。2018年には出演した河瀨直美監督作「Vision」が6月8日に、杉咲花とダブル主演を務める「パーフェクトワールド」が10月5日に公開されるほか、民放連ドラ初主演作「崖っぷちホテル!」の放送が日本テレビ系列にて4月にスタートする。