野島伸司のオリジナル脚本による連続ドラマ「百合だのかんだの」が、フジテレビの動画サービスFODにて5月23日24時より配信される。
本作は、大学生の篠原百合が小学校の同級生である二宮海里と再会し、“友情”や“親友”という言葉ではくくれない関係へと発展していくさまを描く物語。配信が決定し、馬場ふみかが百合、小島藤子が海里をそれぞれ演じることを報じたニュースは、SNSを中心に大きな話題を呼んだ(参照:野島伸司の新作ドラマ「百合だのかんだの」FODで配信、馬場ふみかと小島藤子が共演)。
映画ナタリーでは、このたび野島と企画・プロデュースを担当した清水一幸にインタビュー。渡部篤郎や飯豊まりえ出演の「パパ活」、真野恵里菜と横浜流星が共演した「彼氏をローンで買いました」に続きタッグを組んだ彼らが、本作に込めた思いとは?
取材・文 / 秋葉萌実 撮影 / 曽我美芽
女の子に必要なのは彼氏よりも親友じゃない?(野島)
──「百合だのかんだの」というタイトルが印象的です。まずはその由来や、女性同士の関係性を描こうと思った経緯から伺えればと思います。
野島伸司 タイトルは音の響きを重視しました。もともと同性同士の恋愛ドラマとしてではなく、度が過ぎて仲がいい女の子たちのあいまいな関係を描こうと思っていたんです。セクシュアルなことについても、嫌悪感がなかったらそこまでするのか、それともしないのかという感じの。
清水一幸 「パパ活」「彼氏をローンで買いました」の頃もそうでしたが、今どきの女の子ってどうなんだろう?という気持ちがきっかけですよね。
野島 彼氏がいないことは別に痛くも恥ずかしくもないけど、親友がいないほうが痛くない?という感覚だね。恋愛は別に3次元でも2.5次元でも、ドラマでも妄想でも成立できる。女の子に必要なのは彼氏よりも親友じゃないか?という感じで企画が進んでいきました。
──そうなんですね。主要キャストは馬場ふみかさん、小島藤子さんが務めています。お二人に演じていただくにあたって期待したことはありますか?
野島 赤裸々なセリフもあるので、2人が現場でどのぐらいやってくれるかですね。自然に演じてくれたらと思っていました。
清水 2人ともかなり自然に演じてくれていましたよ。
──野島さんと清水さんは、先ほど撮影現場を見学されたんですよね?(※この取材は3月下旬に実施された)
清水 2人とも「よく引き受けてくださいました」と思うくらい大変な役をやってくれて。そんな中、馬場さんは「こうやったら面白いんだろうな」と楽しみながら演じてくれていましたね。(小島演じる)海里のキャスティングは、野島さんとも難航するだろうなと話していたんです。
野島 今日初めて現場で彼女(小島)を見たのですが、なんとなく本人が持っている雰囲気が海里に近いなと感じました。
承認欲求が強い子に寄り添える作品を(野島)
──「百合だのかんだの」だけでなく、野島さんと清水さんがこれまでにタッグを組んだFOD作品は、すべて20代の女性がメインの物語ですよね。登場人物を描くときはどのように情報収集されるのでしょうか?
野島 周囲に若い子がいないので情報収集はせずに、物語上のイメージで描いています。ただ今の世の中には承認欲求の強い子たちが増えてきてるので、自分としては配信ドラマではそういう子たちに寄り添えたり肯定してあげられるような作品を書きたいなとは常々思っています。
──劇中には、重要なアイテムとして“友リング”が出てきますが、あれにはどんな意図が込められているんでしょうか?
野島 恋愛よりも友情が大事でしょ?と伝えようとしたんです。もし彼氏からもらうリングよりも“友リング”が流行ったとしたら、着けていない子のほうが痛いじゃない? だから着ける指も、薬指よりも大事な親指に。清水に流行らせてと言ったんだけど(笑)。
清水 これからです!(笑)
──ちなみに配信ドラマの脚本は、地上波放送も想定して執筆するのでしょうか?
野島 基本的にはそんなに先のことは考えずに、ただ書いています。清水に「ソフトとしては残してくれ」と言いましたけど。いい物語を残せば、自分が死んだとしても強くシンクロして観てくれた人たちが語り継いでくれるので。
清水 そうですね。常に、配信ソフトとしてはもちろん、Blu-rayやDVDとして「残す」ことは念頭に置いています。
──地上波とは違って、配信ドラマだからこそできる表現はあると思いますか?
清水 昨今の地上波ドラマでできないことはあると思いますが、配信だからできるというものはないかもしれません。ただ、表現に対して遠慮はしていないですね。配信と地上波のどちらであっても、自分たちの中でのコンプライアンスなどのフィルターを薄くするか厚くするかの差しかないんじゃないかと思っていて。野島さんに書いてもらうときも「これをやめてください」とはなるべく言わないで作りたいなとは思っています。
野島 配信の作品はちょっと我に返る瞬間がないのがいい。こういうセリフはコンプライアンスに引っかかるなと思い始めると、冷静になってしまって作品の世界に再び入るのにすごく時間がかかるんです。とにかく好きなように書けるのはありがたい。ゴールデン帯では絶対にそうはならないので。
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バズる前の登竜門かも(野島)
- 「百合だのかんだの」
- FOD 2019年5月23日(木)24時配信スタート
- ストーリー
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ストーカーに悩まされる大学生・篠原百合。自宅の郵便ポストに使用済みティッシュが入っているなどの嫌がらせに耐えかねた彼女は、引越し先を探しに訪れた不動産会社で、小学校の同級生・二宮海里に声をかけられる。久々の再会を喜ぶ2人だが、百合は海里の言葉やハグの長さに違和感を覚えて……。
- スタッフ / キャスト
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脚本:野島伸司
企画・プロデュース:清水一幸
演出:加藤裕将
出演:馬場ふみか、小島藤子、財木琢磨、都丸紗也華、中尾有伽、笠原秀幸、石黒賢ほか
©フジテレビ
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- 野島伸司(ノジマシンジ)
- 1963年3月4日生まれ、新潟県出身。1988年にフジテレビヤングシナリオ大賞を受賞し、同年「君が嘘をついた」で連続ドラマの脚本家デビュー。主な作品に「101回目のプロポーズ」「高校教師」「人間・失格~たとえばぼくが死んだら」「聖者の行進」「プライド」「高嶺の花」などがある。
- 清水一幸(シミズカズユキ)
- 1973年3月3日生まれ、埼玉県出身。主なプロデュース作品は「のだめカンタービレ」「最高の離婚」「問題のあるレストラン」など。近年の作品には「パパ活」「花にけだもの」「彼氏をローンで買いました」「ポルノグラファー」などがある。