デジナタ連載 「ウルトラQ」片桐仁|画面から伝わる特撮の異様な熱量!ウルトラシリーズの原点を4K有機ELビエラで鑑賞

当時の社会問題や庶民の生活感が息づいている

──そして最後は「ガラモンの逆襲」です。

「ウルトラQ」第16話「ガラモンの逆襲」

第16話「ガラモンの逆襲」

かつてガラモンを操った電子頭脳が盗まれた。その事件の背後に潜む怪しい男の影……。そして東京に飛来する無数のガラダマから誕生した隕石怪獣ガラモンが、再び人々を恐怖に陥れる。

片桐仁

最初の夜のシーン、微妙な陰影やフィルムの質感までわかります。あえて白黒にしている今どきの作品みたいです。この「ウルトラQ」のオープニングテーマもいいですよね。エフェクト音もすごくクリア。

──少し飛ばして、ガラダマが東京に落ちてくるところを観ましょう。

あれ、このビルは合成ですか? 本物ですか? 画質がいいから本物の街すらもミニチュアっぽく見えてきますね! くっきり見えることによってこういうことが起こるのか、面白いなあ。ガラモンはかわいいですけど、こんなのに殺されちゃったらたまんないですよ。なるほど、電子頭脳をアルミホイルでくるむとガラモンが止まるんですね。あっはははは、口から液体が出て活動停止しちゃった。

「ウルトラQ」第16話「ガラモンの逆襲」
「ウルトラQ」第16話「ガラモンの逆襲」

──これは“電波遮蔽網”という名称みたいです。

電波遮蔽網! いいですねえ。あ、セミ人間が正体を現しました。セミ人間って目が回転してるんだ。ビニールみたいな服を着てるんですね。

──特に目の部分はHDRになって初めてちゃんと表現できたポイントのようです。

へええ! 質感がはっきりわかってすごいです。お、UFOが出てきました。ええっ! 吸い取ってくれるんじゃないの? 切り捨てられちゃった……。ウルトラマンがいないから侵略しようとする宇宙人に対してなす術がないんですね。ちょっと怖いラストでした。

──「ウルトラQ」はけっこうそういう話も多いですよね。

片桐仁

ストーリーは人間ドラマが軸にあって、短い中に当時の社会問題や庶民の生活感が息づいているなと思いました。1966年放送だから日本は高度経済成長期で、どんどん先進国になっていっているときじゃないですか。でも、世界ではベトナム戦争も起こっていて明るいばかりじゃない。そういうところをちゃんと拾ってますよね。

──35mmフィルムで撮影されていて、当時のテレビドラマとしては破格のスケールだったようです。

ヘリコプターやセスナがこれ見よがしに出てきますもんね。僕は今でもヘリコプターに乗ったことないですから。最先端の技術が詰め込まれているというか、設定を変に近未来にしすぎてないのもいい。すごい技術を持った宇宙人がいるけど、地球人も科学が日進月歩で進んでいてそれを解明していくという。その感覚も素晴らしいです。

53年前の作品なのに逆に新しく見えました

──4K UHDの「ウルトラQ」をご覧になってみていかがでしたか?

「ウルトラQ」第3話「宇宙からの贈りもの」より、ナメゴン。
「ウルトラQ」第13話「ガラダマ」より、桜井浩子演じる江戸川由利子。

白黒だし、今だともう4:3ってだけで古いなって感じたりするんですけど、「ウルトラQ」は53年前の作品なのに逆に新しく見えてきました。今は全部CGで作られることも多いですが、それがないのでアナログのよさがくっきり見えるのがいいですよね。

──驚いたポイントはありますか?

怪獣や建物とかの質感です。濡れた感じや金属の素材感が、まるで実物を見ているようでした。あと、人物が映るシーンでは、人が前にぐっと来るような立体感もありました。背景がボケていて人物にピントが合っているのが白黒でもはっきりわかりましたよ。

──そもそも、片桐さんは子供のときに「ウルトラマン」シリーズがお好きだったとか。

カネゴンとガラモンのソフビを持つ片桐仁。

はい。1973年生まれなんで「ウルトラマン80」や「ザ☆ウルトラマン」のアニメを小学校の頃に観ていました。もっと前の幼稚園のときにはウルトラマンのフィギュアを持って砂場とかで遊んでいましたね。

──「ウルトラQ」を知ったきっかけはなんだったのですか?

高校生のときにガレージキットブームで、怪獣のものを集めだしたのがきっかけです。海洋堂やビリケン商会からハマハヤオさんの原型でいっぱい出ていて。僕はパッケージが好きで海洋堂のガラモンを買いました。結局完成させられなかったなあ。

──造形的な魅力からウルトラ怪獣を知っていったんですね。

そうですそうです。だからフィギュアを買ったときはガラモンが「ウルトラQ」に出ていることも知らなかったんです。どうやって戦うんだろうと思いながら、なかなか作品に手が伸びなくて。

怪獣神社を作ってほしい

──カネゴンとガラモン以外でお気に入りの怪獣はいますか?

宇宙人系が好きなんです。今日出てきたセミ人間とかは星人系のもとになっていていいなあと思います。いやあ、でも全部好きですね。ゴメス、ペギラ、ケムール人……。50年以上経っても色褪せないかわいらしさがあります。デザインもそうですし、ちゃんと彼らが出てくるストーリーがあるのがいいです。だって宇宙からの侵略ロボットでガラモンをデザインします? あんなにかわいくカチャカチャカチャカチャって。

──今だったら全然違うデザインになりそうです。

そうでしょうね。今だとこれはこうじゃなきゃいけないってルールに縛られて、デザインはけっこうつまんなくなっていると思いますよ。「ウルトラQ」ではこれはこういうものですって提示して、今やそれがルールになっていますから。あと、当時の時間や予算に限りがある中で作った特撮シーンも見どころですよね。何回もできないから失敗してもOKにしちゃうとか、一発撮りならではの異様な熱量というか。それが画面からも伝わってきて、「ウルトラQ」は特撮の原点という感じがします。

──特撮部の舞台裏はすごかったでしょうね。

どうやって作っているのか見たいですよね! さすがに当時はメイキングカメラが回ってないと思いますけど、特撮なんてメイキングのほうが観たいくらいですよ! 絶対そっちのほうが面白いんだもん。

──やっぱり造形作家としては、そういう部分にぐっときますか?

ぐっときますねえ。「ウルトラマン」に寄せた神社や怪獣神社を作って日本のお祭りにしてほしいくらいです。調布とかで。ガラモンの獅子舞とかよくないですか?

──絶対かわいいです(笑)。

53年も経っているしそろそろあってもいいと思うけどなあ。それぐらい今の日本人の原点にあると思いますよ。

ウルトラ怪獣の食玩を見る片桐仁。

──では「ウルトラQ」を観たことがない若い人などに本作を薦めるとしたら、どのようにお薦めしますか?

まずは白黒で古いものだと思ってもいいから観てください、と。お話も含めて想像したものと全然違うから驚くと思いますよ。逆にもうすべてが新鮮に映るんじゃないでしょうか。

──ファンの方に4K UHDの「ウルトラQ」をプッシュするとしたら、どこでしょうか。

以前、特技監督の中野昭慶さんとお会いしたときに「『ウルトラQ』は35mmで撮っているからリマスターしがいがある。本当はこれで観せたかった」と言っていて。すごいですよね。時代がやっと当時の作り手に追いついたというか、今これで観るよさは確実にあると思います。あとファンの方には、画質がよすぎて本物のビルが逆にミニチュアに見えますけど!?っていう。その面白さを体感してほしいです(笑)。

片桐仁

Panasonic「4K有機ELビエラ GZ2000シリーズ」

Panasonic「4K有機ELビエラ GZ2000シリーズ」65v

自社設計の有機ELディスプレイを採用。有機ELの発光性能を最大限に引き出し、より高輝度・高コントラストな映像表現が実現した。これにより白飛びや黒つぶれのないクリアな映像を楽しむことができる。さらに、天井方向からの音の反射を利用するイネーブルドスピーカーを搭載。立体音響Dolby Atmos®にも対応しており、臨場感あふれるサウンドを体感できる。BS4K / 110度CS4Kダブルチューナー内蔵のため、新4K衛星放送を視聴しながら裏番組を録画することも可能だ。

DP-UB9000(Japan Limited)

DP-UB9000(Japan Limited)

Ultra HD ブルーレイ再生に対応したUltra HD ブルーレイプレーヤーのフラッグシップモデル。最新のHDR規格である「HDR10+」「Dolby Vision」に対応しているため、シーンごとに映像の明るさを最適化し、映像制作者の意図に合わせたHDR映像が再現可能に。従来の4K・HDR映像も独自の高精度「HDRトーンマップ」技術により、自動的に適切な高画質で楽しむことができる。またTuned by Technicsによる振動とノイズを低減した高音質も特徴。