小さいお子さんから「こういうウルトラマンもあるんだ」と
──「シン・ウルトラマン」制作時のエピソードもお聞かせください。公開されて約1年が経ちましたが、今改めて振り返ると、「シン・ウルトラマン」という作品にはどんな手応えをお持ちですか?
子供の頃に自分が「ウルトラマン」を観て感じていた、かわいらしさみたいな部分は意識したんですよ。シリアスな話ではあるけど、出てくる登場人物の1人ひとりはすごくいい人。人格的に問題のある人は出てこないどころか、どちらかといえば楽観的だったりして。「この人たちのおかげで、劇中の事件がうまく解決したのでは」と思わせるキャラクター作りを目指していました。そういう最初の意図が、ちゃんと映画の中に着地していたのはよかったと思いますね。そんな空気感だったからか、ことあるごとにみんなで集まってごはんを食べに行ったりしていまして。この間も、1年ぶりにみんなで集まったんですよ。
──キャストさん、スタッフさんのつながりが深いんですね。
いまだに仲良くさせていただいてますね。
──映画公開時、樋口監督はインタビューで「初めて『ウルトラマン』を観る方にも驚きを持たせたい」とお話しされていました。公開されてから、「ウルトラマン」初見の方の反応はどのようなものがありましたか?
小さいお子さんから「こういうウルトラマンもあるんだ」と、現行のシリーズとは違ったものとして受け止めてくれたんだなと感じる反響がありましたね。あとは女性の方から、かっこいい男性キャストが多いと(笑)。まあそういう男性陣を集めたんで、思惑通りなんですけど。
──(笑)。確かに役者さんのパートは目が潤いました。
特に山本耕史さんがこんなに弾けてくれるとはね(笑)。メフィラスのキャラクターは面白くしようとは思ってたけど、ここまで皆さんに喜んでいただけるとは、想像以上でした。
「そこにカメラがあってほしい」と思う場所ってだいたい狭かったりするんですよ
──クランクインは2019年10月で、コロナ禍の前には撮影が終わっていたそうですね。だいぶ前の話になってしまいますが、当時苦労したことは?
何かあったかなあ。こういうのって、つらかったこととか忘れちゃうよね(笑)。あ、一度、風が強くて大変だった日がありましたね。台風が通過する翌日に、日比谷公園の真向かいのビルの屋上でとあるシーンを撮影するスケジュールだったんです。でも台風が通過したばかりだから、交通網が麻痺している可能性がある。そこで、深夜まで撮影したときにタクシー券をお渡ししてキャストさんに帰ってもらう「送り」という風習があるんですけど、その逆バージョンで「迎え」ができないか?と、制作部にお願いして。それで全員を拾ってくれば1日有効に使えるぞ!と思い立って、前例はなかったんですが実行しました。スタッフからは「本当にこれで全部撮れるんですか!?」と聞かれたけど、「も、もちろんだよ」って(笑)。でも実際にそれで混乱なく撮了できたので、印象深いですね。
──そんなエピソードがあったんですね。
そう。天気はよかったけど、ものすごく風が強くて(笑)。そこは大変でしたね。
──ちなみに、「シン・ウルトラマン」の特徴として、隙間から狙うような独特のアングルでのカットが多いですよね。Blu-ray特別版の特典映像にもメイキングが収録されていて、スマートフォンをあらゆる箇所に配置するような撮影方法がとても興味深かったんですが、それを取り入れたのはどういう意図からだったんですか?
理由はいろいろあるけど、「そこにカメラがあってほしい」と思う場所ってだいたい狭かったりするんですよ。例えばパソコンの視点で撮ろうと思っても、1回机をどかさないといけないんですよね。でもスマートフォンなら、モニターの前に数台立てかけておくだけで一気に撮れちゃうわけです。現場の撮影時間を短縮できるというメリットもありました。
──なるほど。何台も同時に回して、そこからいいカットを集めて編集するんですね。
その代わり、もちろん画質とかは最高のものではないんですけどね。「それでも力強い画になるからこれを使おう」という判断でした。
庵野のこだわりがたくさんありましたね
──そうしてスマートフォンで撮影した映像でも、MZ2500シリーズではきれいに表示されていましたね。「シン・ウルトラマン」で樋口監督は、庵野秀明さんから監督を託されてメガホンを取ったわけですが、制作にあたって庵野さんとはどのようなやりとりをしましたか?
庵野のこだわりがたくさんありましたね。最終的には、自らモーションキャプチャを撮ってましたから(笑)。昔も自主映画でウルトラマン役をやっていたから(「DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン」)、任せました(笑)。最初にウルトラマンがスペシウム光線を撃つところや、禍威獣が撃った光線を胸で受けてそのまま前に迫ってくるあたりも、庵野がウルトラマンを演じています。
──モーションキャプチャ撮影の様子はメイキングにも収録されていましたが、庵野さん自らがやっているんだ!と驚きました。樋口さんから見て、庵野さんのすごいと思うところはどこですか?
彼と一緒に仕事した人ならみんなこう言うと思うんですけど、本当に記憶力がすごいですね。作った画をほとんど覚えているので、「あのときのあれだよ!」ってすぐ出てきます。「あったっけ?」って探すと、本当にある(笑)。
──ちょうど、庵野さんが脚本・監督を担当した「シン・仮面ライダー」が公開中(※取材時点)ですが、ご覧になりましたか?
観ました! まさに純粋な庵野のエキスが凝縮された作品だなと。純度100%でしたね。
──最後に、「シン・ウルトラマン」のBlu-ray / DVDで注目してほしいポイントを教えてください。
本編はもちろんですけど、Blu-ray特別版の特典映像「シン・ウルトラファイト」をぜひ観ていただきたいですね。いわゆるスピンオフとして制作したものですが、「『ウルトラマン』にはこういう見方もあるんじゃないか」と思わせてくれる短い作品が10本入っています。「TSUBURAYA IMAGINATION」という配信プラットフォームに入会しないと観られない作品が、10本入っている! これはぜひ注目してほしいですね。
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プロフィール
樋口真嗣(ヒグチシンジ)
1965年9月22日、東京都生まれ。1984年「ゴジラ」に造形助手として参加し、映画界入り。「平成ガメラ」3部作などで特撮監督を担当したあと、「ローレライ」「のぼうの城」(犬童一心と共同監督)、「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」2部作などで監督を務める。2017年には「シン・ゴジラ」で総監督の庵野秀明とともに日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞。2022年5月に監督作「シン・ウルトラマン」が公開され、興行収入44億円のヒットを記録した。
樋口真嗣 (@shinji_higuchi) | Twitter
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