庵野秀明が企画・脚本を担当した映画「シン・ウルトラマン」のBlu-ray / DVDが発売中。ウルトラマンの誕生55周年を記念した同作では、巨大不明生物・禍威獣(カイジュウ)の来襲に立ち向かう禍威獣特設対策室、通称・禍特対(カトクタイ)の活躍が描かれる。キャストに斎藤工、長澤まさみ、西島秀俊、有岡大貴(Hey! Say! JUMP)、早見あかりが名を連ねた。
映画ナタリーでは「Panasonic presents デジナタ」連載の1つとして、監督を務めた樋口真嗣にインタビュー。Panasonicテレビの最新機種「マイクロレンズ4K有機ELビエラ MZ2500シリーズ」と、新作邦画実写劇映画で初めてDolby Vision®(ドルビービジョン)、Dolby Atmos®(ドルビーアトモス)の両規格で本編を収録した「シン・ウルトラマン」Blu-ray特別版 4K Ultra HD Blu-ray同梱4枚組を用意し、大画面・高画質・高音質で本編を鑑賞しながら同作について振り返ってもらった。
ナタリーとPanasonicの連載企画「デジナタ」では、アーティストや俳優らに最新型のAV機器を使ってさまざまなコンテンツを楽しんでもらう企画を多数展開中!
取材・文 / 岸野恵加撮影 / 後藤壮太郎
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Panasonic「マイクロレンズ4K有機ELビエラ MZ2500シリーズ」
新世代の有機ELパネル「マイクロレンズ有機ELパネル」を搭載した4Kビエラのフラッグシップモデル。1画素あたり数千個ものレンズが並べられたマイクロレンズアレイと凹凸形状の有機EL発光層を一体形成することで、従来の有機ELパネルに比べ、さらなる高輝度と高コントラスト化を実現し、高いレベルで光の表現が可能となっている。また音質面ではラインアレイスピーカー、イネーブルドスピーカー、ワイドスピーカー、ウーハーユニットを搭載した「360立体音響サウンドシステム+」により、空間上で音の定位感が高い立体音響を体験できる。映画館と同じ立体音響技術「Dolby Atmos」にも対応。さらに地震に強く倒れにくいスイーベル(首ふり)機能搭載の「転倒防止スタンド」が実装されるほか、新4K衛星放送、地上デジタル、BS・110度CSデジタル放送、Netflix、Prime Video、ディズニープラス、U-NEXT、Hulu、ABEMA、TVer、YouTubeなどのコンテンツを快適に楽しめる機能も充実している。7月21日発売予定。
よく「うるさい!」って言われる(笑)
──樋口監督はお仕事でも頻繁にモニターを使用されると思いますが、ご家庭ではどんなテレビを使っていますか?
65インチのものを置いてます。部屋の広さに対して考えたらもう少し小さいサイズでもいいんでしょうけど、やっぱり大きさの魅力には勝てなくなってきて。オリンピック前に購入したから、もう4年くらい経ったかな。グレーディング(編集部注:撮影後に映像の階調、色調を整える画像加工処理)のときに家庭用モニターでの見え方を確認するために、スタジオの色調整の部署で使うものと家のテレビは一応同じものにしているんですよ。それは申し訳ないことにPanasonicさんの製品ではないんですけど(笑)。でも家だと徹底的に自分の好きな視聴環境にすることはできないというか……家族と音に対する感覚が合わないんですよね。
──好みの音量が異なるということですか?
そう。俺が気持ちいいと感じる音量で観ているとよく「うるさい!」って言われる(笑)。そして後ろのスピーカーもケーブルも「邪魔!」って外されて。仕方がないので仕事場の音響環境を充実させようとサウンドバーを借りてきて試してみたら、なかなかよくて。そこからスイッチが入ってしまい、Dolby Atmos対応のAVアンプに手を出し、さらに天井に穴を開けてスピーカーを取り付けて、今では11.1chと、映画館に近い環境になってます。人が集まったときはときどきみんなで映画を観たりしていますね。でもそうして部屋が映画館に近付いていくと、部屋が音場の中にいるというか、完全に包囲される感覚になります。逆に音を聴く以外のことができなくなるようで。俺は集中して聴いているからなんの問題もないけど、家事をしたり仕事の合間に再生していると、音がうるさく感じる感覚があるみたいですね。
──監督が理想的な視聴環境を作るうえでは、音へのこだわりが大きいんですね。
コンセントを専用のものに換えたりとか、世の中にはもっとこだわっている人がいるし、そういう人に比べたら俺はまだまだだと思うんですけどね。
──ご自宅でBlu-rayディスクレコーダーはよく使われますか?
もう中毒みたいによく使っています(笑)。全自動録画はもちろん活用していて、1枚1枚丁寧にディスクへ焼いて表面ラベルを印刷して……。もはや生きがいみたいになってるんですけど、これって一定の年代の人までしかやらないのかな(笑)。最近整理したら、2500枚くらいのディスクが積み上がっていました。計算してみたら、死ぬまでに絶対に全部観れないなって(笑)。でも観たいときにパッと観れないとか、機会の損失が一番嫌なんですよ。
──録ってディスクに焼くことが監督のルーティンとして定着しているんですね。残しているものは、映画やドキュメンタリーですか?
そのあたりが多いですね。NHKのドキュメンタリーとかBS・CSの番組はいつ配信で観れなくなるかわからないから、「とりあえず焼いておかなきゃ」と片っ端から残しています。
このシーンで音の幅を広げたかいがある
──それでは実際に「シン・ウルトラマン」のシーンを再生しながら、7月21日発売予定の最新モデル「マイクロレンズ4K有機ELビエラ MZ2500シリーズ」を体験していただきましょう。まずは終盤でウルトラマンがゼットンに立ち向かい、その後、亜空間に吸い込まれそうになりながら飛ぶ場面をご覧ください。BGMが迫力たっぷりなシーンですが、音の響きはいかがでしょうか。
オーケストラの響きがとても壮大に聞こえますね。今この環境は、スピーカーを別でアドオンしているわけではないですよね?
──はい。テレビ内部のスピーカーのみで音を聴いていただいています。MZ2500シリーズには「360立体音響サウンドシステム+」が搭載されていて、本体の上向きにイネーブルドスピーカー、左右の横向きにワイドスピーカー、そして前向きにラインアレイスピーカーが付いています。音の臨場感を追求していて、上下左右から音に包み込まれる体験ができるのが特徴です。
いいですね。適量というか、押し出しはあるんだけど音に囲まれすぎている感じがなくて。このシーンで音の幅を広げたかいがある。
──音の幅を広げる、とは?
実はこの映画はさまざまなクオリティの音源を使用しているんですよ。現在録音した音楽だけでなく、1966年に録音された「ウルトラマン」シリーズの音源を使っていたり、禍威獣の鳴き声も基本的にはオリジナルに準じたモノラルの音を取り入れていたり。そこから現代の映画として広げられるところは広げたくて、マスターを作るときに何度もやり直したんですね。前半に昔の音源を使いつつ、だんだんグラデーションにして、後半で音に広がりが出るようにした。昔の音源の質も味わいではあるんですけど、その不安定さがDolby Atmosに乗せたときに意図していない出音になることがあって。原因を探るのにけっこう時間が掛かりましたね。
──なるほど。ではこの終盤のシーンは、音楽が最高潮の盛り上がりを迎えるよう位置付けたシーンというわけですね。
そうですね。そういう音をDolby Atmosのディスクに収録して、こういう最先端のテレビで再生すると、すごい迫力ですよね。「シン・ウルトラマン」のパッケージは4K Ultra HD Blu-rayもラインナップされていますが、新作邦画劇映画としては初となるDolby Visionを採用し、さらにDolby Atmosで収録されているんです。自分の映画をこの音質で鑑賞できるのがうれしいです。今まではほぼ洋画でしか実施されていないので、これを機にほかの邦画もどんどんやってほしいですね。特に「THE FIRST SLAM DUNK」のDolby Cinema®(ドルビーシネマ)(※編集部注:Dolby VisionとDolby Atmosに対応した映画館のこと)はすごくよかったので、あのままディスクに収録してほしいなあ。
本来意図した色味をくっきり見せてくれるのはうれしいですね
──続いてはマイクロレンズ4K有機ELの魅力が伝わるシーンを観ていただきます。禍威獣第8号・ガボラが核廃棄施設に迫ったところへ、ウルトラマンが登場し、激闘するシーンです。MZ2500シリーズはバックライトを使用しない自発光ディスプレイによって色の再現性に優れており、より鮮やかでリアルな映像をお楽しみいただけると思います。
おっ! ガボラのドリルの部分の紫色がしっかり表現されている。ポスプロ(※編集部注:ポストプロダクションの略称。撮影後の技術的仕上げ作業のこと)期間で紫色を入れたんですが、こうしたディテールは家庭の視聴環境だと出せないことが多くて、それでも仕方ないと割り切って考えていることが多いんです。こうして本来意図した色味をくっきり見せてくれるのはうれしいですね。
──これまでのビエラで使用していた有機ELパネルに比べて、MZ2500シリーズは最大発光輝度2倍を実現しているそうで、細かな色味まで再現できていると思います。
あとこのガボラは地底禍威獣なので、金属みたいに硬い甲羅に覆われているんですよ。その1枚1枚の金属感みたいなものが丁寧に再現されているのもすごくいいですね。映画館で観るときよりも、逆にテレビの距離感だからこそちゃんと見える。
──戦闘によって巻き上がる砂埃も、1粒1粒が見えそうなくらい細かく映っていますね。
見えすぎるくらい見えていて、作り手としては逆にドキドキしてしまいます。CGで作ったものなんで、「暗く潰してごまかしたつもりだったところが意外と見えてる!」とか(笑)。でも今観ている限りは大丈夫そうで安堵しました。そうだ、このあとガボラが光線を放つところも観ていいですか?
──もちろんです。
よかった、ちゃんと表現されてる。この光線はまぶしく映るように設定していて、光の中にチラチラと光るディテールを入れているんです。たいていのテレビでは情報量が限られているので、のっぺりと真っ白に映っちゃう。でもこのビエラだとしっかり表現されていて、うれしいですね。
うーん、いい!
──続いてはウルトラマンとザラブが市街地で格闘する夜景のシーンです。こうした暗いシーンでは細部が潰れてしまいがちですが、MZ2500シリーズではくっきりと映ります。
なるほど。狙ったより色が出すぎている印象も少しあるけど、テレビで観る分には、このくらい見えているほうが娯楽性が高いと思います。こういうスケール感のある画を作るときは、全体的に色味をちょっと抑え気味にすることが多いんですよね。もしよかったら、持参したディスクを再生してみてもいいですか?
──ぜひぜひ。これはドキュメンタリーですか?
そう。この夕暮れの海のシーンとか、暗いところが普通のテレビだと潰れちゃうんですよ。これを試してみたくて。意地悪でしょ?(笑) でもこのビエラでは色が崩れずにしっかり同居していますね。うーん、いい! 本当にすごいものを見せていただきました。「シン・ウルトラマン」の宣伝をしに来たつもりだったのに、すっかりこのテレビを買う気になっています(笑)。
──ありがとうございます。ぜひ!(笑)
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小さいお子さんから「こういうウルトラマンもあるんだ」と