劇場アニメーション「デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆」が、2月21日から上映される。
デジモンアドベンチャーシリーズ20周年作品となる本作の舞台は、八神太一ら“選ばれし子どもたち”の初めての冒険から10年以上が経った2010年。成長した彼らと、パートナーデジモンとの深い絆が描かれる。
映画ナタリーでは、ゲスト声優の松岡茉優にインタビューを実施した。ニューヨークの大学でデジモンの研究を進める科学者メノア・ベルッチに声を当てた松岡。幼い頃からデジモンのファンだったという彼女が語る、これまでのシリーズや最新作への思いとは?
取材・文 / 秋葉萌実 撮影 / 上山陽介
子供の頃、オリジナルのパートナーデジモンを描きました!
──松岡さんは幼い頃からデジモンがお好きだったそうですね。
幼稚園から小学校の頃に、最初のテレビシリーズ「デジモンアドベンチャー」を観ていました。大好きな作品だったから「デジモンアドベンチャー02(以下「02」)」が始まったときは、正直なところキャラクターが違うことをすぐには受け入れられなかったんです(笑)。「デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆」には「02」の子たちも出てきますが、今彼らの姿を見るとじーんとするし、あのときはごめんね……と思います。
──当時のテレビシリーズのどんなところに惹かれたか覚えていますか?
デジモンたちのかわいらしさやかっこよさなど、キャラクターに惹かれた部分はもちろんあります。ただやっぱり、すべてのものが目新しくて楽しい時期に、彼らがあきらめない心や仲間たちとの絆などいろんなことを教えてくれたという気持ちが今でも残っています。
──ゲスト声優として参加することが発表されたとき、松岡さんは「ヤマトに恋をして、空みたいな女の子になりたいなと憧れた」とコメントされていました。
太一かヤマトかだったら私はヤマト派でした! 物静かなところが好きでしたね。当時、周りには元気いっぱいな男の子が多かったので、ないものねだりで惹かれていたんだと思います(笑)。
──では、彼が成長した姿を見て驚いたのでは?
ヤマトと太一がお酒を飲んでいるシーンには少しびっくりしました。私たちも大人になってお酒が飲めるようになったけれど、2人が飲んでいると「あれっ? もうそんな歳だっけ?」と思ってしまいました。でも私たちからするとレアなシーンですが、彼らにとってはきっと日常なんですよね。あの頃小学生だったみんなが成長して、この作品では大学生だったりもう働いている子もいる。一緒に成長してきたアニメって珍しいなと思うんです。今回の作品は時間の流れを感じるし切なさもあって、もう一度大人になる儀式をするような映画になっています。
──彼らの現在の姿を見て、それぞれが歩んできた人生に思いを馳せてしまう瞬間もありましたね。それほど思い入れの強い松岡さんが、本作で声優としてデジモンの世界に仲間入りした心境を聞かせてください。
声のお仕事をさせていただくときはいつも緊張感や覚悟を持って取り組んでいるのですが、ずっと大好きだった作品なので、邪魔したくない気持ちが余計にありました。大切な役を任せていただくという点は普段の自分のお仕事と変わらないので、精一杯台本とキャラクターに向き合おうと考えていました。
──劇中には、松岡さん演じるメノアのパートナーデジモンも登場しますね。自分のパートナーデジモンができるのはファンにとってうれしい出来事なのではと思います。
子供の頃、自由帳にオリジナルのパートナーデジモンを描いていたのでうれしかったです! モルフォモンは蝶をイメージしたデジモン。女の子はグッとくるようなデザインでかわいいですよね。
メノアの味方でいたい
──公開前なのでまだ話せないことも多いとは思いますが、メノアというキャラクターや、彼女が迎える展開についてはどのような印象を抱きましたか。
メノアの気持ちに共感できました。前に進み続けるのってものすごくパワーがいるし、努力も必要ですよね。時には止まってしまえたら楽だろうなと考えることもないわけではないので。そういった意味では、彼女の考え方もすごくよくわかります。
──なるほど。アフレコ時には監督とディスカッションを重ねたと伺いました。メノアを演じるうえで、やりがいや難しさを感じた点は?
絵コンテをベースに収録をしたので、そのときはまだ表情の機微が付いていなかったんです。まだ見ぬアニメーションを想像するのは映像俳優には難しい作業ですが、「こういうテンションで大丈夫ですか?」と1つひとつ確認をしながら収録していきました。監督も「この場面は今よりシリアスになるので、声のトーンを下げて大丈夫です」と細かく演出してくださいました。
──作品を観て、松岡さんの声のバリエーションの豊富さに驚きました。メノアを演じるにあたって重要視した要素はなんだったのでしょう。
彼女を疑わないで味方でいてあげたいとずっと感じていました。メノアの選択はもしかしたら褒められたものではないかもしれませんが、彼女自身はすべて正しいことだと思って、慈愛の気持ちで行動しているんです。強くて頼もしい太一たちとメノアの違いが物語のキーになっていくのですが、観てくださった方には彼女の感情のゆらぎに共感してもらえるところも多いのかなと思っています。
──メノアの感情の変化にはリアリティがありましたし、彼女なりの正義がちゃんとあることが伝わってきました。アフレコはお一人でされたそうですが、完成した作品でほかのキャストの方のお芝居に触れて、刺激を受けた点はありますか?
いつも現状に甘んじずにやっている気持ちではありますが、なぜ声優という専門職があるのかということをひしひしと感じましたし、私が普段やっている仕事とは違うなあと思いました。私ではとても到達できないところにいる素晴らしい方々がそろっていらしたので。
──普段やっているお仕事との違いは、具体的にはどんなところに感じましたか。
いつも漕いでいる自転車はペダルがあるのに、それがないくらい違います! 入り口からすべて違っていて、私が普段やっていることは何も通用しませんでした。成長したいから挑戦するのですが、一歩目から違う感覚がずっとあって、本当にゆっくりと一歩ずつ踏み出していく感じでした。ただ何年も掛けてこの企画を動かしてくださった方やデジモンシリーズに強い思いを持って関わってきた方々が、オリジナルのキャラクターで作ったメノアを私に託してくださったのなら、その期待に応えたいと思い120%の力を出してがんばりました。
──実写作品への出演が多い松岡さんが感じた、アニメーション作品特有の楽しさについても教えてください。
「ここにこんな表情がついたんだ!」「このシーンはこんなに暗い絵だったんだ」と、あとからいろいろ知る楽しみがありました。いつものお仕事では自分が常にそこにいるから、シーンや表情をある程度は想像できるので。それと今回は外国人のキャラクターに声を当てましたが、普段の自分ではなかなか挑戦できない役をいただけることもすごく楽しいです。
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デジモンの魅力は“前に進む力”