ディズニー映画最新作「クルエラ」が5月27日に全国の劇場で公開され、5月28日にディズニープラス プレミアアクセスで配信スタートした。ファッションデザイナーを夢見る少女エステラは、なぜ破壊的かつ復讐心に満ちたクルエラへと変貌したのか? 「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンが主演した本作では、名作アニメーション「101匹わんちゃん」の悪名高きヴィランとして知られるクルエラの誕生秘話が描かれる。
映画ナタリーでは“楽器を持たないパンクバンド”として活動するBiSHのセントチヒロ・チッチとリンリンに、本作の感想を聞くインタビューを実施。不屈の反骨精神を持つクルエラとの共通点や、BiSHの活動を通じて見えてきた自分らしさについて語ってもらった。ファッションの魅力が詰まった本作のお気に入りの衣装や、服装のこだわりも明かしている。
取材・文 / 山里夏生 撮影 / 後藤壮太郎
衝撃的で爽快なストーリー(チッチ)
──先ほど本作をご覧になっていただいたばかりですが、いかがでしたか?
セントチヒロ・チッチ 面白かったです! 今回クルエラがどうしてクルエラになったのかを描く物語ということで、とても楽しみにしていたんです。昔のパンクシーンの描写があったり、衝撃的で痛烈なストーリーなんですけど、爽快な気持ちで観終わりました。
リンリン クルエラの執念がものすごく強いところが、ヴィランなのにかっこいいなって。舞台設定がロンドンのパンクシーン真っ盛りの1970年代というところもよかったです。
──気に入っていただけてよかったです! 印象的なシーンがあれば教えてください。
チッチ クルエラの表情がどのシーンも印象的でした。単純にハッピーだとか悲しいという顔じゃなくて、執念と寂しさが混ざったような表情がすっごくよくて。特に、彼女がある事実を知って噴水の前に行くシーンは「うわ! めっちゃいい顔してる」って驚きました。ボロボロになっていても美しかったです。
リンリン 私は、働いていた百貨店でお酒を飲んで歌ってるシーン。やけっぱちになって歌ってるんですけど、一瞬グッていう表情をしたところがあって、そこに気持ちが表れているなと感じました。
BiSHは何をしても受け入れてくれる(リンリン)
──クルエラに共感したポイントはありましたか?
チッチ “不屈の這い上がり精神”を持っているところが、BiSHに通じているなと思いました。BiSHもパンクバンドで、まだ全然勝っているわけではないんですけど、ずっと地を這いながらのし上がって来たんです。クルエラも仲間と一緒に這い上がって来た自分だけの道があるのが、めっちゃかっこよかったです。
リンリン 私はファッションもそうなんですけど、常に自分が正しいと思ったことを貫き通しているところです。クルエラのようになりたいなと思いました。
チッチ そうだね。私もBiSHに入った当初は、こうしたら“セントチヒロ・チッチ”としていいかもしれないとか、いい子でいなきゃいけないと思っていた時期があって、それにけっこう苦しんでいたんです。今では「猫を100匹被ってた」って表現しているんですけど(笑)。でも「嫌われてもいっか」と思えるようになってからは、本当の姿でいられるようになって。だからエステラを捨ててクルエラになったシーンでは、私が経験した気持ちと同じなのかなと思いながら観ていました。
──チッチさんはご自身とクルエラを重ね合わせながら観ていたんですね。
チッチ はい。やっぱり彼女が解き放たれたのは、ジャスパーとホーレスという仲間がいたからだと思うんです。私もBiSHのみんなが受け取めてくれたからこそ、今の自分がある。だからクルエラにとっての仲間というのは、彼女が自分らしく生きていくために大切なんだなと感じました。
──「101匹わんちゃん」にも登場するジャスパーとホーレスは、クルエラの仲間であり家族のような存在でしたね。
リンリン クルエラがジャスパーとホーレスに白黒の地毛を見せて「いいじゃん」となるシーンがあったじゃないですか。自分も昔、虫が大好きで集めていたんですけど「何それ」って周りから言われたんです。絵を描いたり、好きな服を着ていてもそういうことがいっぱいあって。でも、BiSHに入ってからは何をしてもみんな「めっちゃいいじゃん!」って受け入れてくれて、それが自分の自信にもつながっているんです。だから、あのシーンを観たときは「ああよかった!」とホッとしました。
チッチ BiSHのメンバーはみんな「ダメなことなんてないんだよ」って教えてくれるんですよ。すごく素直に生きてきた子たちなので、言葉にしなくてもそれを伝えてくれる。リンリンはありのままでいることが魅力的だとみんなわかっているから、家族みたいに受け入れて「そこが輝いてるよ」と言い合えるんです。
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どの衣装もリンリンに当てはめて観ちゃいました(チッチ)