韓国映画「コンクリート・ユートピア」特集|ぼる塾・田辺智加がラストに涙、自身の“極限状態”エピソードも

韓国映画「コンクリート・ユートピア」が1月5日に全国で公開される。

本作は、大災害により廃墟と化した韓国ソウルを舞台にしたパニックスリラー。唯一崩落しなかったマンション、ファングンアパートに集った生存者たちの争いが描かれる。臨時住民代表ヨンタクをイ・ビョンホン、マンションの住人で誠実な公務員ミンソンをパク・ソジュン、ミンソンの妻ミョンファをパク・ボヨンが演じたほか、キム・ソニョン、パク・ジフ、キム・ドゥユンらも出演した。

映画ナタリーでは、ひと足先に本作を鑑賞した韓国ドラマ好きで知られるお笑い芸人・ぼる塾の田辺智加にインタビューを実施。普段は“恋愛もの専門”の彼女が最後は泣いてしまったという本作の魅力や、自身が住民として生き残った場合の振る舞い、映画の設定にちなんだ“極限状態”エピソードを話してもらった。

取材・文 / 柴﨑里絵子撮影 / 間庭裕基

映画「コンクリート・ユートピア」予告編公開中

「あら~、もう終わった!」ってなりました(笑)

──韓国ドラマ好きとして知られる田辺さんですが、「コンクリート・ユートピア」はいかがでしたか?

それが、私は恋愛もの専門でして、例えば「私の名前はキム・サムスン」(2005年)や「コーヒープリンス1号店」(2007年)といった、10年以上前の韓国ドラマばかり観ているので、最近の作品にはそこまで詳しくないんです。コロナ禍のときに「愛の不時着」(2019年~2020年)や「梨泰院クラス」(2020年)が大流行していたじゃないですか? そのときも全然観ていなくて、最近やっと「梨泰院クラス」を観始めたところだったので、「コンクリート・ユートピア」にパク・ソジュンさんが出ているのを知って、楽しみ半分、怖さ半分の気持ちで観させていただきました。

ぼる塾・田辺智加

ぼる塾・田辺智加

──「コンクリート・ユートピア」のようなスリラーはほとんどご覧にならない?

スリラーやアクションものも観ないですし、暴力や怖い描写も苦手なんです。ですから、普段からこういったジャンルの作品を観ない私のような人間が、果たして最後まで観られるのかどうかドキドキしていました。でも、いつも観ているタイプの作品とは正反対だったので、どういうラストになるのか先が読めず、気になりながら観ていたら「あら~、もう終わった!」ってなりました(笑)。私は集中力がないので、家でオンラインなどで観たりしているとすぐに映像を止めて違うことをしたりしてしまうんですけど、映画館で観ると集中できるので、余計にあっという間でした。

──印象に残ったシーンや、アドレナリンが出るようなシーンはありましたか?

まず、学ぶことが多い作品でした。とんでもない状況で人々が助け合っている姿を観て、あの状況を自分に置き換えたときに果たして助け合えるのか? それとも生きることに必死になって暴走してしまうのか?など、いろいろと考えさせられました。でも、印象的なシーンで言うなら、パク・ソジュンさんが演じるミンソンが、妻のミョンファに「心配ない。何があっても僕が守るから」と言うシーンです。あそこは「あら~っ。あんな状況の中でも愛している人を安心させるために、余裕を持ってそんな言葉をかけられるなんて♡」と思って感動しました。

韓国映画「コンクリート・ユートピア」場面写真

韓国映画「コンクリート・ユートピア」場面写真

──キュンポイントをしっかりと拾っているあたり、さすがです。

いやあ、私、普段はそういう作品しか観ないので。この作品には恋愛要素が1つもないと思って観ていたので、「あった!」という喜びがありました。災害が物語の鍵になっていますが、一番怖いのは災害よりも人間だというのが恐ろしかったです。

私が物語に入り込むとしたら“主要キャラにはなれないモブキャラ”

──今作には、唯一崩落を免れたアパートの住民代表となるリーダーのヨンタク(イ・ビョンホン)、繊細だけどやがてヨンタクに傾倒していくミンソン(パク・ソジュン)、ミンソンの妻で優しい心の持ち主のミョンファ(パク・ボヨン)といったキャラクターが多面的に描かれていますが、もし田辺さんがあのファングンアパートの住民として生き残った場合、どのキャラクターに近いと思いますか?

私はですね……。誰にもなれません。リーダーとしてみんなを引っ張っていく力はないですし、愛する妻を守ると誓えるような誠実な人にもなれない。じゃあ、みんなで助け合おうとする正義感を持てるかといったら無理。私がこの物語に入り込むとしたら、言われたことにただ従うだけの、主要キャラにはなれないモブキャラだと思います。

韓国映画「コンクリート・ユートピア」より、イ・ビョンホン演じるヨンタク。

韓国映画「コンクリート・ユートピア」より、イ・ビョンホン演じるヨンタク。

韓国映画「コンクリート・ユートピア」より、左からミョンファ役のパク・ボヨン、ミンソン役のパク・ソジュン。

韓国映画「コンクリート・ユートピア」より、左からミョンファ役のパク・ボヨン、ミンソン役のパク・ソジュン。

──実際にああいう状況に置かれてみないと、自分がどういう振る舞いをするのかはわからないですよね。

本当にそうだと思います。ただ、私がもしあのマンションの住人だったら、外部の人は絶対にアパートには入れたくないです。だからといって、同じマンションの住人に食料を分けるというのもちょっと……。映画の冒頭のほうで、婦人会の会長のグメさん(キム・ソニョン)が、自分の家にあるみかんを住人に配ったりしていましたけど、私、彼女がみかんを配っているあのシーンを観たときに、もう自分は無理だと思いましたもん。

──無理というのは?

私だったら限られた食料を人にあげたりせず、自分で隠し持っていると思うんです。あんなふうにみんなに分け与えられないですよ。こういう作品というのは、だいたい誰かに当てはまって感情移入するものじゃないですか? でも、自分がこんなに誰にも当てはまらないことに驚きました。

ぼる塾・田辺智加

ぼる塾・田辺智加

──(笑)。でも、最初はその気がなくても、ヨンタクのように住民から「田辺さん!」「田辺さん!」と頼られたら、リーダーになるかもしれませんよ。

確かに! それはわからないですね。イ・ビョンホンさんって、普段は凛としたかっこよさがある方だと思うんです。それが、今作では最初のほうはどこか頼りないじゃないですか? イ・ビョンホンさんがああいう感じを出せるんだというのも新鮮でした。物語が進むにつれて、それぞれのキャラクターの内面に変化が現れてきますが、その変化を表現する役者さんたちの演技力も見どころだと思います。パク・ソジュンさんの変貌もすごかったです。

──最近「梨泰院クラス」を観始めたと最初におっしゃっていましたけど。

それが、(ぼる塾の)あんりも今作にめちゃくちゃ興味を持っていて、こういう作品だという話をしたら、「『梨泰院クラス』のパク・セロイ役のパク・ソジュンさんが出てるじゃない!」と言われまして。パク・ソジュンさん、今作ではまったく雰囲気が違っていますよね? そのおかげで、最初はまったく気付きませんでした。いやあ~、役者さんって本当にすごいですね。

ぼる塾・田辺智加

ぼる塾・田辺智加

──その完璧な役作りに加えて、迫力の映像にも圧倒されますよね。

あの映像もびっくりしました。災害に襲われるシーンとか、ものすごくてちょっと怖かったです。