北条司の大ヒットマンガ「シティーハンター」を日本で初めて実写化したNetflix映画「シティーハンター」が、独占配信されている。
令和の新宿を舞台にした本作では、裏社会でのトラブル処理を請け負う冴羽獠が、相棒・槇村秀幸の死を発端に、槇村の妹・香と出会うことから物語が展開していく。主演・鈴木亮平が超一流の腕を持ちながら美女の前ではだらしないスイーパー(始末屋)の獠に扮し、森田望智が香を演じた。
このたび映画ナタリーでは鈴木と森田、アニメ版で声優を務めてきた神谷明と伊倉一恵による座談会をセッティング。“相思相愛”で実現した実写版を観た神谷と伊倉が感じたこと、鈴木と森田が語った印象的なシーンとは。また獠、香を演じる際に意識したポイントを4人それぞれが明かしてくれた。
取材・文 / 小林聖撮影 / 曽我美芽
Netflix映画「シティーハンター」予告編公開中
父に一番うらやましがられました(森田)
──連載開始からもうすぐ40年を迎える人気作の日本初実写化ですが、キャストのお二人はオファーが来たときはどんなお気持ちになりましたか?
鈴木亮平 僕はいつか冴羽獠を演じられればと思っていましたが、いざ現実になってみるとすごくプレッシャーを感じました。自分だけの作品ではなく、みんなが愛している作品ですから。
森田望智 私は失礼ながら「シティーハンター(CH)」という作品を知らなかったんです。
鈴木 世代的にそうだよね。
森田 はい、テレビアニメ版のエンディングテーマ「Get Wild」は聴いたことがあったんですが。だから、決まったときは「Netflixの映画だ、うれしい!」って気持ちだったんですが、発表されると周りの人から「え! 『CH』!?」「香役!?」とすごい反響があって。父や母も原作やアニメに触れてきた世代なのでとても驚いていました。その反応を見て「とんでもない役をやろうとしているんだ」と、あとから事の重大さに気付きました。そこからはもうプレッシャーでした。
鈴木 お父さんお母さんはおいくつくらいなんですか?
森田 50代前半です。
神谷明 ドンピシャ世代だ。
森田 父に一番うらやましがられました、「いいなー!」って(笑)。
対談で話していたのが図らずも根回しのように(鈴木)
──神谷さん、伊倉さんは実写化のニュースを知ったときの感想は?
神谷 僕は亮平くんと初めて会ったときに「冴羽獠役をやりたい」という話を聞いていたので、「いよいよ来たか!」と。それからは、亮平くんがどんな獠を作ってくれるのかワクワクしながら待っていました。
伊倉一恵 私も(鈴木が獠を)やりたいというのは知っていたので……。
──みんな知ってるじゃないですか(笑)。
伊倉 私からすると、こっちが鈴木さんのファンだったから、「CH」ファンだって聞いて「えー! そうなんだ!」って(笑)。「あのスターが好きでいてくれたんだ!」とすごくうれしくて。それで、神谷さんに「会わせてほしい」って頼んだんです。
鈴木 もうだいぶ前ですよね。僕からすると、今こうして獠と香が隣にいるというのが不思議な感覚です。お母さんの声くらい刷り込まれてきた声なので(笑)。
伊倉 私もお会いしたときに獠をやりたいという話を聞いて、「いいじゃん! やって、やってー!!」って。だから、神谷さんと同じく「いよいよ来たか!」という気持ちでしたね。
──原作の北条司先生も「『CH』を実写化するなら(獠は)鈴木さん」とおっしゃっていたそうですし、始まる前から関係者公認のような状態だったんですね。
鈴木 対談企画なんかをいただいて誰とお話ししたいか聞かれると、「CH」関連の人ばかり挙げていたんです。それが図らずも根回しみたいに(笑)。
森田さんは香の複雑な心をデリケートに演じている(伊倉)
──相思相愛の実写化といったところですが、実際に作品を観ての感想は?
神谷 もうまさに新宿の街に獠と香がいるという感じでしたね。なるほど、これがアニメじゃない、リアルな「CH」の世界なんだ、と。
伊倉 うん。飲み屋さんに行けば獠がいるかもしれないって思うくらいでしたね。
鈴木 キャバレーに行けば踊ってるかもしれない(笑)。
伊倉 そうそう。本当に2人ともぴったりなキャスティングでした。香もかわいくて!
森田 ありがとうございます! 「香ちゃんはかわいいんです」って亮平さんが熱心に教えてくださったんです。「ハンマーを振り回したりするし、猪突猛進だけど、実はすごくかわいい子だから」と。
鈴木 森田さんに最初お会いしたとき、「香ちゃんってハンマーを振り回したりする子だから、やっぱり体大きくしないといけないですか?」と聞かれて(笑)。
一同 (爆笑)
鈴木 だから「香は誰よりもかわいくていいんだよ」って話をしました。
神谷 香って気は強いんだけど、芯はかわいいんですよ。だから、何をやっても許せちゃうし、危なっかしくて見ていられないという気持ちにもなる。
伊倉 しゃべるよりも先に体が動いちゃうという、そういうかわいさですよね。ほっとけない。森田さんの香は、そういうかわいい部分だらけだし、好きなところだらけなんだけど、何よりすごく丁寧ないい表情をしているんですよね。今作の香ってけっこう複雑な芝居をしなきゃいけないんです。
鈴木 香が一番難しいですね。
伊倉 作中でいろんな事件、危険なことが起こるわけですけど、それは獠にとって日常の延長線上なんですよね。もともとそういう仕事をしていたわけですから。でも、香にとってはそうじゃない。突然お兄さん(槇村秀幸)が死んで、感情が大きく揺れ動くんです。1人のときにはものすごく不安にもなるけど、獠には真相究明を頼みたいから強く出ないといけない。で、それを獠が突っぱねるでしょう?
鈴木 「帰って寝ろ、バカ」と。
伊倉 その突っぱね方もかっこいいんだけど、香はそれでも何とかしたい、1人でもやるんだって思いがある。その決意の表情なんか、すごくデリケートな芝居をされている。
もう次回作が観たい!(神谷)
──確かに今作は香の物語とも言えますね。
鈴木 原作では獠が槇村の仇討ちをする話なんですが、今回はより香と獠という2人の話になっています。香は、原作が描かれた当時から獠を制裁するような強い女性というイメージはありましたが、今の時代だったらより積極的に(兄の死の)真相を突き止めたいと自分から動いてもいいんじゃないか、と。そして、どうしてこの2人がCHになるのかが、戦いの中でも見えてくるようにしたかった。槇村(兄)とも阿吽の呼吸だったけど、香とは最初の戦いから息が合ったというような部分を見せたいと話していました。
伊倉 香は出たとこ勝負で失敗することも多いんだけど、最終的にはなんかうまくいくみたいなキャラクター。今回の作品でも、戦いの中で獠にプラン変更を伝えられてとりあえず「わかった!」って言うんだけど、全然わかってなかったりするでしょ?(笑) あの場面、素晴らしかった!
森田 あそこは、獠さんと香ちゃんが初めて一緒に戦って、CHとしての2人が生まれる場面なんです。戦いの中でも段階を踏みながらコンビになっていく様子に注目してほしいなと思っていました。
神谷 原作やアニメの「CH」でもおなじみの凸凹コンビが完成する前にこういう話があって、そこからさらに2人の絆が深まっていくというのが見えるんですよね。だから、今作が配信されたばかりですけど、もうこの先を観たくなる。どんどん息が合っていく2人の姿をもっと見たいと思っちゃいます。
伊倉 今作では出てきていない原作キャラクターもいますしね。
神谷 そう。早く次の作品を作ってほしい!
鈴木 いろんなところでそう言ってくだされば我々も(次回作を)作れる環境になるかもしれません(笑)。
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本心を表に出さないのが獠の色っぽさ(鈴木)