ハードボイルドと言われて思い浮かぶのは「シティーハンター」
──梶田さんが「シティーハンター」と出会ったのはいつ頃なのでしょうか。
自分は1987年生まれで、「シティーハンター」のアニメ放送開始と同じ年に生まれているんです。だからマンガやアニメに触れる年頃には、周囲の知人から聞かされたり、ケーブルテレビの再放送を観ていたりして自然と存在を認識していました。ですので、当然ながらリアルタイム世代ではないんですが、「シティーハンター」のいいところって基本的に1話完結なんですよね。おかげで、どこから観ても「シティーハンター」なんですよ。言ってみれば、時代劇に近い面があるんじゃないでしょうか。
──そのときは「シティーハンター」のどこに惹かれましたか?
当時は子供だったので、大人な雰囲気やアクションがカッコいいなと思っていましたが、今になって考えると「シティーハンター」の世界観ってフィクションレベルの調整が絶妙だったんだと思います。新宿を舞台にしたリアル風味の設定なのに、銃社会じゃない日本で当たり前に銃撃戦が行われていたり、強大な犯罪組織なんかもどんどん出てくる。そういった実社会にスリルをどっさり添加した“派手さ”が子供心にグッときたのもありますし、冴羽獠のような強くてカッコいい大人に憧れを抱かせてくれる作品だったんですよね。
──なるほど。作品から影響されたことがあれば教えてください。
自分にとって「シティーハンター」は“ハードボイルド”と聞いて真っ先に思い浮かぶ作品です。ガチガチではなくコメディ色も強い作品ですが、例えば冴羽獠のキャラクター性として普段はスケベなお調子者なのに、仕事となると冷静沈着なプロフェッショナルの本性を出してくるじゃないですか。そのギャップにシビれるんですよね。男たるもの、こういった説得力のある二面性で魅力を演出したいものです。……あと、実はこの時代のファッションというか、冴羽獠の赤シャツにジャケットというスタイルにも憧れがあるんですよ(笑)。
──いいと思いますよ!
駄目でしょ(笑)。このファッションをカッコよく見せられるのは地球上で冴羽獠だけです!
海坊主はハゲキャラの大先輩
──似ていると言われることも多いかと思うのですが、梶田さんにとって海坊主はどんな存在ですか?
特にメディアに出るようになってから、そう言われることが増えましたね。でも、自分からしたら「いやいや、海坊主に失礼だろ」っていう気持ちなんですよ。
──えっ!? どういうことでしょうか。
スキンヘッドにグラサンで口ひげの大男。確かに記号だけ見れば似ていると思われるかもしれないんですが、海坊主はもっと“スゴい”んです。例えば筋肉量、自分も筋トレをやるのでわかるんですが、海坊主のガタイって日本人としてはありえないレベルの仕上がりなんですよ。筋肉って身長が高いほど太くなりにくいという面もありますし、それを知ったうえだと海坊主のあのデカさには畏敬の念を抱くばかりです。フィクションだからと言われればそれまでなんですけど、ハゲキャラの大先輩だからこそ「いやいや、自分などまだまだ……」という気持ちになっちゃうんですよ(笑)。
──なるほど(笑)。ほかに海坊主との共通点はありますか?
海坊主って、実は見た目ほど豪放磊落な性格じゃないんですよね。強い男であることには違いないのですが、あんな見た目で照れ屋ですし、自分の本心をストレートに伝えるのも苦手だし、実は繊細で不器用なめんどくさい奴なんです。共通点というよりは、そういった人間臭さに強く共感しますね。……あと、自分は猫アレルギーです。
──猫が苦手な海坊主と通じますね。
海坊主と違って、猫そのものは好きなんですけどね。アレルゲンには勝てない……。あと、意外とビジュアル面で子供ウケがいいところも近いっちゃ近いのかなあ……。まあ、男の子はみんなグラサンとかハゲとかマッチョが好きですよね。……よね?
カムバックした冴羽獠。変わらぬヒーロー像に期待
──テレビシリーズで好きなエピソードはありますか?
印象的なのは、最初期に海坊主が活躍した「純情足ながおじさん」の回(「シティーハンター」第27・28話「獠と海坊主の純情足ながおじさん伝説」)ですね。好きなシーンがあって、海坊主がスネークに背中を撃たれるんですけど、ちょっと力んだら筋肉が盛り上がって弾がプンッって飛び出すんです。しかも、そこで「奴は女を撃つために38口径しか持って来なかった。俺の筋肉は38口径など通さん!」って言うんですよ。そんなバカな(笑)。でも、それに説得力を持たせちゃうのが海坊主の、ひいては「シティーハンター」という世界観のすごさなんです。
──確かにインパクトの強いシーンが多い気がします。では、好きな「シティーハンター」のオープニング、エンディング曲がありましたら教えてください。
やっぱり最初期のオープニング「City Hunter~愛よ消えないで~」と、エンディング「Get Wild」ですね。自分が再放送で観ていた時期がちょうどこのへんですし、歌詞と曲調も「シティーハンター」の世界観にもっともマッチしている気がします。いまだにオーディオプレイヤーでは再生リストの上位で、よく聴いていますよ。
──バブル期のトレンディな雰囲気も魅力ですよね。
こんな時代に生きてみたかったですね。バブル期って、男も女もめちゃくちゃエネルギッシュじゃないですか。一方で、自分が経験してきた青春というのが「シティーハンター」ってよりも「新世紀エヴァンゲリオン」。まあそれはそれで、自分自身というものに深く向き合えたとは思うんですけれども。バブルとは大違いの閉塞感に満ちた息苦しい社会でした。フィクションとしてしか知らないので、好景気とかバブルファッションとか、やたらと憧れますねえ。
──今回公開される「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>」ですが、ここに注目したいというポイントはありますか?
2019年の新宿が舞台であるというのがポイントじゃないでしょうか。当時から変わらぬメンツが現代社会で活躍するんですから、ワクワクしないわけがない。ご丁寧に、ファッションまでそのまんま(笑)。予告編でドローンなんかも登場していて、激しい近代戦が繰り広げられそうなのに冴羽獠の愛銃が変わらずコルト・パイソン357っていうのもシビレる要素です。もう骨董品ですよ? そんなハンデも、きっと卓越したスキルでなんとかしちゃうんでしょうね。カムバックした冴羽獠が現代においても変わらぬヒーロー像を見せてくれるのか、いちファンとして大いに期待したいです。
- 「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>」
- 2019年2月8日(金)全国公開
- ストーリー
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裏社会ナンバーワンの腕をもつシティーハンター冴羽獠と、彼の相棒・槇村香が営む事務所に、モデルの進藤亜衣からボディガードの依頼が舞い込んできた。一方、海坊主と美樹は傭兵が新宿に集結するという情報を入手するが、傭兵たちの狙いはなんと亜衣だった……。巨大な陰謀を前に、獠は亜衣と新宿を守りぬくことができるのか!
- キャスト
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冴羽獠:神谷明
槇村香:伊倉一恵
進藤亜衣:飯豊まりえ
御国真司:山寺宏一
野上冴子:一龍斎春水
海坊主:玄田哲章
美樹:小山茉美
ヴィンス・イングラード:大塚芳忠
コニータ:徳井義実(チュートリアル)
来生瞳・来生泪:戸田恵子
来生愛:坂本千夏
- スタッフ
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原作:北条司
総監督:こだま兼嗣
脚本:加藤陽一
チーフ演出:佐藤照雄、京極尚彦
キャラクターデザイン:高橋久美子・菱沼義仁
総作画監督:菱沼義仁
美術監督:加藤浩(ととにゃん)
色彩設計:久保木裕一
撮影監督:長田雄一郎
編集:今井大介(JAYFILM)
音楽:岩崎琢
音響監督:長崎行男
音響制作:AUDIO PLANNING U
アニメーション制作:サンライズ
配給:アニプレックス
- アニメ「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>」公式サイト
- アニメ「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>」公式 (@cityhuntermovie) | Twitter
- 「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>」作品情報
©北条司/NSP・「2019 劇場版シティーハンター」製作委員会
- マフィア梶田(マフィアカジタ)
- 1987年10月14日生まれ、中国・上海出身。フリーライターとして、ゲームサイト「4Gamer.net」や声優情報誌などで記事を執筆している。また「杉田智和のアニゲラ!ディドゥーーン」「RADIO 4Gamer」などでラジオパーソナリティとしても活躍。そのほか「シン・ゴジラ」に出演するなど俳優としても活動の場を広げている。