「ちょっと今から仕事やめてくる」福士蒼汰×工藤阿須加|監督の愛あふれる演出で成長!役と向き合った6カ月間

北川恵海による小説を「ソロモンの偽証」2部作の成島出が映画化した「ちょっと今から仕事やめてくる」が、5月27日に公開される。本作は、ブラック企業に勤める青年・青山隆と、彼の前に現れた謎の青年・ヤマモトを軸にした人間ドラマ。いつも笑顔を絶やさないヤマモトを福士蒼汰、上司のパワハラによって心身ともに疲弊した青山を工藤阿須加が演じた。

映画ナタリーでは福士と工藤にインタビューを実施。クランクインの5カ月前から忙しい合間を縫って重ねられたリハーサルにまつわるエピソードや、2016年8月から9月にかけて日本とバヌアツ共和国で行われた撮影の思い出などを語ってもらった。

なお音楽ナタリーでは、主題歌を担当したコブクロと、福士、工藤の座談会の模様が近日公開される。

取材・文 / 秋葉萌実 撮影 / 日吉永遠

ヤマモトは自分とはかなり違うテンション(福士)

──原作は第21回電撃小説大賞のメディアワークス文庫賞を受賞した小説です。もともとご存知でしたか?

福士蒼汰

福士蒼汰 自分は出演が決まってから読ませていただきました。

工藤阿須加 僕はたまたま実家に原作本があったので、お話をいただく前に読んでいました。

──福士さんはアロハシャツを着ている謎の男ヤマモト、工藤さんは強いストレスを抱えるサラリーマンの青山をそれぞれ演じましたが、原作や脚本を読んだ段階では自分が演じるキャラクターについてどのような印象を抱きましたか。

福士 ヤマモトは非常に明るくて、普段の自分とはかなり違うテンションだなと。いろんな思いがあったうえで明るく振る舞っている人物なので挑戦のしがいがある役だと感じました。

工藤阿須加

工藤 青山を演じるにあたっては、彼自身だけじゃなくて、彼に関わる会社の人たちや家族などみんなの思いも背負ったうえでこのキャラクターと向き合っていかなきゃいけないなと思いました。

福士くんの大阪弁が懐かしく感じた(工藤)

──福士さんは大阪弁を話す役というのが新鮮でした。撮影前にはかなり練習されたのでは?

「ちょっと今から仕事やめてくる」より。

福士 かなり苦労しました! 大阪弁の指導に烏龍パークの加藤康雄さんという芸人さんがついてくださったので、大阪弁で脚本をひと通り読んだり雑談してみることを通して感覚をつかんでいって。周りが関西出身の方ばかりだったときは、自分も少し関西弁が出ちゃうこともありました。

──撮影前にはやすし・きよしさんのDVDを観て勉強されたそうですね。

福士 監督に薦められたんです。方言のイントネーションというよりは関西の方のノリや、ボケとツッコミのやり取りの感じ、やすしさんの孤独さやはかなさ、悲哀を理解してほしいという意向があったそうです。

「ちょっと今から仕事やめてくる」より。

──そんな福士さんの大阪弁に、工藤さんは思わずつられてしまったことは?

福士 なかったですよね?

工藤 まったくなかった(笑)。僕は大阪に少し住んでいたことがあって、関西弁にはなじみがあります。現場では、福士くんが大阪弁を話しているのを聞いて懐かしく感じることがありました。

成島組は演出の細やかさがすごい(福士)

──お二人の軽妙な掛け合いが印象的でしたが、作品自体は長時間労働、パワハラ、自殺と重いテーマを扱っていますよね。「ヤマモトは一体何者なのか?」というミステリー要素もありました。撮影の5カ月前から定期的にリハーサルを重ねたと伺いましたが、監督から「こう演じてほしい」というオーダーはありましたか?

福士 最初はとりあえず僕たちに任せてくれたんですが、演じたあとに登場人物のセリフの裏にある感情を1つひとつ確認されて。監督は「これ、青山としてはどうなの?」「ヤマモトにはこんな目的があるんでしょ? じゃあこうするんじゃない?」とアドバイスをくださいました。リハーサルの回数を重ねてからは「こういう気持ちなんでしょ? じゃあやってみて」と試されるようになって……。

──そこまで細かくリハーサルを重ねることは、ほかの現場でもあったのでしょうか。

福士 これまでにも経験はあったんですが、成島組は細やかさがすごかったです! 自分の未熟さゆえに監督に細かい指導をさせてしまったなという思いはありますし、僕を役者として育ててくれた成島監督にはお礼を言っても言い切れないです。今度(成島の)作品に出たときは僕が監督を助けられるようになっていたいです。

左から福士蒼汰、工藤阿須加。

工藤 今回は自分のつたなさを感じました。でも監督から「小細工するな。今は下手でもいいんだ。だから、阿須加はズドンとストレートを投げ込め」と愛のある言葉をいただいて。それがすごく響きました。

──リハーサルを経て、撮影に入ってからも演技については綿密に話し合いを重ねたんですか?

工藤 本番直前まで、さまざまな話し合いをしていました!(笑)

福士 本番のときも一度撮ったあとに「もう1回!」と言われて、そこからガラッと芝居の内容が変わったことがありました。

工藤 リハーサルでやっていた演技と、「用意、スタート」で本番後の演技がまるで違うことはよくありましたよね。

音楽ナタリー Power Push 「ちょっと今から仕事やめてくる」コブクロ×福士蒼汰×工藤阿須加 座談会
「ちょっと今から仕事やめてくる」
2017年5月27日(土)全国公開
「ちょっと今から仕事やめてくる」
ストーリー

ブラック企業で働く青山隆は、疲労のあまり駅のホームで意識を失い電車にはねられそうになったところを謎の青年・ヤマモトに助けられる。青山はこの出会いをきっかけにヤマモトと親しくなり、彼からアドバイスをもらうことで仕事の成績が徐々に上がっていく。そんな折、青山は深刻な顔をして墓地へ向かうバスに乗るヤマモトの姿を見かけ……。

スタッフ / キャスト

監督:成島出

出演:福士蒼汰、工藤阿須加、黒木華、小池栄子、吉田鋼太郎ほか

原作:北川恵海「ちょっと今から仕事やめてくる」

主題歌:コブクロ「心」

福士蒼汰(フクシソウタ)
1993年5月30日生まれ。東京都出身。2011年に「仮面ライダーフォーゼ」で初主演を務めて注目を集める。その後はNHK連続テレビ小説「あまちゃん」や「図書館戦争」シリーズ、「ストロボ・エッジ」「無限の住人」など話題作に立て続けに出演した。公開待機作には「曇天に笑う」「BLEACH」「旅猫リポート」「ラプラスの魔女」がある。
工藤阿須加(クドウアスカ)
1991年8月1日生まれ。埼玉県出身。2012年にドラマ「理想の息子」で俳優デビュー。2014年には「百瀬、こっちを向いて。」「1/11 じゅういちぶんのいち」での演技が評価され、第24回日本映画批評家大賞の新人男優賞を受賞した。映画出演作は「アゲイン 28年目の甲子園」「夏美のホタル」「恋妻家宮本」。
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2017年6月5日更新