これ、白倉先輩の思惑通りだ(塚田)
──今回はレジェンドプロデューサー座談会ということで、平成仮面ライダーでプロデューサーを務めてきた皆様にお越しいただきました。まずは、白倉伸一郎さんと武部直美さんが手がけている平成ライダー第20作「仮面ライダージオウ」テレビシリーズについて伺います。歴代レジェンドライダーの方々の出演で毎週話題を集めていますが、反響や手応えはいかがですか。
白倉伸一郎 やはりレジェンドに対する反響が非常に大きいですが、「こんな扱いしやがって」「なんでこの人が出ないんだ」といった、お叱りの声も多いです。悪評も評判のうちと言いますか、それだけ注目してくださっているんだと思うようにしていますが(笑)。出演するレジェンドの発表や、最新話の予告編を出すと、爆発的な反応が来る。改めてレジェンドの方々の愛され方を突き付けられていますね。
武部直美 キャスティングにあたっては、レジェンドキャストの方々に「『仮面ライダージオウ』とは?」ということをイチから説明したうえで、その方が1年かけて作ったものに恥じない登場を提案しないといけません。「仮面ライダーディケイド」のようにレジェンドキャストに触れないというやり方もあったと思います。でもやっぱり皆さんが喜んでくださるので、この形にしてよかったですね。想像以上に「出ます!」と言ってくださる方々が多く、撮影も楽しんでくれています。作る側にとっても、現場に“レジェンドが帰ってくる”のはすごいイベントなんですよ。
白倉 現場の士気やテンションが上がるのはいいですよね。レジェンドキャストご本人もそうですし、それを迎える「ジオウ」レギュラーキャストたちもそう。そのおかげで現場の温度が上がっている気がします。
──塚田さん、大森さんから観た「ジオウ」の印象はいかがですか?
白倉 そもそも観てくれているのか?って不安がある(笑)。
武部 ドキドキ。
塚田英明 うちの子供が「ジオウ」を観て、仮面ライダー全集を引っ張り出しては、自分が前に観ていたライダーや、もっと前のライダーを調べているんです。「仮面ライダー555」の頃はまだ生まれてなかった子供が、興味を持っているのを見ると「あれ、これ白倉先輩の思惑通りだ」と思いましたね。平成ライダーが好きな人はもちろん、過去の作品に興味はあるけど取っ掛かりがなかった、という人も楽しめる番組なんだと思います。
大森敬仁 僕は「仮面ライダービルド」を担当していた関係で、今回の映画にも参加させてもらいました。夏映画(「劇場版 仮面ライダービルド Be The One」)の頃から白倉さんにはちょくちょく話を聞いていたんですけど、全然決まらないからこっちは大混乱でした(笑)。
武部 「ビルド」最終回と「ジオウ」のすり合わせも必要だからね。
大森 でも「ジオウ」はパラレルワールドのようなものなので、気にしすぎると「ビルド」も難しくなってしまうと思って、最終的に考えすぎないようにしました。「ジオウ」の1・2話はビルド編、3・4話はエグゼイド編だったんですが、4話まで脚本を読んでようやく「こういうことなのか」と理解しましたから(笑)。去年や一昨年の冬映画でも、僕はわりと前作の歴史に合わせて作ってしまうところがあるので、「ジオウ」のように世界をまったく変えるのは面白いし、僕にはできないなと思います。
出物やレジェンドのスケジュールとにらめっこ(白倉)
──仮面ライダーディケイド / 門矢士役の井上正大さんは、「ジオウ」への出演情報が解禁になった際に「けっこう前から決まってたんだよね」とおっしゃっていました。レジェンドの出演は、どれくらい前から仕込むものなのでしょうか?
白倉 大人の事情で、人やキャラクターによるんですよね。僕らが“出物”と呼んでいるライドウォッチなどの商品化スケジュールや、レジェンドの方々のスケジュールとにらめっこしながら決めています。「どうしてもこの方に出演していただきたい」と言って出物の登場順を変えてもらうこともありますし、井上さんに関しては(仮面ライダージオウ)ディケイドアーマーを12月の大きな売りにしたいという思惑があったので、前々から「この時期のスケジュールはどうですか」と探りを入れていました。(仮面ライダーゴースト / 天空寺タケル役の)西銘駿さんに関しては、「時期的に13・14話あたりしか撮影に参加できない」ということがわかっていたけど、ゴーストウォッチをそこまで温存しておくには無理があったし、ディケイドアーマーの登場時期とかぶってしまう問題があった。だから(仮面ライダー)ゲイツがゴーストウォッチを最初から持っていることにして、その謎があとで解き明かされる仕組みにしよう、と。
──お忙しいレジェンドの方々を、ただ捕まえればいいというわけでもないんですね……。
白倉 そうですね。本当に皆さんお忙しいので、折り合いがつかなくて断念することもありますし。
武部 あるいは、スケジュール的に1日しか撮影に参加できないという理由で脚本を変更したこともあります。
──テレビシリーズにレジェンドを出す際は、白倉さんが各作品のプロデューサーに前もって取材されているそうですね。例えば5・6話のフォーゼ編では塚田さんに相談されたのでしょうか?
白倉 聞いたんだけど、よくわかんないんだよね。
塚田 台本を送ってもらったので、「この頃の如月弦太朗はこうなっている設定です」と監修したんですけど、白倉さんに「いやいや違うんだよ。これは仮面ライダーがいなかった世界のキャラの、現在じゃなくて未来の話だから」って言われて、逆にわからなかった。
一同 (笑)
塚田 そのときはまだ1話も完成していなかったので、観れていなくて。
白倉 いきなり5・6話の台本読んでも、さっぱりわからないよね。
塚田 僕も大森と同じで、4話くらいまで観てやっとわかりました。まあそういう感じで、ヒアリングされたということは保証しておきます(笑)。
大森 3・4話のエグゼイド編は、脚本で読んだときと映像で観たときの印象が違いましたね。3・4話って説明に偏りがちなんですが、中澤祥次郎監督が全部画で見せてくれたので、すごいなと思いました。
武部 理屈がわからなくても楽しめる……を目指しているんですよね? ぼんやり程度の理解だとしても、楽しんでもらえればいいやと。
白倉 理屈はあるんだけど、絶対にわからないと思っているんです(笑)。
ビルド編では犬飼くんから相談を受けていた(大森)
──レジェンドを登場させるのに、特に苦労した回を挙げるとしたらいかがでしょう。
白倉 我々というよりも、キャストの方々が苦労されたのはビルド編じゃないですかね。「ビルド」本編のクライマックスとほぼ同時期に撮っていたんですが、キャラの設定が微妙に異なる。シーンごとに「ここは桐生戦兎」「ここは葛城巧」という違いがあるだけじゃなく、「『ビルド』劇中とは違う歴史を歩んでいる葛城巧で……」とか、「1年前の桐生戦兎で……」とか。それって、全然違う役を同時期に演じるよりもかえって難しいし、精神的な負担もあったんじゃないのかな、と。しかも「ビルド」的には大事な最終ラインの撮影中なので、犬飼(貴丈)さん、赤楚(衛二)さんにはご負担をかけました。
──犬飼さんたちに取材した際、「ビルド」第48話の氷室幻徳が死んでしまうシーンと、「ジオウ」ビルド編でツナ義ーズファンとして浮かれているシーンを同じ日に撮影したとおっしゃっていました。
一同 (笑)
白倉 メンタル的にキツいですよね。
大森 犬飼くんから、「ジオウ」の設定について「どういうことなんですか?」とずっと相談を受けていたんですよ。「俺にもわからない」と思っていたところに田﨑竜太監督が「これはモノマネ歌番組。モノマネ芸人が歌っていたら、後ろからご本人が登場するんだよ!」と説明してて。
武部 ジオウが気持ちよくビルドのモノマネして歌っていたら、後ろから本物のビルドが来た!みたいな。
大森 犬飼くんはそれを聞いて「ああ、わかりました!」って。僕はよくわからなかったんですけど(笑)。
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打ち合わせは、気付いたら7、8時間経っていた(武部)
2018年12月28日更新