2017年12月22日より配信されているNetflixオリジナル映画「ブライト」。
本作は「エンド・オブ・ウォッチ」「フューリー」のデヴィッド・エアーがもう1つの世界の米ロサンゼルスを舞台に贈るファンタジーアクションだ。「スーサイド・スクワッド」でもエアーとタッグを組んだウィル・スミスが人間の警官を演じ、「ラビング 愛という名前のふたり」のジョエル・エドガートンが特殊メイクで怪物オークの警官に扮している。
映画ナタリーでは、本物の不良を起用した自主制作映画で話題を呼び2017年11月に「全員死刑」で商業映画デビューを果たした小林勇貴と、同作のプロデューサーであり監督、特殊メイクアップアーティストとしても活躍する西村喜廣の対談をセッティング。過激な作風で日本映画界に旋風を巻き起こす“逆徒(反逆者の意)”2人に「ブライト」の感想を語ってもらった。
取材・文 / 平野彰 撮影 / 入江達也
キャラクター紹介
ファンタジーが好きな人はすんなりと入っていける(西村)
──「ブライト」は一種のバディムービーです。小林監督と西村監督は「全員死刑」「ヘドローバ」で監督とプロデューサーとしてコンビを組まれた、いわば“バディ”ですよね。また、「ブライト」の監督デヴィッド・エアーはロサンゼルスの犯罪多発地域でアウトローに囲まれて育ったということもあり、本物の不良を起用して映画を作ってきた小林監督とも共通点があるのではないかと思いました。そんなわけでお二人に「ブライト」をご鑑賞いただいたわけですが、いかがだったでしょうか。
小林勇貴 一番初めに、壁画みたいなのが出てくるじゃないですか。
西村喜廣 壁画って(笑)。落書きでしょ? グラフィティアートか。
小林 そうです、グラフィティアート(笑)。あれを使って物語の前提を説明していて、そういうやり方があるんだと思いました。あと思い出したのは、川崎の友達のところに遊びに行ったときのこと。棒人間がこんな感じで(身振り手振りを交え)壁という壁に描かれていて、「我々はここでこの者たちと戦った」と後世に伝える壁画みたいに見えた。そのとき「恐ろしい!」と戦慄したんですよね。
──西村監督はいかがでしたか?
西村 設定が突拍子もないから、世界観を理解するのにはちょっと時間がかかりました。でも「ファイナルファンタジー」とか「ロード・オブ・ザ・リング」をよく知っているような、ファンタジーが好きな人はすんなり入っていけるのかもしれないですね。
──バイオレンスのイメージが強いお二人ですが、ファンタジー作品はよく鑑賞されるんでしょうか。
西村 僕は観ますよ。超観てます。
小林 例えばどんな作品ですか?
西村 それこそ「ロード・オブ・ザ・リング」とか。
小林 俺も「ロード・オブ・ザ・リング」は観てます。ファンタジーなら、ギレルモ・デル・トロの映画も好きですね。
西村 「ブライト」は途中でドラゴンが出てくるよね。夜景のシーンでドラゴンが飛んでる。
小林 ドラゴンが飛んでるっていうことは映画の中では事件にならないんですよね(笑)。でかい鳥が飛んでるなー、ぐらいの感じで。
西村 気になったのは、いつからこういう世界になったのかなってことだな。
小林 そこはつかみかねましたね。
──何千年も前に各種族は敵対していたけど、今は一応共存していて、エルフが階層の一番上にいるということになっています。そして、エルフ、人間、オークの階層構造が現実社会の人種差別のメタファーになっているようです。
小林 現実社会の黒人が、この映画では青い人たち(オーク)になってるってことですよね。
西村 初期のバディものって白人と黒人が出てきて、2人の人間が人種の違いを乗り越えていくというリアルなテーマがあったと思うんです。「ブライト」ではそれにファンタジーがミックスされて、人間とオークの関係性が描かれる。そのあたりはバディものとして新しいですね。リアルなんだけど同時にファンタジーでもあるという。
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メイクは相当作り込まれている(西村)
- Netflixオリジナル映画「ブライト」
- 配信中
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- ストーリー
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人間やオーク、エルフなどさまざまな種族が共存する、もう1つの世界のロサンゼルス。人間の警官ダリル・ウォードは、最下層の種族であるオークから初めて警官になったニック・ジャコビーと嫌々コンビを組んでいる。ある日ウォードとジャコビーは、むごたらしい死体の残る異様な犯罪現場に遭遇。恐怖に震えるエルフの少女ティッカと、魔法の杖(ワンド)を見つける。どんな願いも叶える力を持ち、使い方によっては世界を滅ぼしかねないワンドは、選ばれし者“ブライト”だけが使えるとされるアイテム。悪用されることを恐れたウォードとジャコビーはワンドを持ってティッカとともに逃走するが、人間のストリートギャング、警察に恨みを持つオークたち、そしてエルフの邪悪な異端集団インファーニが3人に襲いかかる。
- スタッフ
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監督:デヴィッド・エアー
脚本:マックス・ランディス - キャスト
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ダリル・ウォード:ウィル・スミス
ニック・ジャコビー:ジョエル・エドガートン
レイラ:ノオミ・ラパス
ティッカ:ルーシー・フライ
カンドミア:エドガー・ラミレス
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Netflixは、190カ国以上で1億900万人超のメンバーが利用する、エンタテインメントに特化した世界最大級のオンラインストリーミングサービス。アワード受賞作を含むオリジナルコンテンツ、ドキュメンタリー、長編映画など、1日あたり1億4000万時間を超える映画やドラマを配信している。メンバーはあらゆるインターネット接続デバイスで、好きなときに、好きな場所から、好きなだけエンタテインメントを楽しむことが可能。広告や契約期間の拘束は一切ないうえ、Netflix独自のレコメンデーション機能が1人ひとりのメンバーの好みに合わせて作品をオススメするため、お気に入りの作品が簡単に見つかる。
- 小林勇貴(コバヤシユウキ)
- 1990年9月30日生まれ、静岡県富士宮市出身。デザイン会社で働きながら自主映画「TOGA」「絶対安全カッターナイフ」を制作し、動画サイトに投稿する。第3作「Super Tandem」がPFFアワード2014に入選。「NIGHT SAFARI」でカナザワ映画祭2014のグランプリを受賞し、「孤高の遠吠」でゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016オフシアター・コンペティション部門のグランプリを獲得する。本物の不良をキャスティングした暴力的かつユニークな作風で注目を集め、2017年3月には「逆徒」を発表。同年11月、間宮祥太朗が主演を務め、西村喜廣がプロデューサーとして参加した「全員死刑」で商業映画デビューを果たす。12月には西村と再びコンビを組み「ケータイで撮る」映画シリーズ第1弾「へドローバ」を発表した。
- 西村喜廣(ニシムラヨシヒロ)
- 1967年4月1日生まれ、東京都台東区出身。学生時代から自主映画を制作し、「限界人口係数」でゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭'95のオフシアター・コンペティション部門審査員特別賞を受賞する。その後多くの映像作品で特殊メイクや特殊造型を担当しながら、「東京残酷警察」「ヘルドライバー」などを監督。2012年にはナチョ・ビガロンド、井口昇、アダム・ウィンガードらとともにホラーアンソロジー「ABC・オブ・デス」に参加した。近年は実写映画「進撃の巨人」や「シン・ゴジラ」で特殊造形プロデューサーを務めつつ、「虎影」「蠱毒 ミートボールマシン」を監督。2017年には小林勇貴の「全員死刑」「ヘドローバ」をプロデュースした。特殊メイクや特殊造型を手がける西村映造の代表取締役。