映画ナタリー Power Push - 「ブラック・スキャンダル」
3悪童の密約が描く、悪と破滅の美学
ジョニー・デップ、ベネディクト・カンバーバッチ、ジョエル・エドガートン──。豪華キャストで贈るクライムサスペンス「ブラック・スキャンダル」が1月30日に公開される。実在する極悪非道な犯罪王の半生を描いた全編緊迫の本作は、悪の魅力であふれている。ギャング×政治家×FBI。“三人寄れば文殊の知恵”とは言うが、頭がキレキレの3悪童が出した知恵は、おぞましいものだった。
映画ナタリーでは、数々の映画やドラマで悪役を演じてきた小沢仁志と山口祥行、本宮泰風の座談会を実施。「ブラック・スキャンダル」の感想と悪の魅力について語ってもらう。さらに、米国を震撼させた史上最大のスキャンダルを描いた本作の見どころを探る。
取材・文 / 下森宏益 撮影 / 杉映貴子
骨太な映画、役者たちのヒリヒリするような芝居に魅せられた(小沢)
──「ブラック・スキャンダル」の感想から聞かせてください。
小沢仁志 骨太な映画だった。最近のギャングやマフィア映画って骨太な作品が少ないから、久々に楽しめたよ。実在の人物を描いた実録もので、エンタテインメント性が薄いから重いけど、役者たちのヒリヒリするような芝居に魅せられた。
山口祥行 兄ぃ(小沢)が言ったように骨太な作品。一般人がわからないディープな世界を丁寧に描いてもいる。それから、やっぱりみんな裏切るんだってね(笑)。最後まで裏切らないのがFBIのジョン・コノリー(ジョエル・エドガートン)だけってのも面白かったよ。
小沢 裏切りが連鎖していくんだよな。ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャー(ジョニー・デップ)もそうだけど、往々にして、トップに立ってる男は恐怖で人を縛り付けてるところがあるじゃない。その恐怖から解放されたいって思いがマックスまでくると、裏切るんだよ。
本宮泰風 俺はハーヴェイ・カイテルが好きなんですけど、コノリーを見て、若いときの彼にそっくりだなあって。コノリーは自己保身のために裏切らないのか、バルジャーに対しての情があって裏切れないのか……。どっちなんだってね。
──幼なじみの絆、バルジャーへの憧れがあったのでは?
小沢 たしかに。子供の頃の誓いや絆みたいなことにこだわってたよな。復讐心はないと思うんだけど。結果、バルジャーは終身刑だし。終身刑2回、プラス5年!
山口 それ好きですよね? さっきからずっと言ってるし。
小沢 3人で話してたんだよ。刑務所の中で2回生まれ変わって、5年の後にようやく出所できんだろ。すごいよなって(笑)。
──気になったシーンはありますか?
小沢 バルジャーのボディガードが敵のマフィアを殴ってるシーン、あれはよかったな。リアルな感じがいいよ、形として。どうやって殴ってんのかなとか、打たれる側の殴られ方とか気になった。生っぽいねえ。
山口 母親の葬儀のシーンなんかもそうだけど、黒い社会にスポットを当てた作品の中で、ヒューマニズムの部分もしっかり描いてた。ジョニー・デップが出てるっていうとエンタメ性を期待しちゃうんだけどね。
本宮 自分が思っていたほど全体的に派手さはなかったけど、そこがいいんですよね。リアルさを引き立てている。
小沢 あと俺はビリー(ベネディクト・カンバーバッチ)がかわいそうでしょうがねえよ。映画のコピーに「みんなワル!」って書いてるけど、あいつは悪くはねえだろ。なんかカズ(小沢の弟・小沢和義)とダブるんだよな。俺のせいで弟は──みたいなさ。
一同 (爆笑)
山口 あとジョニー・デップは悪いヤツなのに、正義を貫いてる検事のほうが嫌なヤツに見えてくるという。
──ジョニー・デップの邪魔をするな!みたいな?
山口 そうそう、そういう感じ。
小沢 悪サイドの視点で描かれてるからそうなるんだよな。
本宮 そこがやはり実録ものなんですね。
小沢 観る前は「ジョニー・デップのヅラ、大丈夫か?」なんて思ってた。でもだんだんとなじんでくるんだよ。ヅラだとわからないほどで、特殊メイクはかなり優秀だよ。実在のバルジャーとよく似てたしな。
山口 (額に指を当てて)この辺りからヅラを被ってるんじゃないですかね?
小沢 眉頭あたりからしてんじゃねぇか? 外国人は顔の彫りが深いから、うまくできそうじゃん。
本宮 気になってますね。これでまた小沢仁志の変装願望に火が付いた?
小沢 ふざけんなよ! もう何度もやってんだぜ、俺は。白髪でロン毛のかつら被ったりさ。あのときは、これから俺は笑い者になんのかと思ったよ(笑)。
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- Contents Index
- 小沢仁志×山口祥行×本宮泰風インタビュー
- キャラクター&作品紹介
「ブラック・スキャンダル」
1975年、米国サウスボストン。通称“サウシー”。マフィア排除に取り組むFBI捜査官のジョン・コノリーは、イタリア系マフィア“アンジュロ・ファミリー”と抗争を繰り広げる“ウィンターヒル”ギャングのボス、ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャーに敵対組織の情報を売るよう持ちかける。一度は断るバルジャーだが、敵をたたき潰すチャンスと捉え承諾。名声を望む州上院議員ビリー・バルジャーの利害も一致し、3者間の密約が成立する。彼らはこの街で生まれ育った幼なじみだった。絶大な権力を手に入れた彼らだが、永遠に続くと思われていたその禁断の関係は、バルジャーの暴走を皮切りに音を立てて崩れていく。
スタッフ
監督・製作:スコット・クーパー
原作:ディック・レイア、ジェラード・オニール
脚本:マーク・マルーク、ジェズ・バターワース
キャスト
ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャー:ジョニー・デップ
ジョン・コノリー:ジョエル・エドガートン
ビリー・バルジャー:ベネディクト・カンバーバッチ
スティーヴン・フレミ:ロリー・コクレイン
ケヴィン・ウィークス:ジェシー・プレモンス
ジョン・モリス:デヴィッド・ハーパー
リンジー・シル:ダコタ・ジョンソン
マリアン・コノリー:ジュリアンヌ・ニコルソン
チャールズ・マグワイア:ケヴィン・ベーコン
フレッド・ワイシャック:コリー・ストール
ブライアン・ハロラン:ピーター・サースガード
ロバート・フィッツパトリック:アダム・スコット
デボラ・ハッセー:ジュノー・テンプル
小沢仁志(オザワヒトシ)
1962年6月19日、東京都生まれ。1984年に「ひと夏の出来ごころ」でスクリーンデビュー。同年にテレビドラマ「スクール☆ウォーズ」の水原亮役、人気シリーズ「ビー・バップ・ハイスクール」の不良役で鮮烈な印象を残す。その後も「日本統一」シリーズなど多くの映画やドラマ、バラエティなどで活躍。映画監督やプロデューサーとしての顔を持ち、OZAWA名義で「喧嘩の極意」シリーズや「実録 新撰組」シリーズを手がけた。主演作「裏社会の男たち 第三章」「九州極道戦争2」のDVDが3月4日に発売。また初夏には「CONFLICT(コンフリクト)~最大の抗争~」の公開を控える。
山口祥行(ヤマグチヨシユキ)
1971年8月6日、東京都生まれ。1988年に「クレイジーボーイズ」でスクリーンデビュー。その後「新 影の軍団」シリーズやテレビアニメの声優を務めるなど幅広く活動している。スタントマン経験があり、吹替なしのアクションや殺陣を行うことも多い。2月6日には「表と裏 最終章」、初夏には小沢仁志や本宮泰風との共演作「CONFLICT(コンフリクト)~最大の抗争~」の公開を控える。
本宮泰風(モトミヤヤスカゼ)
1972年2月7日、東京都生まれ。1994年にテレビドラマ「シュプールは行方不明」で俳優デビュー。主な出演作に、ドラマ「S -最後の警官-」や「龍三と七人の子分たち」などがある。「再会 禁じられた大人の恋」が現在公開中。山口祥行とのW主演「日本統一15」のDVDが2月5日に発売されるほか、「表と裏 最終章」が2月6日、「CONFLICT(コンフリクト)~最大の抗争~」が初夏に公開を控える。
「ブラック・スキャンダル」© 2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., CCP BLACK MASS FILM HOLDINGS, LLC, RATPAC ENTERTAINMENT, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
参考文献:「ブラック・スキャンダル」角川文庫刊
2016年1月29日更新