水野優希(松下奈緒)
出版関係専門の調査会社・EKリサーチの調査員で元警察官。同じく警察官で自殺と処理された父の死に疑念を抱いている。真面目で正義感が強く、調査に夢中になると周りが見えなくなってしまう。
漫画ブレイブを発行する想起社の関係人物
コラム 漫画好きにはたまらない!あの漫画家の描き下ろしも
漫画「MASTERキートン」の原作者の1人としても知られる長崎尚志の小説を実写化した本作は、出版関係の調査員と漫画雑誌の編集者がコンビを組む作品だけあって、劇中には漫画要素がたっぷり。醍醐が編集長を務める漫画ブレイブの連載作品や劇中で重要なキーワードとなる画稿は、「墨攻」の森秀樹、「うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち」の田中圭一、「ドーベルマン刑事」の平松伸二、「喰いしん坊!」の土山しげるといった人気漫画家が描き下ろしたもの。「パシリ刑事」(平松伸二)、「極メン」(土山しげる)など人気作品を彷彿とさせる漫画の数々に、思わずニヤリとさせられること間違いなしだ。
さらに、醍醐の漫画に関するウンチクの数々には、知的好奇心がくすぐられ、教養を得ることもできる。そして、今回編集長に就任した醍醐が、連載漫画について担当編集者たちに厳しく駄目出しする場面をはじめ、漫画家と編集者の交流や編集部の様子などリアリティあふれる場面が次々に登場するのも見どころの1つだ。
とにかくクセ者ぞろいの本作の中でも岩松演じる伝説の編集長・南部のキャラクターは強烈で、漫画のみならず漫画家や編集者の人格まで容赦なく否定する姿には見ているこちらまで思わず泣きそうになってしまうほど。ウンチクを生かして事件を推理する醍醐のほか、漫画を心から愛し、それゆえに苦悩する人々の姿には胸を熱く奮い立たされ、ビジネスドラマとしても楽しむことができるのだ。
コラム 伴走するフィクションとリアル
本作はフィクションでありながら、実在する人物や実際に起きた事件といった“リアル”が劇中で大事な役割を果たす。今回、重要なキーワードとなるのは戦後最大の謎と言われる「下山事件」。昭和24年、国鉄総裁・下山定則が出勤途中に失踪し、翌日未明に国鉄常磐線の線路で汽車に轢断された遺体となって発見された。自殺説や他殺説に加え陰謀論が噂されたが、捜査が打ち切られたため迷宮入りとなった未解決事件だ。この下山事件が、物語とどのような関係があるのか。時を越えて事件の真相にも迫っていくさまはなんともスリリング。
そして、劇中には実在の漫画家の名前も多数登場する。白石演じる編集部アルバイトの伊東が、漫画界の大御所である白土三平、小島剛夕の名前を読めず、醍醐が呆れる場面も。白石が「仮面ライダーウィザード」で主人公を演じたことを知っているとさらに楽しめるセリフもあるのでファンは期待しよう。