映画ナタリー Power Push - 「バクマン。」

新井浩文、ジャンプ編集部へ“聖地巡礼” +スタッフ・キャストの“思い出のジャンプマンガ”セレクション

大根さんとの間には貸し借りがある

──具体的に演じるときはどういうことをイメージされたんですか?

平丸一也の担当編集者は、お金や女性の話で平丸のモチベーションを高めようとする。

映画とマンガっていうのは違うから、今回うちが映画で演るのは、大根さんの台本の中の平丸を演るわけなんです。でも1個だけすごい文句を言ったことがあるんですよね。大根さんが書いた平丸像っていうのは、お金をエサに仕事をがんばるっていうキャラだったんです。でも、それだけだと平丸として成立しないので、女性が大好きな設定を入れてくださいってお願いして。そしたら“最上もがちゃん”っていうワードに反応するシーンが追加されました。

──ほかに何か新井さんのこだわりを反映した部分ってあるんですか?

ないですね。ただやっぱり原作ファンなんで、ある程度の平丸像を崩したくないっていうのがあって、髪型はずっと地毛で伸ばしてました。自分でどういう髪型にするか決めて、いつもお願いしてる美容師さんに頼んで。だからその間に出た作品は全部ロン毛なんですよ。「寄生獣」でうちが演じた殺人犯の浦上は坊主のはずなのに、「なんで髪長えんだよ」って言われても、全部「バクマン。」のせいです。全部大根さんのせいです!

──2稿、3稿から読まれてたのって新井さんだけですか?

たぶんそうですね。厳密に説明しますと、大根さんとうちの間には、貸し借りがあるんですね(笑)。「モテキ」のドラマを映画化することは大根さんから居酒屋で聞いたんですけど、うちはドラマ版にも出てたので「チョイ役だったら映画は出たくないなあ」って言ったんですよ。で、大根さんはそのとき「俺がそんなことするわけない」って宣言したのに、いざ台本が来たらうちの出番がワンシーンだけだったんですね(笑)。だから1回断ったんですけど、すぐに大根さんから電話がかかってきて「頼むから出てよ、1個借りで」って。「じゃあわかりました。この先大根さんの何かの作品で、うちに1つ役を選ばせてくださいね」ってことで成立したんです。その撮影中に大根さんが次に「バクマン。」を撮るって聞いたから、ここでその貸しを返してもらおうと思って「平丸で(出たい)」って言ったら、「君は平丸じゃない、うーん、服部かなあ」とか返すんですよ。服部は出番が多いだろうけど、うち的にはあんまり好きじゃなくて。

──キャラが。

宮藤官九郎演じる川口たろうと、幼い頃の最高の思い出のシーン。

そう、マンガのね。で、「じゃあわかりました、準備稿でいいから読ませてもらって、もう1回うちが選びます」ってことにしたんです。だから早い段階から読ませてもらってたの。それで、まあ映画観たらわかると思うんですけど、うちが演れる年齢の人で一番おいしい役は川口たろうなんですよ。

──ああー。あれはおいしいですね。

だから大根さんに「川口たろうがいい」って言って、一応成立したんですよ。でもその2、3カ月後に電話で「川口たろう役で決まった?」って聞いたら、「うん、クドカン(宮藤官九郎)になった!」って!「はあ!? 何言ってんのこの人!」と思いましたよ。「じゃあ何、服部?」って聞いたら、「服部は山田(孝之)くん」って。「えっ!? まさか呼ばないつもり!?」って聞いたら、「いや、平丸」って言うんですよ、最初は否定したのに。まあそれで平丸演ることになったんで、髪伸ばして仕上げていった姿を衣装あわせのタイミングで大根さんに見せたら、あの人、「あっ平丸だ」って言ったんですよ。……なんて薄っぺらい人間なんだと!

──(笑)

最初は「平丸じゃない」って言ってたのに一発で「あっ平丸だ」って言うなんて!(笑) うちも言っちゃいましたもん、「何言ってんの!?」って。大根さんは監督としては極上ですよ、でも人間としては本当に底辺中の底辺!(笑)

──でも結果的に一番やりたかった平丸役を勝ち取ったわけですね(笑)。

今回もだっさい大根さんが見れるんじゃないかなって

──今回のストーリー的には、大根さんは「この世は金と知恵」の連載が終わるまでのところを1本の映画にまとめたわけですけど、そこはどう思われました?

ああもう、上手。うちは早い段階からどこを切り取るのかも聞いてましたけど、やっぱり選んだところも、持って行き方も上手ですね。でも恐ろしいのが、大根さんは今、「またヒットしたら続編とかやるんでしょ?」って聞かれても「ゼッッッタイない! 今回の映画、どれだけ大変だったかわかる?」って答えてるんですよ。そう言っておいて……あの人、続編やるタイプだから。

──ははは!

新井浩文

映画が当たって調子に乗って、続編の話が来たら「やっちゃおうかな」って言うタイプだから(笑)。万が一、本当に大根さんがこの続編をやったら、そのときはめちゃくちゃ叩いていいから!「ゼッッッタイやらないって言ってましたよね!?」って(笑)。「モテキ」のときもそうだったんだよ、「ゼッッッッッッタイ映画化しない!」って言ってて。

──映画化しちゃいましたよね。

そうそう。あの人はテレビ屋なんで、映画撮るんだったらヒット以外意味がないっていう考えの人なんですよ。それを聞いたときに、うちはすごいカッコいいなと思って。「賞とか、別にそんなのどうでもいい」って言ったんです大根さんは。……でも、「モテキ」のときに賞獲ったらすげえ喜んでたんですよ!

──(笑)

そういうのがださいの、人間として!(笑) わかります? はじめからあんなこと言わなきゃ、賞獲ったときにうちも素直に祝えるんだけど、さんざんカッコつけて「賞なんてどうでもいい」って言ったあとに超喜んでたからさ! 今回もたぶん何かの賞を獲れると思うんですよ。だからそのときにまた、だっさい大根さんが見れるんじゃないかなって期待してます(笑)。

Contents Index

作品解説&キャラクター紹介
大根仁×佐藤健×神木隆之介
小畑健×大根仁
番外編 佐藤健×神木隆之介 “持ち込み”体験記
山口一郎(サカナクション)×大根仁
新井浩文、ジャンプ編集部へ

About the Movie

「バクマン。」

「バクマン。」2015年10月3日より全国東宝系にて公開

スタッフ

監督・脚本:大根仁
原作:大場つぐみ、小畑健
主題歌:サカナクション「新宝島」

キャスト

真城最高:佐藤健
高木秋人:神木隆之介
新妻エイジ:染谷将太
亜豆美保:小松菜奈
福田真太:桐谷健太
平丸一也:新井浩文
中井巧朗:皆川猿時
服部哲:山田孝之
川口たろう:宮藤官九郎
佐々木編集長:リリー・フランキー

Profile

新井浩文(アライヒロフミ)

1979年1月18日、青森県生まれ。2003年、映画界デビューともなった初主演作「青い春」(2002年)で高崎映画祭の最優秀新人男優賞を受賞した。以来「ゲルマニウムの夜」や「BOX 袴田事件 命とは」など多数の映画に出演。2014年には第88回アカデミー賞外国語映画賞部門日本代表に選ばれた「百円の恋」をはじめ、7本もの出演作が公開された。「モテキ」や「ど根性ガエル」といったテレビドラマでも存在感を放っている。新井がナビゲーターを務め、親しい俳優や監督と全国各地の酒場を巡るテレビ番組「美しき酒呑みたち」もBSフジにて放送中。

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