「ARGYLLE/アーガイル」から目が離せない!宇垣美里が超刺激的なマシュー・ヴォーン最新作をたっぷり掘り下げ (2/2)

小説家・エリーが大活躍!?どんでん返しの数は「数えきれないくらい」

──さて本作のヒロイン、スパイ小説の作者・エリーを演じるのは、ブライス・ダラス・ハワードです。小説の内容が現実のスパイ組織の行動と一致していたことで、エリーは“知り過ぎた小説家”としてなぜか追われる羽目になりますが……。

巻き込まれて訳がわからない、アワアワしている感じに、すごくリアリティがありましたね。かわいそうに……と思いながら観ていましたが、そこからどんどん活躍していく……これ以上は秘密ですが、意外性があって楽しいんです。

左からサム・ロックウェル演じるエイデン、ブライス・ダラス・ハワード演じるエリー。

左からサム・ロックウェル演じるエイデン、ブライス・ダラス・ハワード演じるエリー。

──エリーの愛猫アルフィーも、いい味を放っていました。

マシュー・ヴォーンって、動物の演出が本当に上手。「キングスマン」でもワンコがめっちゃかわいかったです。今回は猫ちゃんが活躍するのかと思ったら、活躍もするけれど足も引っ張る、みたいな(笑)。でも、それを誰が責められよう!?という、すべてを含めて「猫だなあ」というかわいらしさで。しかも、ずっと不機嫌そうなのがいいんです(笑)。実はあのアルフィー役の猫は、監督の愛猫だとお聞きしました。別の猫をキャスティングしていたけれどうまくいかず、自分の家から猫を連れて来たとか。ずっとブスッとしているけれど、ドッシリしていて超大物感がありますよね。また、ヒロインは逃げながらも背中に猫を背負っているという“画”自体、キャリーケースがアーガイル柄でかわいいのもありますが、どこかトボけていて面白い。私も早く家に帰って、自分の愛犬に会いたくなりました。ペットに会いたいからデートなんてどうでもいい、って気持ち、よくわかる(笑)。

ブライス・ダラス・ハワード演じるエリーに背負われながら移動する、チップ演じるアルフィー。

ブライス・ダラス・ハワード演じるエリーに背負われながら移動する、チップ演じるアルフィー。

──物語は「え、そうだったの!?」と何度もどんでん返しがありますが、だいたい何回くらいだまされましたか?

数えきれないくらい、いっぱいありましたよ! 冒頭の(ヘンリー・カヴィル演じる)エージェント・アーガイルが現れるシーンから「主人公は(エリーじゃなくて)そっち!?」となりましたし、サム・ロックウェルが出てきた瞬間も、「え、誰!?」ってなりましたから。その後も、急にエリーが巻き込まれて、展開がコロコロ二転三転し、敵・味方が入り乱れて、誰を信じたらいいのか、何を信じていいのかわからないまま、最後まで一気になだれ込んでいきます。本作は主人公のエリー自身が自分のアイデンティティを見失うというか、ずっと揺らいでいる物語でもあるので、そういう意味でもだまされることを楽しめたかなと思います。後半にも、え、そうだったの!?とさらに展開が広がる重大なポイントもあるので、観終えたあとにもう1回頭から観たくなりました。

──最後を知ってから観ると、登場人物たちの心情に驚きますね。

そうなんです。すべてがわかった目線でもう一度、最初の頃のエリーや、サム・ロックウェル扮するエイダンの表情・視線を改めて確かめてみたくなりました。ほかの人々も含め“そういうこと”を想像して観ていなかったので、また全然違うポイントに気付くかもしれません。どのキャラクターにも二面性があるので、リピートが楽しみな作品でもありますよね。

──そのほかも豪華なキャストがそろっています。特に注目している俳優はいますか?

ジョン・シナもアリアナ・デボーズも大好きなので、この2人が出ていると聞いて、とてもワクワクしていました。ジョンは「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」(2021年)にピースメイカー役で出ていて、私はそのスピンオフドラマ「ピースメイカー」も2周見返したくらい。本当に素晴らしい役者なんですよ。アリアナ・デボーズは「ウエスト・サイド・ストーリー」(2021年)でのアニータ役が素晴らしく一気にファンになりました。また「アベンジャーズ」シリーズも「キングスマン」シリーズもそうですが、サミュエル・L・ジャクソンが出てくると、やっぱり画面が引き締まりますよね。彼の持つパワーがそうさせるのか、待ってましたー!という気持ちにもなって(笑)。「キングスマン」にも出ていたソフィア・ブテラも、すごく雰囲気があってよかったです。

宇垣美里

宇垣美里

アクション×音楽=マシュー・ヴォーンの真骨頂

──“ゴージャス”という言葉が何度か出ていますが、マシュー・ヴォーン作品は女性ファンも多いです。その理由をどう分析しますか?

戦っていく中で人はバンバン撃たれますが、その描写が痛々しくなく、ドロドロもしていないので、わりと気軽に観られるからかもしれないですね。ポップでカラフルで、爽快。暴力描写がリアルすぎず、相手を痛め付ける感じがないので、アクションとして観られるんです。血は出ても血生臭くないというか。「キングスマン」シリーズにしても、イギリス紳士的な雰囲気が好きな女性も多いと思いますし、あのトンデモ秘密兵器や露悪的ですらある戦闘シーンがかっこいいので。本作も、そんなラインの作品だと思います。

──本作の音楽の魅力についても聞かせてください。

アクションと音楽のマッチングが、マシュー・ヴォーンの真骨頂というイメージがありました。華やかなメロディとリズムによって、アクションシーンがダンスパーティのように見える。今回はレトロダンスミュージックが、バチッとハマっていましたね。私にとって“懐かしい”音楽ではないですが、「みんな、これ好きだよね」と気分がアガる感じで、華麗な世界にマッチしていました。

──アクション映画もスパイ映画も、どんどん進化していっていると感じませんか?

本作はハードなスパイアクション映画ではなく、華やかでエレガントなお祭り映画だと私は思っていて。もちろん女性陣の活躍も大いにあり、各々の踊るように戦うシーンは惚れぼれする美しさでした。本作には、いわゆる“装置”としての女性は1人も登場しません。だから変な引っ掛かりを覚えることなく、思い切り楽しめる作りになっています。今ではそれが当たり前ですが、登場する女性たちは皆それぞれ主体性のある存在であり、たとえ悪役にしても、それぞれ思惑があって動いています。

映画「ARGYLLE/アーガイル」場面写真

映画「ARGYLLE/アーガイル」場面写真

──最後に、さらに推しの一言を。

「キングスマン」ファンの人たちが観たら、絶対に大喜びするうれしいポイントがあるよ、とだけ言っておきましょうか(笑)。すぐに深掘り考察をしたくなると思います。また私がスパイ映画を好きな理由に、世界各地を巡りステージがコロコロと変わる面白さがあるのですが、今回もギリシャに始まり、ロンドン、フランス、中東の砂漠など、いろんなところに飛びます。海も山も越え、国境などない!みたいな感じが、すごくスパイ映画らしい。そういったザ・王道なところも含めて、この作品を楽しんでください!

宇垣美里

宇垣美里

プロフィール

宇垣美里(ウガキミサト)

1991年4月16日生まれ、兵庫県出身。2014年4月にTBSに入社。アナウンサーとして数々の番組に出演し、2019年3月に同社を退社した。現在はフリーアナウンサー・俳優としてテレビ、ラジオ、雑誌、CM出演のほか執筆業も行うなど幅広く活躍している。ドラマ出演作に「明日、私は誰かのカノジョ」「チェイサーゲーム」「自由な女神 ―バックステージ・イン・ニューヨーク―」などがあり、2月29日深夜放送スタートのMBS「シンデレラ・コンプレックス」にも出演。WOWOWのアカデミー賞授賞式生中継では2021年より4年連続で案内役を務める。TBSラジオ「アフター6ジャンクション2」に月曜レギュラーで出演中。