数多くのミュージックビデオやライブ映像などを手がける小嶋貴之が監督を務める映画「帰ってこなかった男」が、2025年3月28日より東京・新宿テアトルほか全国で順次公開される。
本作は、保険金をめぐり追い詰められていく人々を描いたサスペンス映画。前夫の失踪から6年半が経ち、保険金の受け取りまで半年に迫った佳奈は、現在の夫・孝明と将来の計画を立てている。しかし孝明には、その保険金で不倫相手のあゆみと設立するベンチャー企業に出資する目論見があった。そんなある日、佳奈は、たまたま入った居酒屋で、かつての夫である由紀夫に瓜二つの男と遭遇する。
小嶋は「人が一人いなくなることで悲しむ人もいるけど、得する人も存在してしまうのが、この様々な価値観に溢れる現代です。サスペンスフルな世界で、そこで欲にまみれた人たちが右往左往する物語のドライブ感を楽しんでいるうちに、観客が本当の自分を見つけてしまう、そんな映画になったと思います」と語っている。
小嶋貴之 コメント
20年以上仕事として1000本近くのMVをはじめいろんな映像をクライアントワークとして作ってきたのですが、数年前ふと自分の作品・プライベートワークを作っていないことに気づきました。このままだと自分の作品を撮ることなく歳をとってしまうという焦りを覚え、脚本の学校に行きなおしたり、スプロケというコミュニティでたくさんの役者と触れ合ったりしているうちに、MVの様な映像主義だけではない、芝居を中心とした人間性を重視した映画に自分の趣向もシフトしていきました。MVディレクターでもある自分の感覚をも取り込みつつ芝居の純粋性を中心にしたエンタメ性の高い作品を作ろうと制作したのが「帰ってこなかった男」です。混じりっ気なしの自分が投影できたと思っています。
考えると、仕事は日々納期がついて回り、見る夢でも基本自分が何かしらで追い込まれている事が多く、ずっと逃げる逃げないのラインをやじろべえの様に綱渡っている(サスペンス)、そんな自分が映画作りの主題に置いているのはずっと逃げたい主人公でした。またお笑いが好きという趣味もあって、そんなサスペンスフルな状況さえも笑ってしまおうというある種精神的な逃げ場を作りたいと思い、こんな作品が出来上がりました。
この世はたくさんの価値観があり、皆が生きやすくする為のいろんなルールが存在します。しかし誰もが、そのルールを逆に利用してすれすれのグレーゾーンで欲を満たそうとしたことはあるのではないでしょうか? 例えば失踪者が7年見つからないと死亡扱いになるという「失踪宣告」。人が一人いなくなることで悲しむ人もいるけど、得する人も存在してしまうのが、この様々な価値観に溢れる現代です。サスペンスフルな世界で、そこで欲にまみれた人たちが右往左往する物語のドライブ感を楽しんでいるうちに、観客が本当の自分を見つけてしまう、そんな映画になったと思います。ぜひ、大きなスクリーンのある劇場でご覧ください。
※記事初出時、本文に一部誤りがありました。お詫びして訂正します。
小嶋貴之 @kozyman313
映画ナタリーが「帰ってこなかった男」紹介してくれてる!!
音楽ナタリーは何度か名前載せて頂いたけど,こっちはたぶん初。
https://t.co/5JlKYVTMs6
#帰ってこなかった男