初開催となる特集上映「現代中国映画祭2024」のオープニング作品として、「
日本初上映の4作を含む全15作からなる「現代中国映画祭2024」。昨日の前夜祭で上映された「無名」に続き、「家出の決意」の上映にも多くの観客が訪れた。
徐は「中国の映画は昔から日本で上映されてきましたし、チャン・イーモウ監督の『HERO』やジョン・ウー監督の『レッドクリフ』シリーズは大ヒットしました。中国の第5、第6世代の監督の作品は中国以上に日本で何度も特集が組まれています」と述懐。「しかし、この10年間、日本で中国映画が紹介される機会が少なくなっていると感じていました。2010年代に入ってから中国市場は激変し、規模も15年前と比べると5倍ほど成長した。もっと紹介したい監督、作品があると思い映画祭をスタートしたんです」と企画意図を説明した。
そんな映画祭のオープニングを飾ったイン・リーチュエン(尹麗川)の監督作「家出の決意」は、家族のために人生を捧げ、よき娘、よき妻、よき母としての役割を忠実に果たしてきたリーを軸にした物語。劇中では終わらない家事と生活の重荷によってうつ病となった彼女が、新たな人生の旅を計画し、本当の自分を再発見していく。「在りし日の歌」のヨン・メイ(咏梅)がリーを演じ、その夫にジャン・ウー(姜武)が扮した。
磯は「ラストのカタルシスが何よりすごい」と述べ、「そこに至るまで、リーが、どのように生きてきて、何をくぐり抜けてきたのかといった描写がとても緻密だと思いました。1つひとつのセリフがよく設計されていると翻訳をしながら感じましたね」と語る。
徐は「近年少しずつ、中国の社会システムや、女性の生きづらさを描く作品は増えているものの、こういった作品は初めて。レビューサイトを見ると『女性映画でもあり、ある意味男性のための映画でもある』といったものや、『この映画の旦那さんは、ジャン・ウーさんが演じるより、私の父が演じたほうがいい』という声がありました。作品に共感する観客がすごく多いんです」と伝え、磯も「日本の観客も主人公のリーに共感する部分があると思います」とコメント。徐は「日本の方と話すと中国の女性のほうが日本女性より強いという話が出てきます。実際、日常生活でもそうですし、映画の中でも、喧嘩が多い。ただそういった状況の中にありながらも女性は何もできない。その難しさ、切なさを感じます」と言及した。
徐は「ほかの国と同様に中国では女性に関して、いろいろな声が上がっています。ただ現状はあまり変化はないんです。だからこういった作品が作られて、社会にメッセージを発することは非常に重要。この映画は現在の中国で一番流行っている映画と言えるものなので、日本の皆さんにもいち早く観てほしかったんです」とオープニングに選んだ理由も説明。そして「今回の映画祭を通して、中国映画の今を多方面に紹介したい。映画祭では若手作家の映画、中国で流行っている作品のほか、21世紀の中国映画の重要人物チュウ・ジョンジョン(邱炯炯)の日本初となるミニ特集をお届けします。鑑賞した作品の感想を、投稿していただければうれしいです」と呼びかけた。
特集上映「現代中国映画祭2024」は12月12日まで東京のシネ・リーブル池袋で開催。12月13日から大阪・テアトル梅田でも開催される。
現代中国映画祭2024
2024年11月22日(金)~12月12日(木)東京都 シネ・リーブル池袋
2024年12月13日(金)~26日(木)大阪府 テアトル梅田
Director in Deep Focus部門:鬼才 チュウ・ジョンジョン 傑作セレクション
- マダム / 姑奶奶
- 痴
- 椒麻堂会
Chinese Now Hits部門
- 無名(監督:チェン・アル)
- 家出の決意 / 出走的決心(監督:イン・リーチュエン)※インターナショナルプレミア / 日本初上映
- いいひと / #保你平安(監督:ダー・ポン)※日本初上映
Chinese New Wave部門
- 彼女 / 寻她(監督:チン・シジョン)※日本初上映
- 鉄西区に生きる / 逍遥・游(監督:リャン・ミン)※日本初上映
- 失った時間 / 人海同遊(監督:ツァイ・ジエ)
「Play Back」Selection部門
- アートカレッジ1994 / 艺术学院(監督:リウ・ジエン)
- 船に乗って逝く / 乘船而去(監督:チェン・シャオユー)
- 永安鎮の物語集 / 永安鎮故事集(監督:ウェイ・シュージュン)
- 春江水暖~しゅんこうすいだん(監督:グー・シャオガン)
- 郊外の鳥たち / 郊区的鸟(監督:チウ・ション)
- 宇宙探索編集部 / 宇宙探索编辑部(監督:コン・ダーシャン)
「現代中国映画祭2024」予告編
関連記事
映画ナタリー @eiga_natalie
初開催の現代中国映画祭、終わらない家事と生活の重荷によって鬱となった女性描く「#家出の決意」がOP飾る
https://t.co/vvV121aA5d
映画祭ディレクター・徐昊辰「中国映画の今を多方面に紹介したい」「日本の皆さんにもいち早く観てほしかった」
#現代中国映画祭 #出走的決心 https://t.co/22UDcwE358