映画「
本作は統合失調症の症状が表れた姉と、彼女を精神科の受診から遠ざけた両親の姿を、弟である監督の
アーティスト・詩人の
東風が配給する「どうすればよかったか?」は12月7日より東京・ポレポレ東中野、ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪・第七藝術劇場でロードショー。12月14日より北海道・シアターキノほか全国で順次公開される。なお11月27日にはシアターキノにて先行上映が決定しており、藤野と札幌学院大学名誉教授・二通諭の特別対談が行われる。詳細は劇場公式サイトを確認してほしい。
ドキュメンタリー映画「どうすればよかったか」予告編
青山ゆみこ(編集 / ライター)コメント
家族の映像を記録し、公開することの可否を、息子に問われた老いた父の返答に、複雑な感情でなんともいえず胸がきゅうっと詰まった。
どこかほっと安堵したような気持ちにもなったわたしは、もしかするとその返答を「正解」だと感じた、あるいは「受け入れた」のかもしれない。
わたしは、いつも「正解」を求めてしまうのだな。自分にも、誰かにも。
伊藤亜和(文筆家)コメント
「どうすればよかったか?」という問いに正解を答えるのは、決して難しいことではない。
それでも人は必ずしも正解を選ばない。どうすればよかったか、みんな本当はわかっているはずだった。
鎖のかかった扉の内側から家族を見つめる静かな視点。
終わっていく物語は私たちにもういちど問う。一体、どうすればよかったか、と。
インベカヲリ★(写真家 / ノンフィクション作家)コメント
姉の病気を認めないことで成立する「家族」のあり方。おそらく多くの機能不全家族にも通じる矛盾であり、その矛盾をはっきりとカメラに残したドキュメンタリーである。
瀬尾夏美(アーティスト / 詩人)コメント
姉、弟、父、母。
一緒に暮らしているがゆえに、どうしようもなく孤立していく人たち。
聞いてる? 聞こえてるよね。
25年間にも及ぶ、すれ違う会話の集積が問いかける。
では、家の中に閉じ込められた困難に、社会は、他者は、何ができるのか。
どうすればよかったのか。──わたしたちはこの映画から、対話を始めたい。
想田和弘(映画作家)コメント
解釈を拒む奇妙で厳しい現実を、そのままゴロっと差し出したような映画である。だからか、どう評していいのか分からない。観た後しばらく茫然とするしかなかった。
永井玲衣(哲学者)コメント
映像はふるえている。目もくらむ年月を重ねたままならない日々と家族が、そこにうつっている。求めることができなかった助けの声が、問いのかたちとなって社会に手渡された。映像を観たいま「あなたたちはこうすればよかった」ではなく「わたしたちはどうすればよかったか」という思いが離れない。
星野概念(精神科医など)コメント
ある時点よりも先の未来の物語には、常に無数の筋があります。
その時点での環境、不安、希望、知識、出会いなど、様々なものに影響されながら、その人や周りの人たちは一つの筋の物語を紡いでいきます。
人生の物語はどの時点でも道半ばで、いくらでも振り返ることはできるけど、歩んでいる筋のよしあしに正解はきっとありません。
どうすればよかったか?
問いは壮大。考え続けることは楽ではない。
けれど、とても稀有な記録、記憶をたどりながらそれを一緒に考えるような鑑賞体験は、とても貴重で意義ある時間に感じられました。
松尾潔(音楽プロデューサー / 作家)コメント
これは私たちの映画だ。「両親は玄関に鎖と南京錠をかけて姉を閉じ込めた」と聞けば、常識的ではない家族の記録と早合点しそうになるが、事はそうシンプルではない。統合失調症の「姉」に大多数の人と異なる点があるのは確かだが、常識的ではないかといえば違う。そろって医者の「両親」は常識人であることに執着し、常識的ではない日々にたどり着いた。では、そんな家族を撮りつづけた監督のふるまいは常識的といえるか。誰にとっても他人事ではない人生がここにある。
森達也(映画監督 / 作家)コメント
観終えてずっと考えている。どうすればよかったのか。でも答えはまだ見つからない。早く医療に繋げるべきとか拘束すべきではないとかのフレーズは浮かぶけれど、それが根源的な解だとは思えない。きっと他にある。だからもう少し考え続ける。
森直人(映画評論家)コメント
カメラを持った男──弟であり息子でもある彼は、「撮る」ことでいかに自らの家族と、そして世界と切り結ぼうとしたのか。
記録されることがなかったかもしれない場所で、「ともちゃん」と呼ばれる男から、人間探究の目が立ち上がってくる。我々はこの目の発動を映画と名付けているのではないか。カメラの前で老いた父親と真っ直ぐ向き合う藤野知明監督の姿が、この映画の決定的な余韻として残っている。
tAk @mifu75
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