「沈黙を破る」の
2023年10月7日のハマスによる越境攻撃以降、ガザの現地ジャーナリストから定期的に報告を受けていた土井が、“生の声”を受け取った者の責務として制作した本作。第1部「ある家族の25年」、第2部「民衆とハマス」の2部構成で、イスラエルとパレスチナを取材し続けてきた土井による、30年にわたるガザの記録がまとめられた。
土井は「私たちはニュースが伝える数字で現場の実態を『分かった』つもりになる。しかし、あの空爆や砲撃の下には犠牲になった一人ひとりの死の痛み、悲しみがあるのだ。遠いガザで起こっている事態を、日本で暮らす私たちに引き寄せるために、長年ガザと関わってきたジャーナリストの私がやるべきことは、そのための“素材”を提供することではないか」とコメント。アナウンサー、文筆家の師岡カリーマは「攻撃が続くガザで、砲弾が落ちる先にいるのがどんな人々で、どんな苦難を強いられてきたか、その生の声を丹念に記録した大作」とつづっている。
土井敏邦 コメント
私は1985年以来、34年間、パレスチナに通い続けてきた。遠い国の人たちに起こっていることを伝えるときにまずやるべきことは、現地の人びとが私たちと“同じ人間である”と伝えることだと私は考えている。私たちはニュースが伝える数字で現場の実態を「分かった」つもりになる。しかし、あの空爆や砲撃の下には犠牲になった一人ひとりの死の痛み、悲しみがあるのだ。遠いガザで起こっている事態を、日本で暮らす私たちに引き寄せるために、長年ガザと関わってきたジャーナリストの私がやるべきことは、そのための“素材”を提供することではないか。ハマスによる越境攻撃から2週間ほど経た10月下旬から、現地ジャーナリストMは1~2週間ごとにインターネットの画面を通して、現地の状況を伝えてくれた。自身も自宅が砲撃を受け、弟と義弟が殺されたMは、世界のメディアが伝えない市井の人びとの空気を私に伝えてきた。Mが命懸けで伝えてきたその“生の声”を受け取った私には、それをきちんと世界に向けて伝える責務がある。この映画はそういう役割を担っている。
師岡カリーマ(アナウンサー、文筆家)コメント
攻撃が続くガザで、砲弾が落ちる先にいるのがどんな人々で、どんな苦難を強いられてきたか、その生の声を丹念に記録した大作。夢も希望も持てず、人ではないかのように扱われても抗えず、首根っこを掴まれた屈辱的な抑圧と貧困の中で生きるとはどういうことか。なぜハマスは支持され、いかにして支持は怒りに変わったか。人々の生活や政治意識を淡々と追うカメラの向こうから伝わってくるのは「テロ集団ハマスをのさばらせているんだから同罪だ」とイスラエルに蔑まれるパレスチナ人の、悲しいほど「普通」な素顔。何を持ち帰るか、受け手の完成も試される作品だ。
※東京新聞 6/22 付朝刊「本音のコラム」より
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土井敏邦が30年にわたるガザの記録をまとめたドキュメンタリー、10月公開(コメントあり / 写真12枚) - 映画ナタリー https://t.co/ZyzDrnuJ8F