河合優実の人生を変えた「あみこ」、監督・山中瑶子と思い出のポレポレ東中野でトーク

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河合優実が9月3日に東京・ポレポレ東中野で行われた映画「あみこ」の上映会に登壇。高校3年生のときに強い衝撃を受けたという同作の魅力や思い出を、監督の山中瑶子とともに語り合った。

東京・ポレポレ東中野で行われた映画「あみこ」上映会の様子。左から山中瑶子、河合優実

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「あみこ」メインビジュアル

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河合が主演、山中が監督を務めた映画「ナミビアの砂漠」の公開を記念した今回の上映。「あみこ」は無気力な高校生活を送るあみこが、自分と同じニヒリストでありながらサッカー部の人気者である“アオミくん”に恋する物語だ。先輩と付き合っているというアオミくんが学校に来なくなってから、あみこは徐々に暴走していく。山中が19歳から20歳にかけて撮り上げた本作は、PFFアワード2017の観客賞を受賞。山中は第68回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門に史上最年少で招待された。

高校生だった2018年、この日と同じポレポレ東中野で同作を鑑賞した河合。まだ俳優活動を始める前だったが、山中に「女優になります」と書いた手紙を直接渡した縁があり、今回2人のトークショーが実現した。

イタい高校生だったかもしれない

河合優実

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「あみこ」との関わりを「申し訳ないぐらい個人的な体験と結びついてます」と表現した河合。手紙を渡すほどの衝撃を受けただけでなく、当時、同作を観に来たことがきっかけで、ある自主映画への初出演も決まったという。河合は「同じ回で観ていた方が私のことを見かけて、その人が私のSNSアカウントを探してDMを送ってきたんです。『今日ポレポレ東中野であみこを観ていた方ですよね。僕と一緒に映画を作ってくれませんか』と。その人の映画に出たのがデビュー作でした」と、振り返っていく。

「役者になりたいと思い始めた時期に、映画を観に行ってこんなことが起こった。なんだこれ?と。それで『役者になれる!』と思っちゃったんです。学生の小さい映画で、なんの確約にもならないのに、なぜかそう思ってしまって(笑)」と回想。はやる気持ちをなぜか山中にも伝えたい気持ちが湧き上がり、「私はこれから女優になるので、いつか出してください」と書いた手紙を、ポレポレ東中野の正面で渡したという。そして「『ナミビアの砂漠』につながったから美談のようになってますけど……ただのイタい高校生だったかもしれない」と6年前の出来事を懐かしんだ。

左から山中瑶子、河合優実

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山中も「手紙をくれたときの河合さんの『勝ってやる!』と言うか、勝ち気な、怖いものがないような万能感をすごく覚えていて。こんな娘が観に来てくれて『あみこ』を作ってよかったと思うぐらいでした」と述懐。「あみこ」を観返したばかりの河合が、劇中であみこが「瞳は“勝ち気”なぶすー」と歌う描写に触れ、「私、あれだったのかな。あの歌が、めちゃくちゃしっくりきちゃいました」と笑い混じりに話すと、山中は「いやいやいや、そこから『勝ち気』と言ってるわけじゃなくて(笑)。セリフも今の今まで忘れてました」と笑みをこぼした。

センスだけがある「あみこ」

山中瑶子

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今回トークするにあたり河合に映画を観返してほしいと連絡していた山中だが、「私は自分で観返せなくて。恥ずかしすぎるんです。初めて撮った映画で、今の自分から観ると、セオリーもめちゃくちゃ。恐る恐る観たりはするんですけど、途中で止めちゃいます」と吐露。「でも絶対にこのときにしか撮れないものだと思うし、愛おしいんですけど……『ナミビア』を観ていただくと、歴然とした成長ぶりがすごい。私の映画に対する解像度が7年分ちゃんと上がってます(笑)」と自画自賛して笑いを誘う。

河合優実

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河合は「そんなこと言っちゃっていいんですか」と新作へのハードルが上がるのを心配しつつも、「でも『あみこ』はそうおっしゃるのもわかるぐらい、“19歳で撮ってしまった作品”と言うか。お金もないし、人もいないし、技術もない。それが画面から伝わってくる粗さがある。それなのに、センスだけがある。だからこそ一番かっこいい映画だと思います」と、その魅力を伝えた。

人生を変えた「あみこ」とポレポレ東中野

東京・ポレポレ東中野で行われた映画「あみこ」上映会の様子

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河合は山中との手紙のやり取りのあと、ポレポレ東中野にアルバイトの応募をしたこともあったそう。「高3の夏だったんですが、大学の受験も終わって。もうバイトしようってときに、映画館で働きたいなと思って、ポレポレ東中野にメールを送りました。『私はすごい経験をポレポレ東中野でしました。だからバイトがしたいです』と。別にバイト募集してなかったのにメールして(笑)。そしたら『今はバイトを募集してません』と返事がきました」と、同館との縁を明かす。さらに「それぐらい宝物のような思い出、経験になってるんです。『あみこ』を観に行って、文字通り人生が変わった。特別な体験です。それが『あみこ』という映画と一緒になっちゃっていて、申し訳ないぐらい個人的な体験と結びついてます」と言葉を紡いだ。

「ナミビアの砂漠」で念願のタッグ

「ナミビアの砂漠」ポスタービジュアル

「ナミビアの砂漠」ポスタービジュアル[拡大]

「あみこ」での縁から6年後、「ナミビアの砂漠」で念願のタッグ結成を果たした山中と河合。河合は「とにかく、ここにこぎ着けたときは本当にうれしかったです。それまで山中さんが撮った『魚座どうし』を観たり、監督したドラマを観たり。動きは知ってはいたけど、どこかでがっつり長編を撮るのかなあとぼんやり思ってました。それから山中さんが映画を撮るらしいと聞いて」と思い返し、山中も「お手紙をいただいてから、次の次の年にはもう映画館で河合さんの姿を観ていて。『あ、あのときの人だ』とすぐ気付いて。そこからどんどん観るようになっていくうちに、人づてに『河合さんが一緒にやりたい』と言ってくれているのを聞いて。まだ覚えててくれたんだと思って」と振り返る。

その後、一度は原作あり、河合主演の企画として動き出したが、紆余曲折あり、2023年5月頃に山中のオリジナル脚本による映画の企画が立ち上がった。山中は「河合さんからしたら、ずっと待たされていた状態が長かった。本当に不安だったと思います」と打ち明け、河合は「オリジナルで作ることが決まり、山中さんが脚本を書き始めたようです、という時期に久しぶりにお会いしましたね」と説明。山中は「書き始めたようです、と言うか、書けていないようなので会ってみてくれませんか?が正しいと思います(笑)」と明かす。

左から山中瑶子、河合優実

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実際の久しぶりの再会について、河合は「プロデューサーも含め、いろんな人が山中さんを信じていて。(この映画で)初めて会ったときも、プロデューサーの皆さんは部屋から出ていって、2人きりだったんですよね。そのとき山中さんなら『何かやってくれる』という体制なんだと感じて。それまでも『山中さんは天才だから待ちましょう』という状態だったんです。でも同意見なんです。進捗を聞いてましたが、もう『待ちたい』しかなかったですね」と、信頼をのぞかせる。これを受け、山中は「『脚本はこれです!』と堂々とお渡してお会いしたかったんですけど。脚本を書くのが映画を作る中で一番苦労するので……。私が〆切りを守らないから、みんなの『天才だから……』は気持ちのやり場がなかっただけだと思います(笑)」と答えた。

「ナミビアの砂漠」場面写真

「ナミビアの砂漠」場面写真[拡大]

山中が「脚本を書けてからはいい感じでしたよね……?」と目配せすると、河合は「完成してから、準備期間も短いはずだけど、みんなワクワクしていて。人に恵まれたというか、いろんな歯車ががっちり合った」とうなずく。撮影は2023年9月末から2週間ほど東京近辺で行われた。山中は「撮影は毎日楽しくって。リハーサルのときから『河合さんでよかった』が毎日更新されていくような感じでした。楽しすぎて不安にもなっていました。こんなに毎日楽しくて、面白いシーンを撮っているけど、面白いシーンの連なりを観るのが映画じゃないよね?とか考えてしまって」と述懐。河合は「それを山中さんがめちゃくちゃ笑いながら言ってきて(笑)。でも楽しかったんで、いいかと思って撮り続けた」と明かす。

河合優実の観たことのない表情や姿勢、仕草がいっぱい

「ナミビアの砂漠」場面写真

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当初のラッシュは3時間近くあり、山中は「まとめて観たときに、どういう映画になるのか誰も想像がつかなかった。私の中にはあるっちゃあったけど。『あみこ』と近いところもあるけど、また全然違う」と、制作を通した実感を吐露。最後に「『あみこ』よりいい映画を作りたいとずっと思っていて、それが叶った。河合さんを、河合さんが演じる主人公カナをひたすら観続ける映画になっています。観たことのない表情や姿勢、仕草がいっぱいあります。私としては、楽しい映画だと思って作りました」と、呼びかける。

左から山中瑶子、河合優実

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また河合が「初めて『あみこ』を観たとき、こういう感覚を持っている人がいるのかとびっくりした。今観返しても、山中さんしか持っていない圧倒的な感性がある。それが7年の時間をかけて、山中さんが豊かにしてきたものと、素晴らしいスタッフとキャストの皆さんが集まって、大アップグレードされた感じになっています。もちろん別の作品ですが、一ファンとして、また山中さんのかっこいい映画が観れて、すごいうれしかった。皆さんにも気に入っていただけることを願ってます」と語り、トークを締めくくった。

「ナミビアの砂漠」は、9月6日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。「あみこ」は9月28日から10月11日にかけてポレポレ東中野でレイトショー上映が行われる。

映画作品情報
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(c)2024『ナミビアの砂漠』製作委員会

映画「ナミビアの砂漠」予告編

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ポレポレ東中野 @Pole2_theater

河合優実の人生を変えた「あみこ」、監督・山中瑶子と思い出のポレポレ東中野でトーク(写真11枚) https://t.co/4klTwjThQ0

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