「ひろしまアニメーションシーズン2024」閉幕、山村浩二「世界中の表現に耳を傾けた」

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「ひろしまアニメーションシーズン2024(HAS)」の閉会式・授賞式が本日8月18日に広島・JMSアステールプラザで開催。ニコラス・ケッペンによる短編「美しき男たち」がグランプリに輝いた。

「ひろしまアニメーションシーズン2024(HAS)」授賞式の様子。スクリーンに映るのは、短編「美しき男たち」でグランプリを受賞したニコラス・ケッペン。

「ひろしまアニメーションシーズン2024(HAS)」授賞式の様子。スクリーンに映るのは、短編「美しき男たち」でグランプリを受賞したニコラス・ケッペン。

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「ひろしまアニメーションシーズン2024(HAS)」閉会式の様子。

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HASは、2022年に始まったひろしま国際平和文化祭のメディア芸術部門の事業として、環太平洋・アジア地域を中心に全世界のアニメーションを紹介する国際映画祭。今回は97の国・地域から2634作品の応募があり、短編72本・長編4本の全76作品が入選した。コンペティション部門は、短編・長編のほか、環太平洋アジア地域で作られた学生作品やデビュー作を対象にした環太平洋アジアユース、ミュージックビデオやCM、テレビ番組用映像などを対象とする日本依頼作品、すべての短編作品を対象とする観客賞が設けられている。

「美しき男たち」場面カット

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短編コンペティション部門グランプリの「美しき男たち」は、植毛のためにイスタンブールへ向かった3人の兄弟が描かれた作品。「優れたストーリーテリングと見事な演出は、観客を魅了するだけでなく、男らしさとアイデンティティに関する議論にも有意義な視点を提供した」ことが評価された。監督を務めたケッペンからはビデオメッセージが到着。彼は「今ベルギーは深夜です。暑くて眠れずにいると、配給会社の人からDMが来て受賞を知りました。周りは寝ているので大きな声は出せないんですが、とてもうれしいです」とささやき声で話し、会場に笑いを起こした。

伊藤里菜

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「私は、私と、私が、私を、」場面カット

「私は、私と、私が、私を、」場面カット[拡大]

環太平洋アジアユースコンペティションでグランプリを受賞した「私は、私と、私が、私を、」は、監督の伊藤里菜が自身の整形体験をもとに制作したドキュメンタリーアニメーション。ある日奇妙な姿に変わった主人公“私”が、何度も皮を剥がして元の姿に戻ろうとするも、うまくいかない様子が描かれた。審査員から「誰もが持っている(はずの)体と自意識の距離感が、映像的に呼び覚まされ、観る者に不思議な共感を生む」とコメントをもらった伊藤は、「まさか受賞できるとは思っていなかった。2年ぐらい掛けて作ってきたので報われた気がします。ありがとうございます」と感極まっていた。

八代健志

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「プチプチ・アニメ『春告げ魚と風来坊』」場面カット

「プチプチ・アニメ『春告げ魚と風来坊』」場面カット[拡大]

日本依頼作品コンペティション部門では、NHKで放送中の5分番組「プチプチ・アニメ」より、八代健志が手がけた「春告げ魚と風来坊」が受賞した。審査員は「セリフに頼らずに感覚で自然とのつながりを優しく思い起こさせる点が魅力的」と称賛。八代は「すべて外(実際の野山)でコマ撮りした作品です。仕事としてやるのはなかなか難しい作り方ですが、時間を掛けて柔軟な環境で作ることのできたテレビ番組が受賞できてとてもうれしいです」と伝えた。

スレッシュ・エリヤット

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「ゲロゲロ・ショー」場面カット

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もっとも多くの投票数を集めて観客賞を受賞したのは、インドのスレッシュ・エリヤットが監督した「ゲロゲロ・ショー」。来日していたエリヤットは「この作品を映画祭に出品するのは2回目なのですが、初めての受賞です。観客賞で選んでいただけたのが本当にうれしい。2年がかりで一緒に作ってくれた皆さんに感謝しています」とスピーチした。

山村浩二

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最後に、HASのアーティスティック・ディレクターである山村浩二が登壇し、参加者やスタッフ、観客に感謝を伝えた。続けて「世界中のいろんな表現に耳を傾け、ここにそろえたつもりです。アニメーションは絵と音が重なることでリズムが生まれます。それによって深い何かが皆さんに届いていたらうれしいです。次回、2026年8月も広島でお会いできることを期待しています」と呼びかけ、映画祭を締めくくった。

すべての受賞結果は以下に掲載している。

ひろしまアニメーションシーズン2024 受賞結果

短編コンペティション部門

グランプリ

「美しき男たち」(監督:ニコラス・ケッペン)

「社会への眼差し」賞

「バタフライ」(監督:フローレンス・ミアイユ)

「寓話の現在」賞 

「フシギなフラつき」(監督:ニーナ・ガンツ)

「虚構世界」賞 

「熱帯の複眼」(監督:ジャンシュウ・ジャン)

「光の詩」賞 

「東方の雨」(監督:ミリー・イェンケン)

長編コンペティション部門

グランプリ

「シロッコと風の王国」(監督:ブノワ・シュー)

環太平洋アジアユースコンペティション部門

グランプリ

「私は、私と、私が、私を、」(監督:伊藤里菜)

ムン・スジン賞 

「黴」(監督:シ・セッセイ)

ステファン・オビエ賞 

「ゾウのかたち」(監督:サム・クワ)

山下宏洋賞

「ポストヒューマン病棟」(監督:ユニャ・キム)

日本依頼作品コンペティション部門

グランプリ

「プチプチ・アニメ『春告げ魚と風来坊』」(監督:八代健志)

川村真司賞 

「星宮とと+TEMPLIME『Mind Replacer』(監督:大谷たらふ)

出合小都美賞

「Pass49e『白い悪魔』」(監督:円戸サヤ)

シシヤマザキ賞

「刀雨『Be Gone』」(監督:羅絲佳)

観客賞

ゲロゲロ・ショー(監督:スレッシュ・エリヤット)
※短編コンペティション、環太平洋アジアユースコンペティション、日本依頼作品コンペティションの作品から選出

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読者の反応

シネフィルDVD @cinefilDVD

<ひろしまアニメーションシーズン2024>、終了しました。授賞式の後で受賞した方々が身近な仲間や今回初めて作品を観たオーディエンスに祝福されている絵は、あったかくてとてもいい。特に若い作家さんの受賞は、ここから人生が変わっていく感じがあって胸が熱くなります。

https://t.co/k1e2Iz6KSB

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