シュールレアリスムの芸術家でありアニメーション作家の
「ひろしまアニメーションシーズン2024(HAS)」にて、シュヴァンクマイエルの生誕90年を記念して企画された本プログラム。「クンストカメラ」は、シュヴァンクマイエル本人が自身の工房をツアーして記録した作品だ。偶像やコラージュ絵、貝や骨を使ったオブジェ、デッサン、彫刻、標本風のアート、春画といった大量のコレクションのほか、履き古した靴や掃除されていないベッドなどが確認でき、生活の気配を感じることもできる。113分の本編中にセリフは一切なく、“コラージュ”された音楽とともに所蔵品が矢継ぎ早に映し出されていく。
上映前に登壇したのは、翻訳家としてシュヴァンクマイエル作品の字幕翻訳を手がけたことがあるペトル・ホリーと、本映画祭のアーティスティック・ディレクターを務める
「クンストカメラ」に登場する館は、シュヴァンクマイエルが1981年にチェコ・プラハから車で3時間ほど掛かる田舎で購入したもの。ホリーは「シュヴァンクマイエルが“人に見せるため”ではなく自分のために収集してきたコレクションを陳列させる目的で、当時安い価格で買ったそうです。あとは、美術収集に没頭していたという(神聖ローマ皇帝の)ルドルフ2世や、シュールレアリスムムーブメントの開拓者であるマックス・エルンストにも触発されたと言っています」と説明する。
山村は本作について「現代の美術品コレクターだと、当然作者名や制作年などバックグラウンドのデータがあって、自分の美術品を見せるならそれらの情報も出すはずなんですけど、映画ではどれが何か全然わからない(笑)。アカデミックな情報を得ようとしても得られない作品もおそらくたくさんありますよね」と語る。ホリーは「彼はこういう物に囲まれてインスピレーションを受け、たまたまアニメーションというものを手段にして表現しているんだと思います」と分析した。
ホリーによると、チェコ国内でシュヴァンクマイエルの展覧会などが行われるようになったのはここ数年だという。1990年代から多くの書籍が出版され、特集上映が組まれてきた日本でのシュヴァンクマイエル人気に関しては「2000年代に日本で開催されたシュヴァンクマイエルの展覧会の際、東京・ラフォーレ原宿に本人が姿を現すと、ゴスロリの格好をした女性が『きゃー!』と声を上げたんです。彼は『なぜ!?』とびっくりしていました(笑)」と回想した。
最後に山村は「コラージュが延々と続きますので、『いつ終わるんだろう』と思う人もいるかもしれません」、ホリーは「人によってはあっという間に終わってしまうかもしれません」とそれぞれコメントし、上映前のイベントは終了した。
山村浩二 @Koji_Yamamura
【イベントレポート】ヤン・シュヴァンクマイエルの「クンストカメラ」上映、日本での人気に本人「なぜ!?」 https://t.co/96SCIzqfac